認知症になった親の保険解約は難しい!それでも解約する方法とは?

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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 4

親が認知症となってしまい判断能力を失ったと判断されると、様々な契約や手続きができなくなってしまいます。
保険解約の手続きもそのひとつであり、認知症となった親の保険解約は難しく手続きも複雑です。

また、生命保険の解約は契約者本人から解約の代理権を与えられていない限り家族であっても行うことはできません。
とはいえ、加入している保険を解約せずにそのままにしていると、保険料支払いがずっと続くなどのデメリットもあります。

また、意思の疎通がはかれないくらい認知症が進行してしまった場合には、親が加入している保険契約を子供が把握することすら難しいかもしれません。

本記事では、認知症となった親の保険解約をする方法や親が加入している保険を調べる方法を解説していきます。


1章 親が認知症になった場合は本人以外が生命保険を解約することは難しい

認知症になってしまい判断能力が著しく低下していると判断された場合、親が自分で保険解約手続きを行うことは難しいでしょう。
生命保険の解約は委任状があれば代理人による解約も認められていることが多いです。

しかし重度の認知症であり判断能力を失っている場合は、効力を持つ委任状を書くこと自体が難しいはずです。
一方で、物忘れが少しある程度や意思確認ができる程度の軽度の認知症であれば、保険解約手続きが可能な場合もあります。
認知症の症状や判断能力の有無には個人差が大きく、一概には判断できません。

そのため、認知症となった親の保険解約を検討中であれば、医師の診察を受けて判断能力を調べてもらうのも一つの方法です。

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2章 指定代理請求人であっても保険解約はできない

保険契約では「指定代理請求人」が定められている場合があります。
指定代理請求人とは、被保険者のかわりに保険金請求を行える人物です。
例えば、被保険者が重い病気にかかってしまい保険会社に保険金を請求できないケースには、指定代理請求人が保険金請求をかわりに行えます。

指定代理請求人であれば、被保険者のかわりに保険解約手続きまで行えると誤解されがちですが、実際には解約まではできません。
指定代理請求人はあくまでも保険金請求を行える人物として指定されているだけであり、保険解約手続きは契約者しか行えない決まりになっています。

このように、親が認知症になると親名義の保険解約を行うのが難しくなり、必要な手順を踏む必要があります。
次の章では、認知症となった親の保険解約を行う方法を詳しく解説していきます。


3章 認知症となった親の保険解約を行う方法

本人の代わりに生命保険を解約する際には、委任状を作成してもらう、もしくは成年後見制度を活用するのが良いでしょう。
ただし、委任状の内容や本人の判断能力は詳しく確認されるので、認知症になった人が作成した委任状は認めてもらえない可能性もあります。
それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

3-1 委任状を作成する

保険解約は、契約者本人が作成した委任状があれば、本人以外でも手続き可能です。
そのため、認知症になった親に委任状を作成してもらえれば、保険解約が認められる可能性があります。

ただし、保険解約は多額の金銭が絡む契約手続きなので、保険会社も委任状の内容や手続きを代行する人の調査を細かく行います。
委任状の内容に不備がある場合や認知症となった親が自分の意思で作成したか判断がつかない場合には、保険解約を認めてもらえない可能性もあるでしょう。
委任状を作成し、代理人が保険解約をするときの必要書類は主に以下の通りです。

  • 委任状
  • 代理人の印鑑証明書もしくは公的機関が発行している本人確認書類の原本
  • 実印(印鑑証明書を提出する場合)

加入している保険会社によって手続き方法や必要書類が異なる可能性がありますので、事前に確認しておくことをおすすめします。

3-2 成年後見制度を活用する

成年後見制度を活用すれば、家庭裁判所で選任された成年後見人が認知症になった親のかわりに各種契約手続きを行えます。
そのため、親名義で加入している保険解約手続きも可能です。

成年後見制度とは、認知症等で判断能力を失った方が生活をする上で不利益を被らないよう、「成年後見人」が本人の代わりに適切な財産管理や契約行為の支援を行うための制度です。

認知症になった親の保険解約は難しい。それでも解約する方法は成年後見制度を利用しましょう。成年後見制度の全体像を紹介

すでに認知症が進んでいて判断能力が不十分な場合には、法定後見制度のみが認められています。
法定後見制度は、家庭裁判所にて申し立てを行い、成年後見人を選任してもらう必要があります。
法定後見制度の手続きの概要や必要書類は、下記の通りです。

手続きする人
  • 本人
  • 配偶者
  • 4親等内の親族
  • 市区町村長
申立先本人の所在地を管轄する家庭裁判所
かかる費用
  • 収入印紙:800円~
  • 登記費用:2,600円
  • 郵便切手代
必要書類
  • 申立書
  • 申立人の戸籍謄本(本人以外が申立てるとき)
  • 本人の戸籍謄本
  • 本人の戸籍附票
  • 登記事項証明書
  • 診断書
  • 成年後見人候補者の戸籍謄本
  • 成年後見人候補者の住民票
  • 成年後見人候補者の身分証明書
  • 成年後見人候補者の登記事項証明書
  • 申立書の附票
  • 本人に関する報告書

など

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4章 認知症となった親の保険契約を調べる方法

親が認知症になってしまい意思の疎通を取るのが難しくなってしまうと、そもそも親がどんな保険に加入していたかわからない場合もあるかもしれません。
認知症となった親の保険契約を調べる方法は、主に以下の3つです。

  1. 保険証書を探してみる
  2. 保険会社からの領収書を探してみる
  3. 預金通帳に支払い記録がないか調べる
  4. ​郵送物を小まめにチェックする

それぞれ詳しく解説していきます。

4-1 保険証書を探してみる

まずは、認知症となった親の自宅を整理してみて、保険証書がないか探してみましょう。
認知症の症状が進み判断能力を失ってしまうと、保険証書のような重要書類も親が自分で管理するのは難しくなるかもしれません。
その場合には、子供や親族が一時的に保管しておき、最終的には成年後見人に保管してもらうのが良いでしょう。
地域の社会福祉協議会によっては、保険証書や年金関係の書類など本人にとって大切な書類を一時的に保管してくれるサービスもあります。

4-2 保険会社からの領収書を探してみる

残念ながら保険証書が見つからない場合には、親が保険料を支払った記録を探すことになります。
保険料支払いの領収書が見つかれば、領収書に記載されている保険会社に照会手続きをすれば、契約情報を確認可能です。
ただし、契約者本人でないと契約内容の照会ができないことも多いので、その際には2章で解説した委任状や成年後見制度を活用する必要があります。

4-3 預金通帳に支払い記録がないか調べる

保険証書や領収書も見つからない場合には、親の預金通帳を確認してみましょう。
例えば、保険会社宛の口座振替の記録が残っていれば、保険に加入していた可能性が高いです。
領収書を見つけたとき同様に、支払先の保険会社がわかれば契約内容の照会を行えます。

4-4 郵送物を小まめにチェックする

これまで解説した方法を試しても、親の保険契約についてわからなかった場合には、保険会社からの案内や郵送物が届くのを待ちましょう。
何かのイベントや保険料改定の郵便での連絡により判断できます。

親が施設などにいる場合は、郵便局で郵便転送届を行い子供の家へ指定しておけば、チェックも楽になるのでおすすめです。


まとめ

親が認知症になってしまい判断能力を失ったと判断されてしまうと、親が契約している保険解約は難しくなってしまいます。

認知症になった親の保険解約を行うには、委任状を作成もしくは成年後見制度を活用する2つの方法があります。
ただし、委任状に関しては内容や代理人の素性に関しても細かく調査されるので、親が重度の認知症で意思確認ができないと判断されると委任状が認められない可能性も高いです。

親が重度の認知症になった場合には、成年後見制度を申立てし家庭裁判所にて成年後見人を選任してもらえば、親のかわりに成年後見人が保険解約手続きを行えます。
成年後見人は子供が就くこともできますが、仕事内容も多く大変ですし、家庭裁判所が子供を成年後見人に選任しないケースもあります。
成年後見制度を利用し、認知症になった親のかわりに契約行為を行いたいのであれば、司法書士や弁護士などの専門家に相談することもご検討ください。

グリーン司法書士法人では、成年後見制度に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能なので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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よくあるご質問

認知症の人の保険解約は本人以外ができますか?

認知症になってしまい判断能力が著しく低下していると判断された場合、親が自分で保険解約手続きを行うことは難しいでしょう。
意思の疎通がはかれない重度の認知症の場合、契約や解約などの手続きを行っても法律上無効になってしまいます。
▶認知症の人の保険解約について詳しくはコチラ

生命保険を解約できる人は?

生命保険契約を解約できるのは原則本人のみです。
しかし、平成22年以降の契約であれば要件を満たせば非保険者が契約を解除可能です。

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