
- DNA鑑定で祖父母と孫の血縁関係も調べられるのか
- DNA鑑定で祖父母と孫の血縁関係を調べた場合の精度
- 祖父母と孫の血縁関係をDNA鑑定する際の費用相場
DNA鑑定は、親子関係を確認するための手段として広く利用されていますが、父親がすでに亡くなっている場合などでは、祖父母と孫の関係を調べる鑑定が行われることもあります。
ただし、血縁関係の有無を科学的に証明する手段としてDNA鑑定は有効ですが、鑑定結果だけでは法律上の関係や戸籍を変えることはできないと理解しておきましょう。
本記事では、祖父母と孫のDNA鑑定の精度や費用相場、孫と血縁関係がないとわかった場合に行う相続対策について解説します。
目次
1章 DNA鑑定で祖父母と孫の血縁関係も調べられる
DNA鑑定は、一般的に親子関係の確認に利用されるものとして知られていますが、祖父母と孫の血縁関係を調べることも可能です。
子供の父親がすでに亡くなっている場合や、父親本人が検査を受けられない事情がある場合には、祖父母と孫の間の血縁関係を調べる鑑定が行われるケースもあります。
特に、子供の父親とされる人物が亡くなった場合、相続手続きにおいて、故人と父子関係が認められるかは非常に重要な要素となります。
2章 DNA鑑定で祖父母と孫の血縁関係を調べた場合の精度
祖父母と孫によるDNA鑑定も精度は高く、99%以上の確率で血縁関係を肯定できたり、反対に0%に近い確率で否定できたりする場合があります。
ただし、祖父母と孫でのDNA鑑定では父親本人が不在となるため、鑑定結果はあくまでも父系でのつながりを間接的に推定するものとなります。
また、精度を高めるために、可能であれば祖父母の両方と孫の検体を提出するのが望ましいとされています。
片方の祖父または祖母だけでは遺伝情報が限定的であるため、判定の確実性が下がる可能性があるためです。
3章 祖父母と孫の血縁関係をDNA鑑定する際の費用相場
DNA鑑定にかかる費用は、依頼する機関や鑑定方法によって異なります。
祖父母と孫の血縁鑑定の場合、おおむね10万円〜20万円程度が相場です。
親子鑑定よりも費用が高めになるのは、解析が複雑であり、より多くの検体や高度な分析が必要になることもあるからです。
加えて、報告書を裁判の提出書類として利用する場合には、所定の形式で鑑定を行い書類を作成する必要があるので、費用がさらに高額になる可能性が高いでしょう。
4章 【注意】DNA鑑定で血縁関係がないことを証明されても法律上の関係は残り続ける
DNA鑑定は科学的に血縁関係の有無を明らかにするものですが、その結果が直ちに法律上の親子関係に影響するわけではありません。
例えば、戸籍上「父の子」として記載されている場合、DNA鑑定で実際には血縁がないと判明しても、法律的にはその関係は自動的に消滅しません。
法律では、婚姻中の妻に生まれた子供には嫡出推定という考えが働き、原則として夫が自動的に法律上の父親として扱われます。
DNA鑑定の結果、親子関係がないことが明らかになった場合には、嫡出否認の訴えや親子関係不存在確認の訴えを起こさなければなりません。
なお、2024年までは嫡出否認の訴えについては父親本人しか提起することができませんでした。
2024年からは民法改正により、母親や子供からも嫡出否認の訴えを起こせるようになっています。
そのため、祖父母と孫がDNA鑑定をし、父と子の間に血縁関係がないことがわかった場合には、子供などが親子関係不存在確認の訴えや嫡出否認の訴えを起こす必要があります。
4-1 血縁関係のない孫が代襲相続人となる場合もある
DNA鑑定の結果、祖父母と孫に血縁関係がなかったとしても、法律上の関係は解消されず相続時にトラブルが起きる場合もあります。
具体的な問題が生じやすいのは、主に代襲相続の場面です。
代襲相続とは、本来相続人となるべき人物がすでに亡くなっている場合に、その子供(故人から見た孫)が代わりに相続人となることです。

例えば、父親が亡くなっており、その子供が祖父母とのDNA鑑定で血縁関係のないことがわかっていたとしても、法律上の父子関係が戸籍に残っていれば、孫は代襲相続人として扱われます。
つまり、祖父母から見れば血のつながりのない孫が、相続分を主張してくることがあり得るのです。
祖父母が「息子の子供ではないのに遺産を譲りたくない」と考えることもあるはずですし、祖父母と孫に血縁関係がないことを知った他の相続人が「遺産を受け取るのはおかしい」と主張することもあるでしょう。
結果として、相続人同士では遺産分割協議がまとまらず、調停や審判へと進むことも珍しくありません。
5章 血縁関係のない孫に遺産を譲らない方法
先ほど解説したように、血縁関係がない孫であっても、法律上の関係が残っていれば、孫が代襲相続人になる可能性もあります。
自分と血のつながりのない孫に遺産を譲りたくない場合には、以下のような方法で相続対策を検討しましょう。
- 遺言書の作成
- 生前贈与
- 家族信託の利用
それぞれ詳しく解説していきます。
5-1 遺言書の作成
特定の人物に遺産を譲らない方法として、最も確実なものは遺言書を作成することです。
遺言書を作成しておけば、希望の人物に希望の財産を譲れるようになります。
遺言書には、複数の種類がありますが、信頼性が高く原本の改ざんや紛失の恐れがない公正証書遺言を作成するのが良いでしょう。
ただし、孫が代襲相続人となる場合には、相続権だけでなく遺留分に関する権利も受け継ぎます。
遺留分とは、故人の配偶者や子供、両親などに認められる最低限度の遺産を受け取れる権利です。
遺留分は遺言より優先されるため、孫に一切遺産を遺さない遺言書を作成してしまうとトラブルに発展する恐れがあります。
このような事態を防ぐためにも、遺言書を作成する際には、相続対策に精通した司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
5-2 生前贈与
生前贈与をすれば、相続が発生する前に希望の人物に自分の財産を譲れます。
血縁関係のある子供や孫に不動産や預貯金を贈与しておけば、遺産の総額を減らすことができるため、血縁関係のない孫にわたる財産を減らせます。
ただし、年間110万円を超える贈与を受けると、贈与税がかかる点には注意しなければなりません。
贈与税を節税したい場合には、暦年贈与を利用し繰り返し贈与することや贈与税の控除や特例を利用する必要があります。
また、生前贈与した財産も遺留分の計算対象に含まれる場合もあるので、司法書士や弁護士などに相談しながら進めていくことを強くおすすめします。
5-3 家族信託の利用

相続対策だけでなく認知症対策もしたいのであれば、家族信託を検討しても良いでしょう。
家族信託とは、自分が信頼する家族に財産の管理や運用、処分を任せる制度です。
家族信託を利用すれば、自分が認知症になったときに家族に財産の管理を任せることもできますし、自分が亡くなったときの財産の承継先を指定可能です。
ただし、家族信託は柔軟に設計できる分、自分に合った内容にするには専門的な知識や経験が求められます。
そのため、家族信託を利用しようと考えるのであれば、司法書士や弁護士などの専門家に相談することを強くおすすめします。
まとめ
父親と子供だけでなく、祖父母と孫でDNA鑑定を行うことも可能です。
ただし、血縁関係がないとわかった場合でも、法律上の祖父母と孫の関係は解消されない可能性があると理解しておきましょう。
血縁関係のない孫に遺産を譲りたくないと考えるのであれば、遺言書の作成や生前贈与、家族信託などの相続対策を検討しましょう。
相続対策には複数の方法があるので、自分に合った方法を知りたい場合には、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談することも大切です。
グリーン司法書士法人では、相続対策についての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。







