生計を維持していた人が亡くなっていた場合、遺された家族が生活に困らないように遺族年金が支給される場合があります。
しかし、遺族年金は自動的に支給されるのではなく、亡くなった人の家族が遺族年金の受給手続きをしなければなりません。
さらに、遺族年金の手続き期限は5年と決まっており、期間を過ぎてしまうと原則として遺族年金を受け取れなくなってしまいます。
家族が亡くなると様々な手続きが必要であり、バタバタしているうちに遺族年金の手続きを忘れてしまう可能性もあるのでご注意ください。
自分で相続手続きを進めるのが難しい、何から始めれば良いかわからない場合は相続を専門とする司法書士や行政書士に相談してみることもご検討ください。
本記事では、遺族年金の手続き期限や手続き方法についてわかりやすく解説します。
家族が亡くなったときの手続きは、下記の記事もご参考にしてください。
目次
1章 遺族年金の手続き期限は5年
遺族年金を受け取るには自分で手続きをしなければならず、手続き期限は「生計を維持していた人が亡くなった翌日から5年」です。
年金を受け取る権利である「基本権」は5年で時効を迎えてしまうからです。
なお、5年以内に手続きを行えばこれまで受け取っていなかった未支給分もさかのぼって受給できます。
また期限内に遺族年金の手続きが難しい際には、理由を書面で記載し申立て手続きをすれば時効が消滅せず手続き期限が延びる場合もあります。
しかし、遺族年金は遺された家族の生活を支えるためのお金です。
遺族が生活に困る、不安を抱えるなどがないように、できるだけ早く手続きをするのが良いでしょう。
2章 遺族年金の受給資格
遺族年金には手続き期限だけでなく、受給資格も設定されています。
遺族年金の手続きを行う前に、受給資格を満たしているかも確認しておきましょう。
年金の種類別に、受給資格について詳しく解説していきます。
2-1 遺族基礎年金の受給資格
遺族基礎年金とは、国民年金の被保険者であった人が亡くなったときに、子のいる配偶者もしくは子供が受け取れる年金です。
亡くなった人および遺族の受給要件は、それぞれ下記の通りです。
亡くなった人の受給要件
下記のいずれかを満たしている必要があります。
- 国民年金に加入していた
- 国民年金に加入しており日本国内に住所があり、死亡時の年齢が60歳以上65歳未満だった
- 老齢基礎年金を受給していた
- 老齢基礎年金の受給資格を満たしていた
遺族の受給要件
亡くなった人によって生計維持されていた下記の人物
- 子供のいる配偶者
- 子供
- 前年収入が850万円未満もしくは前年所得が655万5,000円未満
なお、子供とは18歳になる年度の3月31日を過ぎていない人物が該当します。
ただし、20歳未満で障害等級1級もしくは2級の場合は、子供として遺族基礎年金を受給可能です。
2-2 遺族厚生年金の受給資格
遺族厚生年金とは、亡くなった人が会社員などだったときに受け取れる年金です。
亡くなった人および遺族の受給要件は、それぞれ下記の通りです。
亡くなった人の受給要件
- 厚生年金に加入していた
- 厚生年金の加入期間中に初診日のある傷病が原因となり初診日から5年以内に死亡した
- 1級または2級の障害厚生年金を受給していた
- 老齢厚生年金を受給していた
- 老齢厚生年金の受給資格を満たしていた
遺族の受給要件
亡くなった人に生計を維持されていた遺族
ただし、遺族厚生年金を受給できる遺族は、下記のように優先順位が設定されています。
優先順位 | 受給対象者 |
第一順位 | 妻 夫(妻の死亡当時に55歳以上の人が対象) 子供 |
第二順位 | 父母(故人の死亡当時に55歳以上の人が対象) |
第三順位 | 孫 |
第四順位 | 祖父母(故人の死亡当時に55歳以上の人が対象) |
遺族厚生年金も遺族基礎年金同様に、収入および子供や孫の年齢要件が設定されているので、事前に確認しておきましょう。
3章 遺族年金の手続き方法
遺族年金は自動的に支給されるわけではなく、遺族が手続きをしなければなりません。
手続き方法は、亡くなった人が加入していた年金の種類によって下記のように異なります。
遺族年金の種類 | 亡くなった人が加入していた年金 |
遺族基礎年金 | 国民年金 |
遺族厚生年金 | 厚生年金 |
それぞれの手続きについて詳しく解説していきます。
3-1 遺族基礎年金
亡くなった人が自営業者などで国民年金に加入していた場合や老齢基礎年金を受給していた場合、遺族基礎年金を受給可能です。
遺族基礎年金の手続き方法および必要書類は、下記の通りです。
支給対象者 | 亡くなった人に生計を維持されていた下記の遺族
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手続き先 |
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必要書類 |
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3-2 遺族厚生年金
亡くなった人が老齢厚生年金を受給していた場合や厚生年金加入者が亡くなった場合は、遺された家族が遺族厚生年金を受け取れます。
なお、年金同様に遺族年金も2階建ての構造となっているので、遺族基礎年金と遺族厚生年金は両方とも受け取れます。
遺族厚生年金の手続き方法および必要書類は、下記の通りです。
支給対象者 | 亡くなった人に生計を維持されていた下記の遺族のうち最も優先順位の高い人物
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手続き先 |
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必要書類 |
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4章 遺族年金の手続きにかかる期間
遺族年金の手続きにかかる期間は約4ヶ月弱であり、手続きをすませた後すぐに遺族年金が支給されるわけではありません。
遺族年金の手続きから支給開始までの流れは下記の通りです。
- 必要書類を提出してから約60日で「年金証書・年金決定通知書」が届く
- 「年金証書・年金決定通知書」が届いてから約50日で遺族年金が支給される
一家の大黒柱が亡くなった場合や家計の状況によっては、遺族年金が支給されるまでの生活費に困ってしまう恐れもあるでしょう。
4-1 遺族年金が支給されるまでの生活費を工面する方法
先ほど解説したように、遺族年金の申請手続きをしても、すぐに受給できるわけではありません。
そのため、遺された家族の生活が困窮しないようにするには、下記の方法で対策する必要があります。
- 亡くなった人の死亡保険金を受け取る
- 相続手続きを完了させ、遺産を受け取る
亡くなった人が生命保険に加入していた場合、保険会社に死亡の事実を連絡し必要書類を提出すれば比較的早く死亡保険金が支給されます。
また、相続人全員で遺産分割協議を行い、亡くなった人の財産を誰がどのくらいの割合で受け取るかを決定すれば名義変更手続きや預貯金の解約手続きを行えます。
亡くなった人の銀行口座を解約し、家族が遺産を受け取れば当面の生活も安定しやすくなるはずです。
ただし、遺産分割協議を行うには相続人調査や相続財産調査などが必要です。
これらの調査に時間を取られてしまうと、それだけ遺産を受け取るまでにかかる時間も長くなってしまいます。
相続手続きをスムーズに終えたい場合は、相続に精通した司法書士や行政書士に相続人調査や相続財産調査を依頼することもご検討ください。
まとめ
遺族年金は自動的に支給されるわけではなく、支給要件を満たす人が自分で手続きをしないと受給できません。
また、遺族年金の手続き期限は原則として「生計を維持していた人が亡くなってから5年以内」と決められています。
期限を過ぎてしまうと、遺族年金を受給できない恐れや過去に発生してた遺族年金をさかのぼって受給できない恐れもあるのでご注意ください。
相続発生後は様々な手続きが必要になるので、必要書類の収集などを効率よく進めることも大切です。
自分で相続手続きをするのが難しい場合や何から始めて良いかわからない場合は、相続を専門とする司法書士や行政書士に相談するのも良いでしょう。
グリーン司法書士法人では、相続手続きに関する相談をお受けしています。
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