贈与税の税率は、贈与者と受贈者の関係や受贈者の年齢によって変わります。
そのため、叔母や叔父から財産を生前贈与された場合、両親や祖父母から贈与されるよりも税率が高くなる場合があります。
また、叔母や叔父から贈与される際には、贈与税の控除や特例を適用できない点にも注意しなければなりません。
そのため、生前贈与を受け取る際には贈与税を事前にシミュレーションしておきましょう。
本記事では、叔母や叔父から財産を贈与されるときにかかる税金について解説します。
生前贈与のメリットやデメリットについては、下記の記事で詳しく紹介していますのでご参考にしてください。
目次
1章 1年間で110万円以内の贈与には贈与税がかからない
贈与税には年間110万円の控除枠が用意されており、控除内であれば贈与税の納税および申告は必要ありません。
贈与税の基礎控除は贈与者が誰であっても利用できるので、叔母や叔父からの贈与にも利用できます。
そのため、「叔母から100万円もらった」「叔母と叔父から50万円ずつ贈与された」などといったケースでは、贈与税は課税されません。
2章 叔母・叔父からの贈与は父母からの贈与に比べ税率が高くなる
贈与税の税率には「特例贈与税率」と「一般贈与税率」の2種類があります。
特例贈与財産の方が税率が低いかわりに、下記の要件を満たさないと適用されません。
- 受贈者の年齢が18歳以上
- 受贈者は子供や孫などの直系卑属
- 贈与者が親や祖父母などの直系尊属
叔母や叔父は直系尊属にあたらないため、一般贈与税率が適用されます。
特例贈与税率および一般贈与税率は、それぞれ下記の通りです。
そのため、叔母や叔父から生前贈与を受け取った際に「以前、両親から贈与されたときと同額程度の贈与税の負担だろう」と思っていると、予想よりも贈与税の負担が重くなってしまう恐れがあるのでご注意ください。
叔父や叔母から生前贈与を受けた場合、両親や祖父母などの直系尊属から贈与したときよりも贈与税の税率が高くなります。
そして、叔父や叔母が亡くなり遺産を相続した場合も、相続税が2割加算となるのでご注意ください。
叔父や叔母から財産を受け継ぐには法定相続人として受け継ぐ、遺言書で指定されていてい受遺者となる場合がありますが、どちらも相続税の税率は2割加算となります。
3章 叔母・叔父から1,000万円贈与されたときにかかる贈与税
叔母や叔父から贈与されたときに適用される「一般贈与税率」と両親や祖父母から贈与されたときに適用される「特例贈与税率」を比較してみましょう。
叔母や叔父から1,000万円の贈与を受け取ったときにかかる贈与税額は、下記の通りです。
- 贈与財産:1,000万円-110万円=890万円
- 贈与税額:890万円×40%-125万円=231万円️
贈与税は累進課税税率を採用しているため、贈与額が大きくなればなるほど負担が重くなってしまいます。
3-1 父親・母親から1,000万円贈与されたときにかかる贈与税
続いて、父親や母親から贈与を受け特例贈与税率が採用されるときの贈与税額を計算してみましょう。
贈与税額は、下記のように計算できます。
- 贈与財産:1,000万円-110万円=890万円
- 贈与税額:890万円×30%-90万円=177万円
叔母や叔父から1,000万円の贈与を受け取ったときと比較すると、税額が54万円も異なります。
このように両親や祖父母から贈与された場合とそれ以外の人物から贈与された場合は、贈与財産の金額にもよりますが贈与税の金額が数十万円から百万円近く変わってしまう場合があります。
4章 叔母・叔父から贈与を受けたときの注意点
叔母や叔父から贈与を受け取ったときには、親や祖父母などから贈与されたときより贈与税が高くなる可能性がある点に注意が必要です。
また、贈与税を節税できる控除や特例もほとんど使用できなくなるため、贈与税を節税しにくい点にも注意しましょう。
叔母や叔父から贈与されるときの注意点について詳しく解説していきます。
4-1 贈与税の控除・特例は使用できない
贈与税には、様々な控除や特例がありますが、叔母や叔父などから贈与を受けた場合には利用できないのでご注意ください。
贈与税の控除や特例の多くは、親や祖父母などの直系尊属から子や孫などの直系卑属に贈与した際に適用できるものがほとんどだからです。
贈与税を2,500万円まで非課税にできる相続時精算課税制度も叔母や叔父からの贈与では利用できません。
叔母や叔父からの生前贈与で利用できるのは、1年間につき110万円の贈与税の基礎控除のみとなります。
そのため、叔母や叔父から贈与を受ける際には贈与税を事前にシミュレーションしておくことが大切です。
自分で贈与税の計算をするのが難しい場合や相続と生前贈与のどちらが有効か知りたい場合は、相続税対策に詳しい税理士に相談するのも良いでしょう。
4-2 相続発生前3~7年以内の贈与に相続税がかかる恐れがある
相続人が相続発生前に生前贈与を受けていた場合は、贈与財産が相続税の課税対象になる場合があります。過去に行われた贈与が相続税の課税対象になることを「生前贈与加算」と呼び、贈与が行われた時期によって課税対象となる時期が変わります。
生前贈与の時期 | 生前贈与加算の対象期間 |
2023年12月31日まで | 相続開始から3年以内 |
2024年1月1日以降 | 相続開始から7年以内 |
なお、生前贈与加算が行われるのは相続人もしくは受遺者が対象期間に生前贈与を受け取っていた場合のみです。
そのため、下記のケースに該当しない場合は、叔母や叔父から贈与を受け取っていても相続税の課税対象にはなりません。
- 甥や姪が代襲相続人となったとき
- 甥や姪が遺贈で財産を受け継いとき
代襲相続とは、本来であれば相続人である人物がすでに死亡している場合に相続人の子供が財産を受け継ぐことです。
そして、遺贈とは遺言書などで亡くなった人が相続人以外の人物に財産を遺すことです。
まとめ
親や祖父母などの直系尊属以外から生前贈与を受け取ると、贈与税の税率が「一般贈与税率」になります。
そのため、両親や祖父母から生前贈与を受けたときよりも贈与税の金額が高くなる可能性があります。
また、直系尊属からの贈与の際に利用できる控除や特例は、叔母や叔父からの贈与を受ける際には適用できません。
このように、生前贈与の際にかかる贈与税は贈与者と受贈者の関係によって変わってきます。
「思ったより贈与税の金額が高かった」とならないように、生前贈与の際には贈与税のシミュレーションをしておくことが大切です。
贈与税のシミュレーションを自分で行うのが難しい場合は、生前贈与に精通した税理士に相談するのも良いでしょう。
グリーン司法書士法人では、相続税対策や生前贈与に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料ですし、信頼できる税理士の紹介も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
両親から1,000万円贈与されると贈与税はいくら?
両親から1,000万円の贈与をうけると、177万円の贈与税がかかります。
1,000万円の贈与にかかる贈与税はいくら?
叔母や叔父などから1,000万円の贈与をうけると、231万円の贈与税がかかります。