身寄りのない人が亡くなると誰が財産を相続する?起きうる問題も紹介

身寄りのない人が亡くなると誰が財産を相続する?起きうる問題も紹介
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 7

身寄りのない人が亡くなると相続人が誰もいなく、遺産が最終的に国のものになってしまう恐れがあります。
自分の遺産を希望の人物に受け継いでほしい場合は、遺言書を作成しておきましょう。

また、身寄りのない人が死亡すると、遺品整理や火葬の手続きなどで周囲に迷惑をかけてしまう恐れもあります。
自分に何かあったときに、親族や近所の人、自治体に迷惑を掛けたくないのであれば、死後事務委任手続きや身元保証サービスの利用なども検討しておきましょう。

本記事では、身寄りのない人が亡くなると誰が財産を受け継ぐのか、どんな問題が起きるのかを解説します。
身寄りのない人が行うべき終活については、下記の記事で解説しているので、あわせてご参考にしてください。

身寄りなしの人が終活すべき5つの理由|終活をしないリスクとは

1章 身寄りのない人の死亡件数は増加している

高齢化社会の影響や核家族化が進み家族のつながりが薄れているため、身寄りのない人の死亡件数は増加傾向にあると考えられます。
総務省が実施した「遺留金等に関する実態調査」の結果に基づく勧告によると、平成30年4月1日から令和3年10月末日までで引取る人がいない遺体の数は10万6,000件あったと報告されています。

また、身寄りのない人が亡くなり遺されたお金(遺留金)の保管金額も過去数年で増加しており、調査年別の遺留金額はそれぞれ下記の通りです。

平成30年3月末日時点約13億500万円
令和3年3月末日時点約19億7,700万円
令和3年10月末日時点約21億4,900万円

参照元:「遺留金等に関する実態調査」の結果に基づく勧告

今後も高齢化社会はどんどん加速していくため、身寄りのない人の相続は決して他人事ではないといえるでしょう。

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2章 身寄りのない人が亡くなると誰が財産を相続する?

法律では相続が発生したときに、下記の人物が財産を受け継ぐと決められています。

相続人の優先順位

常に相続人になる配偶者
第一順位子供や孫
第二順位親や祖父母
第三順位兄弟姉妹や甥・姪

身寄りがなく、上記に該当する人物が1人もいない場合は、下記の人物が遺産を相続します。

  1. 遺言書などで指定された人物
  2. 特別縁故者
  3. 最終的に身寄りのない人の財産は国庫に帰属される

それぞれ詳しく見ていきましょう。

2-1 遺言書などで指定された人物

身寄りのない人が生前、遺言書を用意していた場合、遺言書に指定された人物が財産を受け継ぎます。
自分に配偶者や子供がいなく、相続人になる人物がいない場合は、お世話になった人や慈善団体に財産を寄付するように遺言書を作成しておくと良いでしょう。
なお、遺産を寄付する場合は、寄付先の団体に必ず確認してから遺言書を作成しましょう。

遺言書の作成方法については、下記の記事で解説しているのであわせてご参考にしてください。

遺言書の作成方法をイラスト付きで解説!文例と注意点をわかりやすく紹介

2-2 特別縁故者

亡くなった人に相続人が1人もいなく、遺言書も用意していなかった場合は、特別縁故者が遺産を受け取れる可能性があります。
特別縁故者とは、亡くなった人と生前特別な関係にあった人物であり、内縁の妻や夫、義理の娘や息子などが該当します。

特別縁故者は自動的に決定するのではなく、要件を満たした人が家庭裁判所で手続きすることで遺産を受け継ぐことが認められます。
特別縁故者の申立てを行い、遺産を受け取るまでの流れは下記の通りです。

遺産を受け取るまでの流れ

上記のように、特別縁故者が遺産を受け取るまでには様々な手続きが必要であり、非常に手間がかかります。
自分で手続きするのが難しい場合は、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。

特別縁故者とは?基本知識から手続きの流れまで徹底解説

2-3 最終的に身寄りのない人の財産は国庫に帰属される

亡くなった人に相続人が1人もいない、遺言書もなく、特別縁故者もいなかった場合は、遺産が最終的に国庫に帰属されてしまいます。

なお、身寄りのない人が亡くなり遺産が国庫に帰属する際には、相続財産清算人が手続きを行います。
相続財産清算人とは、相続人の代わりに亡くなった人の遺産を管理する人物であり、令和5年の民法改正以前は相続財産管理人と呼ばれていました。

相続財産清算人は、相続人が1人もいないときに下記の業務を行います。

  • 債権者や受遺者に対する申出の公告
  • 相続財産の精算・債務の弁済
  • 相続人の捜索

相続財産清算人の申立ては、亡くなった人の債権者などの利害関係者や検察官が家庭裁判所に対して行います。

相続財産管理人を徹底解説!相続財産管理人の権限を分類してご紹介

3章 身寄りのない人が亡くなったときに起きうる問題

身寄りのない人が亡くなると遺産が最終的に国庫に帰属される以外にも、孤独死に気付いてもらえない、遺品整理を行う人物がいないなどの問題が発生します。
身寄りのない人が亡くなったときに起きうる問題は、主に下記の通りです。

  • 孤独死に気付いてもらえない
  • 葬儀や遺品整理を行ってくれる家族がいなく手間がかかる
  • 葬儀費用を友人や知人、遠縁の親族が負担する恐れがある
  • 自分の遺産が希望通りの人物に受け継がれない
  • ペットの引き取り先が見つからない

上記の問題が発生するのを防ぐには、自分に何かあったときのために相続対策や終活を進めておく必要があります。
次の章では、身寄りのない人が行うべき相続対策を詳しく解説していきます。


4章 身寄りのない人が行うべき相続対策

身寄りのない人は相続人がいなく遺産が国のものになる恐れがあります。
希望の人物に財産を受け継いでもらうためにも、遺言書の作成をしておきましょう。
他には、自分に何かあったときのために任意後見制度や死後事務委任契約も利用するのがおすすめです。

身寄りのない人が行うべき相続対策は、下記の通りです。

  1. 遺言書を作成する
  2. 任意後見制度を利用する
  3. 死後事務委任契約の利用を検討する
  4. 身元保証サービスの利用を検討する

それぞれ詳しく解説していきます。

4-1 遺言書を作成する

身寄りのない人が遺言書を作成しておけば、自分が亡くなったときに希望の人物に財産を遺せます。
本記事の2章でも解説しましたが、身寄りのない人が亡くなると最終的に遺産は国のものになってしまいます。

遺産をお世話になった人に遺したい、お世話になった病院や教育機関に寄付したい場合は、遺言書を作成しておくのがおすすめです。
なお、身寄りのない人が遺言書を作成する場合は、遺言執行者もあわせて選任しておきましょう。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために手続きを行う人であり、選任しておけば遺言書の内容通りに遺産分割を行ってもらえます。
遺言書の作成を依頼した司法書士や弁護士を選任すれば、作成時の意図や遺志も伝えてもらえます。

遺言執行者とは|誰がなれる?選任方法や仕事内容を徹底解説【完全版】

4-2 任意後見制度を利用する

任意後見制度を利用すれば、自分が認知症になった後の財産管理や契約行為を希望の人物に任せられます。
任意後見人は希望の人物に依頼できるので、司法書士や弁護士などの信頼できる専門家を選ぶことも可能です。

また、任意後見制度は自分が元気なうちに契約内容を決めておくので、認知症になった後も自分が希望する生活を送れます。
任意後見制度は、自分が認知症になり判断能力を失ってしまうと、利用することができません。
そのため、自分が元気なうちに認知症対策として任意後見制度を活用することが重要となります。

【簡単解説】任意後見人とは?役割や仕事内容から手続きの流れ

4-3 死後事務委任契約の利用を検討する

自分が亡くなった後に頼れる家族や親族がいない場合は、死後事務委任契約の利用をおすすめします。
死後事務委任契約とは、人が亡くなったときに発生する様々な事務手続きを依頼する契約です。

死後事務委任契約を利用すれば、下記の手続きを依頼できます。

  • 通夜や葬儀
  • 納骨・埋葬
  • 電気やガス等の停止
  • 入院していた病院や介護施設の費用の支払い
  • 自宅や介護施設の片付け

死後事務委任契約を結ぶ相手は自由に選べますが、身寄りがない人は司法書士などの法律の専門家に依頼すると安心です。
グリーン司法書士法人でも、死後事務委任契約をお受けできますので、お気軽にお問い合わせください。

死後事務委任契約とは?身近に頼れる家族が居なくても安心できる手続

4-4 身元保証サービスの利用を検討する

身寄りがない人は介護施設への入所や病院への入院時に身元保証人になってくれる人を見つけられない恐れがあります。
身元保証人を見つけられない場合は、身元保証サービスを利用することも検討しましょう。

身元保証サービスとは、高齢者の日常支援や病院への入院、施設への入居をする際に保証人になってくれるサービスです。
身元保証サービスを利用すれば、身元保証人や身元引受人を探す必要はなく、遠方に住んでいる親族に負担をかける心配もありません。

ただし、身元保証サービスの利用には費用がかかりますし、事業者ごとにサービス内容が異なります。
グリーン司法書士法人の関連団体でも身元保証サービスを提供していますので、お気軽にお問い合わせください。

身元保証サービスとは?メリット・デメリットや選び方について

5章 身寄りのない人が亡くなったときによくある質問

身寄りのない人が自分の老後や亡くなったときの対策をしようとしても、老後の過ごし方や葬儀について想像できないと悩んでしまうこともあるでしょう。
本章では、身寄りのない人が亡くなったときによくある質問を回答と共に紹介していきます。

5-1 身寄りのない人の葬儀や火葬・納骨はどのように行われる?

身寄りのない人が亡くなると、自治体が遺体を引き取り火葬と埋葬を行いますが、葬儀を行うことはありません。
ただし、身寄りのない人の遠縁の親族や近隣住民、入所施設が葬儀を執り行うケースはあります。
葬儀費用については亡くなった人の遺産から支払えますが、遺産がない場合は葬儀を行う人が費用を負担しなければなりません。

また、火葬後の遺骨は一定期間にわたり自治体で保管した後、合同で埋葬されることが多いです。

葬式費用の相場は約195万円!内訳と費用を安く抑える方法を解説!

5-2 身寄りのない人の電気や水道・携帯料金などの契約はどうなる?

身寄りのない人が亡くなったとしても、電気や水道、携帯電話の契約が自動で解除されることはありません。
身寄りのない人が公共料金の支払いや携帯電話の支払いを口座引き落としにしていた場合、銀行が口座名義人の死亡を確認し口座凍結をするまで引き落としが続きます。

何らかの理由で口座凍結が遅れてしまい、公共料金や携帯電話の支払いが続き預貯金が底をついた場合、電力会社やガス会社、携帯電話会社などは未払料金の請求や督促状の送付などを行います。

5-3 身寄りのない人の遺品はどうなる?

身寄りのない人の遺品も相続財産に含まれるため、第三者が勝手に処分することは認められません。
亡くなった人が賃貸住宅に住んでいた場合は、貸主が故人の遠縁の親族や保証人に遺品処分や整理を依頼します。

身寄りのない人が亡くなり遠縁の親族や保証人すらいない場合は、相続財産清算人が遺品整理や処分、賃貸契約の解除などを進めます。
ただし、相続財産清算人の選任には時間がかかるため、賃貸契約の解除や遺品整理が完了するまではかなりの時間がかかることも多いです。

5-4 身寄りのない人が死亡した後の手続きの流れは?

身寄りのない人が死亡した場合、相続人がいないため、下記の流れで相続手続きが行われます。

  1. 相続財産管理人選任の申立て
  2. 相続財産管理人の選任
  3. 債権者・受遺者へ申出の公告
  4. 相続財産の精算・債務の弁済
  5. 相続人の捜索
  6. 相続人不存在が確定
  7. 特別縁故者への財産分与審判の申立て
  8. 特別縁故者の認定

上記の流れで手続きは進み、特別縁故者が認定されなかった場合は、最終的に遺産が国庫に帰属されます。

5-5 身寄りのない人が死亡すると遺体は誰が引き取る?

身寄りのない人が亡くなった場合、自治体が遺体を引き取り、下記の流れで遺体の引き取り手を探します。

  1. 身寄りのない人が死亡する
  2. 警察から連絡を受け、自治体が遺体を引き取る
  3. 自治体が遺体を引き取る親族や相続人を探す
  4. 遺体を引き取る人がいなかった場合、自治体が火葬や埋葬を行う

なお、遺体の引き取りに関しては遺族の意思が尊重されるため、自治体や警察から連絡が来たときに拒否しても問題ありません。

5-6 身寄りのない人が亡くなると自宅はどうなる?

身寄りのない人が亡くなった場合、所有していた持ち家も最終的に処分され、国のものとなります。
ただし、遺言書を用意していた場合、希望の人物に自宅を譲れますし、特別縁故者が自宅を受け継げる場合もあります。

特別縁故者として認められるには、時間と手間がかかりますので、内縁の妻や夫、義理の娘や息子に自宅を譲りたい場合は、遺言書を作成しておくと良いでしょう。

5-7 身寄りのない人はどのような終活を行うべき?

身寄りのない人は、自分が希望する人物に財産を受け継いでもらう、自分が認知症になったときの対策をするために下記の終活を行っておくのが良いでしょう。

  • エンディングノートを作成する
  • 見守りサービスの利用を検討する
  • 老後資金の計画を立てる
  • 自分の持ち物を整理しておく
  • 相続対策や遺言書の準備をしておく
  • 認知症対策をしておく
  • 葬儀やお墓の準備をしておく
  • 介護や入院の準備をしておく
  • 延命治療について決めておく
  • 身元保証サービスの利用を検討する
  • 死後事務委任契約の利用を検討する
  • 自分が亡くなった後のペットの飼い主を見つける
  • 残りの人生を楽しむためやりたいことリストをつくる

終活の中には時間がかかるものもあるので、元気なうちに自分ができるものから少しずつ進めていくことをおすすめします。
また、自分だけで行うのが難しい場合は、専門家に相談しながら行うのも良いでしょう。

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まとめ

高齢化社会に伴い、身寄りのない人の死亡件数は今後も増えていくと予想されます。
身寄りのない人が亡くなると、相続人がいないため、最終的に遺産は国のものとなってしまう恐れがあります。
自分が築いた財産をお世話になった人に遺したい場合は、遺言書を作成しておきましょう。

また、遺言書を作成するだけでなく、自分が認知症になったときや病気やケガになり入院が必要なときのために、任意後見制度や身元保証サービスの利用もおすすめします。
何から準備すればよいかわからない、自分に合う終活や相続対策を知りたい場合は、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談するのがおすすめです。

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