遺留分放棄と相続放棄の7つの違い|どちらがおすすめ?注意点とは?

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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 6
 この記事を読んでわかること

  • 遺留分放棄と相続放棄の違いがわかる
  • 遺留分放棄と相続分の放棄、相続分がないことの証明の違いがわかる
  • 遺留分放棄、相続放棄がおすすめな人の特徴がわかる

遺留分放棄とは、名前の通り自分に認められている遺留分を放棄する手続きです。
一方で、相続放棄とはプラスの財産もマイナスの財産も一切相続しなくなる手続きです。

遺留分放棄も相続放棄も遺産を受け継ぐ権利を失うという点では共通していますが、違いもあるのでどちらを選択するか慎重に判断しなければなりません。
例えば、亡くなった人に借金があるならば、遺留分放棄ではなく相続放棄を選択するのが良いでしょう。

本記事では、遺留分放棄と相続放棄の違い、どちらを選択すべきかを詳しく解説していきます。
遺留分については、下記の記事で詳しく解説しているのであわせてお読みください。

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1章 遺留分放棄と相続放棄の7つの違い

遺留分放棄と相続放棄の違いは、主に下記の7つです。

遺留分放棄相続放棄
放棄する権利遺留分侵害額請求権相続権
相続の可否できるできない
遺産分割協議参加する参加しない
借金の相続するしない
代襲相続の可否できる
遺留分の請求はできない
できない
他の相続人への影響なし
他の人の遺留分はそのまま
あり
他の人の相続分が増える
相続発生の放棄家庭裁判所の許可が必要できない
相続発生の放棄自由にできる家庭裁判所で手続きをする
(3ヶ月以内)

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1-1 放棄する権利

遺留分放棄では、遺留分侵害額請求権を放棄するのに対し、相続放棄では相続権そのものを放棄します。
遺留分侵害額請求権とは、自分の相続分が遺留分より少なかった場合に、遺産を多く受け取った人物に対して、遺留分侵害額相当分の金銭を請求する権利です。

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1-2 遺産の相続可否

遺留分放棄は、あくまで遺留分侵害額請求権のみを放棄するため、相続発生時には遺産を受け継げます。
一方で、相続放棄は相続権そものを放棄しているため、遺産を一切受け継ぐことができなくなります。

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1-3 遺産分割協議への参加

遺留分放棄では、相続人としての地位を失っていないため、遺産分割協議への参加を求められます。
遺産分割協議とは、相続人全員で「誰がどの遺産をどれくらいの割合で受け継ぐか」を決める話し合いです。
遺産分割協議で決まった内容をもとに、各遺産の名義変更を進めていきます。

一方、相続放棄をした場合、最初から相続人ではなかったものとして扱われるため、遺産分割協議に参加することはできません。

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1-4 借金の相続

遺留分放棄は遺留分侵害額を請求する権利を放棄しているだけに過ぎないため、故人が遺した借金を受け継いでしまいます。
一方で、相続放棄をすればプラスの財産もマイナスの財産も一切相続しなくなるため、故人が遺した借金の返済義務を負うことはありません。

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1-5 代襲相続の可否

遺留分放棄をしていても、代襲相続は発生します。
代襲相続とは、本来相続人である人物が相続発生時にすでに死亡していた場合、相続人の子供が代わりに相続権を受け継ぐことです。

例えば、下記のケースを見てみましょう。

代襲相続人とは?

上記のケースで、次男が亡くなる前に被相続人の遺留分放棄をしていたとしましょう。
相続が発生したときに、次男はすでに亡くなっているため、孫が代襲相続人として遺産を受け継ぎます。
ただし、次男が生前のうちに遺留分放棄していたため、孫も遺留分放棄した相続権を受け継ぐことになります。

一方で、相続放棄は最初から相続人ではなかったとして扱われる制度のため、相続放棄をした相続人の子供や孫が代襲相続人として遺産を受け継ぐことはありません。

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1-6 他の相続人への影響

遺留分放棄をしても、他の相続人への影響はありません。
遺留分放棄では、相続権を失うことはないため、他の相続人の相続割合が変化することもありません。
加えて、遺留分放棄をした相続人がいたとしても、他の相続人の遺留分が増えることもありません。

一方で、相続放棄をした相続人がいると、他の相続人の相続割合や相続順位に影響を与えます。
相続放棄をした相続人がいれば、他の相続人の相続割合は増加します。
また、同順位の相続人が全員相続放棄した場合は、次の優先順位の相続人に相続権が移ることも理解しておきましょう。

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1-7 生前に手続きできるか

遺留分放棄は、相続発生前と相続発生後のどちらも手続き可能です。
ただし、相続発生前に遺留分放棄をする場合には、家庭裁判所の許可を得る必要があります。

一方、相続放棄については生前のうちに手続きすることはできません。
両親が多額の借金をしていて遺産を受け継ぎたくない、相続人同士の関係が悪く相続トラブルに巻き込まれるのを避けたいといった事情があっても、生前の相続放棄は認められないのでご注意ください。

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2章 遺留分放棄と「相続分の放棄」「相続分がないことの証明」の違い

遺留分放棄とよく似た制度に「相続分の放棄」「相続分がないことの証明」といったものがあります。
それぞれの違いについて、詳しく見ていきましょう。

2-1 遺留分放棄と相続分の放棄の違い

遺留分放棄とは、遺留分侵害額請求権を放棄することなのに対し、相続分の放棄は相続人が自分の法定相続分を放棄することです。
相続分の放棄をすれば、放棄した人の相続分は他の相続人がそれぞれの相続割合に応じて受け継ぎます。

遺留分侵害額を請求しないだけでなく、遺産もいらないといった場合には、相続分の放棄をしてしまっても良いでしょう。
なお、相続分は放棄するだけでなく、特定の相続人などに譲渡することも可能です。

ただし、相続分の譲渡は相続放棄と異なり、故人が遺した借金の返済義務は受け継いでしまう点にご注意ください。

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2-2 遺留分放棄と「相続分がないことの証明」の違い

相続分がないことの証明とは、すでに生前贈与などで法定相続分以上の財産を受け継いでいるため、自分に相続権がないことを証明することです。
相続分がないことの証明を文書で記載し、実印による押印、署名をしておけば、相続人であっても遺産分割協議に参加する必要がなくなります。

過去に多額の生前贈与を受けており、遺産分割協議や相続手続きに参加するのを手間に感じる場合は、相続分がないことの証明を作成、提出しても良いでしょう。
ただし、相続分の放棄と同様に相続分がないことの証明も、故人の借金の返済義務は受け継いでしまうのでご注意ください。


3章 遺留分放棄がおすすめな人・相続放棄がおすすめな人の特徴

本記事の1章で解説したように、遺留分放棄と相続放棄にはいくつかの違いがあります。
そのため、相続人や遺産の状況に合わせて、遺留分放棄と相続放棄のどちらを選択すべきか決定する必要があります。

それぞれがおすすめな人の特徴を詳しく見ていきましょう。

3-1 遺留分放棄がおすすめな人の特徴

遺留分放棄がおすすめな人は、事業承継を考えている人や遺産の寄付を検討している人など、主に下記の通りです。

  • 相続で揉めてほしくない
  • 特定の人物に事業を継いでもらいたい
  • 遺産を事前団体などに寄付したい
  • 遺産が必要ではない

例えば、離婚歴があり前妻との間に子供がいる場合、相続対策をしないでいると①後妻と②後妻との間に生まれた子、③前妻の子が相続人になり、協力して相続手続きを進めなければなりません。
後妻と前妻の子が互いに協力しあうことが難しい場合や余計な関わりを避けたい場合は、前妻の子に遺留分相当額の金銭を生前贈与して、遺留分放棄してもらうのも良いでしょう。

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3-2 相続放棄がおすすめな人の特徴

相続放棄は相続トラブルに巻き込まれたくない人や故人が多額の借金を遺していたケースなどにおすすめです。
具体的には、下記に該当する場合は、相続放棄を検討しましょう。

  • 故人が多額の借金を遺しているケース
  • 相続トラブルに巻き込まれたくないケース
  • 財産を一人の相続人に集中させたいケース
  • 相続したくない財産があるケース

遺留分放棄はあくまで遺留分を請求する権利を放棄するだけなので、故人が遺した借金の返済義務を受け継いでしまいます。
したがって、故人が借金を遺して亡くなった場合は、相続放棄の手続きを行いましょう。

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4章 遺留分放棄をする際の注意点

遺留分放棄は相続発生前と相続発生後で手続きが異なるので注意しましょう。
また、生前のうちに遺留分放棄が認められると後から撤回できないことも理解しておきましょう。

それぞれ詳しく解説していきます。

4-1 生前の遺留分放棄は家庭裁判所への申立てが必要である

相続発生前に遺留分放棄する場合は、家庭裁判所での手続きが必要となるのでご注意ください。
加えて、家庭裁判所で遺留分放棄を認めてもらいやすくするには、申立てした相続人がすでに遺留分相当額の金銭を受け取っている必要があります。

遺留分放棄の申立て方法および必要書類は、下記の通りです。

手続きする人遺留分放棄したい人
手続き先被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所
費用
  • 収入印紙800円分(申立書に貼る)
  • 連絡用の郵便切手代
必要書類
  • 申立書
  • 土地財産目録、建物財産目録、現金・預貯金・株式等財産目録
  • 被相続人の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
  • 申立人の戸籍全部事項証明書
  • その他裁判所から指示されたもの
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4-2 生前の遺留分放棄は撤回できない

遺留分放棄が認められた後は、原則として撤回できないのでご注意ください。
生前行った遺留分放棄を撤回するには、再び家庭裁判所に判断してもらわなければなりません。

家庭裁判所が撤回を認めてくれる可能性は少ないので、遺留分放棄を申し立てる際には慎重に判断する必要があるでしょう。

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まとめ

遺留分放棄と相続放棄はどちらも相続に関する権利を放棄する手続きですが、放棄する権利や取り扱いには大きな違いがあります。
特に、遺留分放棄では亡くなった人が遺した借金の返済義務を放棄することはできないので、ご注意ください。
亡くなった人が多額の借金を遺していた場合は、遺留分放棄ではなく相続放棄をしましょう。

遺留分放棄と相続放棄のどちらをすれば良いのか迷ってしまうケースや故人が借金を遺しているかわからない場合は、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
相続に詳しい司法書士や弁護士であれば、どのような手続きをするのがベストか提案できますし、相続放棄が必要な場合は手続きまで一括でサポート可能です。

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