1人で株式会社を経営している場合や家族経営をしている場合には、取締役の変更も生じるケースが少なく、長年にわたり会社の登記をしないでいる場合も多いです。
しかし、登記をしないまま12年以上放置しておくと「みなし解散」の対象となり、強制的に解散登記がなされてしまう可能性があります。
みなし解散になってしまうと事業が続けられなくなり、さらに3年間放置すると会社を清算するしかなくなります。
みなし解散をさせられるタイミングは公表されておらず、いつ対象の会社が解散させられるかは分かりません。
そのため、なるべく早期に登記申請をして会社のみなし解散を回避する必要があります。
本記事では、みなし解散とは何か、みなし解散通知が届いた場合の対処法や注意点について解説します。
目次
1章 みなし解散とは?
みなし解散とは、登記手続きを行わずに長期間放置している会社を強制的に解散させることです。
株式会社は最後の登記から12年経過している場合、一般社団法人や一般財団法人の場合には最後の登記から5年経過している法人がみなし解散の対象になってしまいます。
みなし解散の対象になった後は国から確認のための通知書が届き登記申請や事業の廃止をしないと、登記官によって強制的に解散手続きを取り、会社を解散させられてしまいます。
みなし解散の概要は、下記の通りです。
対象となる法人 |
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行われるタイミング |
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株式会社の取締役の任期は最長10年、一般社団法人・一般財団法人の場合は最長2年であり、新たに取締役が就任する場合(再任する場合も)は、登記を行わなければいけません。
そのため、任期の10年(一般財団法人・一般社団法人は2年)を過ぎ、12年(5年)が経過している会社は「事業をしていない」とみなされ「休眠会社」として扱われるため、みなし解散の対象となるのです。
取締役は任期を過ぎていても、次の取締役が就任するまで取締役としての権利を有するため、実務上不便がなく、登記をしないまま放置している会社もあるでしょう。
しかし、登記を放置しているとみなし解散の対象になってしまう恐れがあるので、ご注意ください。
みなし解散はいつ行われるかわかりませんので、自身の会社がみなし解散の対象となっていないか、最後に登記を行った日を確認しておくことが大切です。
“登記手続きを怠る行為は会社法違反”
登記手続きを怠る行為は法律違反として過料の対象になります。
取締役の改選や登記手続きを怠る行為は、会社法に違反する行為であり、過料を課される可能性があります(会社法976条1号)。会社法違反事件として、裁判所から代表者個人宛に過料を納付してくださいという決定通知が届きます。
1-1 みなし解散が行われるタイミング
みなし解散が行われるタイミングは公表されていません。
そのため、「知らないうちにみなし解散の対象となっていた」となる可能性が高いのです。
直近では、令和3年10月14日に休眠会社への勧告が行われました。
それ以前は、令和2年と平成26年、平成14年に行われています。
なお、法務省は過去に行われたみなし解散の数を発表しています。
平成26年以降はほとんど毎年みなし解散を行っており、今後もその傾向が続くでしょう。
2章 みなし解散の流れ
これまで行われてきたみなし解散の流れは、以下の通り3段階で進行します。
- 法務大臣による公告がなされる
- 「まだ事業を廃止していない」旨の届出を提出する
- 役員変更の登記申請を行う
それでは、もう少し詳しく見ていきましょう。
STEP1 法務大臣による公告がなされる
最後の登記をしてから12年を経過している株式会社や5年を超過している一般社団法人・一般財団法人に対し、法務大臣から公告が行われ、同時に通知書が発送されます。
法務大臣による公告がなされてから2ヶ月以内に登記申請をしなければ、2ヶ月経過した翌日に解散したとみなされます。
【送付される通知書】(引用:法務省)
STEP2 「まだ事業を廃止していない」旨の届出を提出する
まだ事業を廃止していない場合は「まだ事業を廃止していない旨」を管轄登記所へ届け出なければいけません。
届出書は通知書に付属していますので、以下の内容を記載の上、管轄登記所へ郵送または持参します。
- 【株主会社の場合】商号と本店、代表者の氏名と住所
- 【一般社団法人・一般財団法人】名称と主たる事務所、代表者の氏名と住所
- 代理人が届け出をする場合は、代理人の氏名と住所
- まだ事業を廃止していない旨
- 記入した年月日
- 登記所の表示
なお届出書を提出しても、法務大臣の公告から2ヶ月以内に登記申請をしなければ解散となる上、100万円以下の過料に処される可能性があります。
届出書を出すだけでなく、必ず登記申請もすませておきましょう。
STEP3 役員変更の登記申請を行う
法務大臣の公告から2ヶ月以内に登記申請を行われなければ、みなし解散の手続きが取られます。
そのため、通知書が届いたら即座に登記申請の準備をはじめ、なるべく早く役員変更の登記申請を行いましょう。
なお、「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしなくても、期限内(2ヶ月以内)に必要な登記申請をすれば、解散したものとはみなされません。
任期満了した取締役が引き続き役員になる場合の登記申請の必要書類は、下記の通りです。
- 役員変更の登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 定款(事業年度の終了時期を証する必要がある場合、定款により取締役の任期を短縮または伸長している場合)
- 就任承諾書
- 委任状(代理人である司法書士が申請する場合)
役員変更登記は自分で行うこともできますが、司法書士に依頼すればミスなく手続きを完了させられます。
3章 【ケース別】みなし解散通知が届いた時回避方法
みなし解散通知が届いたら、どうしたら良いのでしょうか。
以下のケース別に対処法を詳しく確認していきましょう。
- みなし解散の期限を過ぎていないケース
- 期限が過ぎてみなし解散となったが復活したいケース
- みなし解散されてそのまま消滅させたいケース
3-1 みなし解散の期限を過ぎていないケース
みなし解散の通知が届いてから解散されるまでは、約2ヶ月間の猶予があります。
まだ解散されるまで期間があるのであれば、その間に役員変更の登記申請をしましょう。
期限が迫っている場合や、自分で行う自信がない人は司法書士への依頼も検討しましょう。
3-2 期限が過ぎてみなし解散となったが復活したいケース
みなし解散の通知が届いてから2ヶ月が経過し、みなし解散されてしまっても、会社継続登記を行えば事業を継続することが可能です。
しかし、みなし解散の場合、解散してから3年以内に会社継続登記を行わなければ事業を再開することができなくなり、清算するしかなくなってしまいます。
現在は事業を行っていないが、将来的に次世代に受け継いで事業を再開したい場合などはこの期限に注意しましょう。
3-3 みなし解散されてそのまま消滅させたいケース
みなし解散通知が届いた時点で、事業を行っておらず、この先も再開する予定がないため、会社を消滅させたいという場合もあるでしょう。
そのような場合は、会社の清算結了登記を行いましょう。
後述しますが、みなし解散が行われても会社はなくならず、法人税などの税負担は続きます。
完全に会社を消滅させるためには、清算結了登記が必要です。
4章 みなし解散が行われた際の注意点
本記事で解説したように、みなし解散の通知が来たときには適切な対処をする必要があります。
また、みなし解散の通知が来たときにはいくつか注意すべき点があります。
- みなし解散後3年が経過すると清算するしかなくなる
- みなし解散後も法人税がかかり続ける
- みなし解散後に放置されても勝手に清算されない
- みなし解散後10年経過すると登記記録が閉鎖される恐れがある
それぞれ詳しく確認していきましょう。
4-1 みなし解散後3年が経過すると清算するしかなくなる
株式総会などで解散した場合と違いみなし解散によって解散した場合、解散後3年が経過すると株主総会決議による会社継続ができなくなり、清算するしかなくなってしまいます。
みなし解散後も事業を継続したいのであれば、早期に会社継続登記をして会社復活するための手続きを取りましょう。
会社継続登記の手続き方法や必要書類は、下記の通りです。
手続きできる人 |
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手続き先 | 本店所在地を管轄する法務局 |
費用 | 登録免許税:3万円 |
必要書類 |
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4-2 みなし解散後も法人税がかかり続ける
会社が解散しても清算結了をするまでは、法人格は消滅しません。
そのため、法人税は課税し続けられます。
事業ができなくても法人税はかかるので、事業を続けたいのであれば会社継続登記、続ける予定がないのであれば清算結了登記を早いうちに行うようにしましょう。
清算結了登記の手続き方法や必要書類は、下記の通りです。
手続きする人 |
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手続き先 | 本店所在地を管轄する法務局 |
費用 | 登録免許税:2,000円(支店の数ごとにかかる) |
必要書類 |
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4-3 みなし解散後に放置されても勝手に清算されない
みなし解散をしても、会社の清算が自動的になされることはありません。
みなし解散から3年が経過し、会社の復活ができなくなったとしても同様です。
清算をしなければ法人格は残ることとなり、法人財産の処分や名義変更ができないままとなります。
また相続が発生した際も事業ができない状態の法人が株式のオーナーの相続財産となり、負担をかけるリスクがあります。
そのため、事業を続ける予定がないのであれば、みなし解散後はなるべく早く清算結了の手続きを行いましょう。
4-4 みなし解散後10年経過されると登記記録が閉鎖される恐れがある
みなし解散後、10年が経過すると登記官が強制的に登記を閉鎖できると法律で決められています。
しかし、10年経過後でも清算結了が済んでいない旨の申告があった場合には、閉鎖された登記を復活することも可能です。
5章 会社の解散・清算・登記のことならグリーン司法書士にお任せください
グリーン司法書士法人では、会社の解散や清算結了に関する登記業務に注力しております。
豊富な経験と知識を持った司法書士が、スムーズに対応いたしますので、みなし解散の通知を受け取った経営者はぜひご相談ください。
◆電話・メール・郵送で全国対応!
当事務所では、対面のみでなく以下の方法でご依頼を完結することも可能です。
- 電話
- テレビ会議
- メール
- 郵送
なお、法務局はオンラインで全国繋がっていますので弊社でも全国対応可能です。
◆依頼費用
実費 | 報酬 | ||
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登録免許税 | 解散 | 30,000円 | 7万7,000円 (税込8万4,700円) |
清算人選任 | 9,000円 | ||
清算結了 | 2,000円 | ||
登記情報調査 | 337円〜 | ||
登記事項証明書 | 960円(2通)~ | ||
郵送費・通信費 | 2,000円〜 | ||
総額 | 12万1,297円(税込13万3,427円)~ |
よくあるご質問
みなし解散の注意点とは?
みなし解散の注意点とは、下記の4つです。
・みなし解散後3年が経過すると清算するしかなくなる
・みなし解散後も法人税がかかり続ける
・みなし解散後に放置されても勝手に清算されない
・みなし解散後10年経過されると登記記録が閉鎖される恐れがある
▶みなし解散の注意点について詳しくはコチラみなし解散の流れとは?
みなし解散の流れは、下記の通りです。
①法務大臣による公告がなされる
②「まだ事業を廃止していない」旨の届出を提出する
③役員変更の登記申請を行う
▶みなし解散の流れについて詳しくはコチラみなし解散を放置するとどうなる?
みなし解散の対象になり放置すると、登記官によって強制的に解散手続きを取り、会社を解散させられてしまいます。
▶みなし解散の放置について詳しくはコチラみなし解散とは?
みなし解散とは、登記手続きを行わずに長期間放置している会社を強制的に解散させることです。
▶みなし解散について詳しくはコチラみなし解散の対象となる法人とは?
みなし解散の対象となる法人は、下記の通りです。
・最後の登記から12年が経過している株式会社
・最後の登記から5年が経過している一般社団法人や一般財団法人
上記に当てはまる法人に対し、法務大臣の公告が行われ2ヶ月登記しないとみなし解散になってしまいます。
▶みなし解散について詳しくはコチラみなし解散は消滅するのでしょうか?
みなし解散をしても会社は消滅せず、清算会社として消滅します。