除籍謄本とは、中に入っている人が死亡、結婚などにより全員いなくなった戸籍の写しです。
戸籍の中には父親や母親、子供などの家族が入っており、死亡や結婚などによって戸籍から除かれていきます。
家族や親族が亡くなったときには、故人が生まれてから死亡するまで連続した戸籍謄本や除籍謄本、改正原戸籍などを集めなければなりません。
除籍謄本や戸籍謄本は本籍地のある市区町村役場で取得可能です。
相続手続きは戸籍謄本類の収集だけでなく、様々な種類があり期限が決まっているものもあります。
自分で相続手続きを行うのが難しい場合やミスなく完了したい場合は、相続に詳しい司法書士や行政書士に頼ることもご検討ください。
本記事では、除籍謄本とは何か、相続手続きで必要な理由、取得方法を解説します。
目次
1章 除籍謄本とは
除籍謄本とは、中に入っている人が死亡、結婚などにより全員いなくなった戸籍の写しです。
戸籍の中には父親や母親、子供などの家族が入っており、死亡や結婚などによって戸籍から除かれていきます。
そして、最終的に誰もいなくなった戸籍を「除籍」と言い、除籍の写しを除籍謄本と呼びます。
除籍謄本の写しを取得すれば、その戸籍の中に誰もいないことを証明可能です。
なお、戸籍にはいくつかの種類があり、いざ戸籍の写しが必要になったときにどの戸籍が必要か迷ってしまうケースもあるのではないでしょうか。
戸籍の種類や除籍謄本の違いについて、詳しく見ていきましょう。
1-1 除籍謄本と戸籍謄本の違い
誰もいなくなった戸籍の写しを「除籍謄本」と呼ぶのに対し、戸籍に1人でも残っているときの写しは「戸籍謄本」と呼びます。
1-2 除籍謄本と改製原戸籍謄本の違い
改正原戸籍謄本とは、戸籍法の改正や戸籍の電子化によって戸籍が新しく作り変えられた際の「以前の戸籍謄本」を指します。
戸籍が新しく作り変えられるとき、以前の戸籍は使用されなくなりますが、記録として残しておくために改正原戸籍謄本として役所内に保管される仕組みです。
1-3 除籍謄本と除籍の全部事項証明書の違い
除籍謄本と除籍の全部事項証明書には、大きな違いはありません。
というのも、戸籍法の改正で戸籍のコンピュータ処理や管理を行えるようになりました。
戸籍のコンピュータ化により、謄本を全部事項証明書と呼ぶようになりました。
したがって、コンピュータ化されている除籍謄本の場合、正式名称は「除籍の全部事項証明書」です。
1-4 除籍謄本と除籍抄本の違い
除籍謄本と除籍抄本では、取得した際に証明できる人物の範囲が異なります。
除籍謄本では、戸籍に記録されていた人が全員除籍になったことや原因を証明できます。
それに対し、除籍抄本では戸籍に記録されていたうちの一部の人が除籍したことのみを証明可能です。
除籍謄本と除籍抄本の取得費用に差はないことや除籍謄本の方が確認できる情報が増えることから、相続手続きの際には除籍謄本を取得しておくのが良いでしょう。
2章 相続手続きで除籍謄本が必要になる理由
相続手続きで除籍謄本が必要になるのは、主に相続人調査を行うときです。
家族や親族が亡くなると、相続人が誰か確定するために相続人調査を行う必要があります。
相続人調査では、故人が生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本や除籍謄本、改正原戸籍謄本を収集しなければなりません。
故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を収集しないと、家族も知らなかった生き別れの兄弟の存在や隠し子の存在に気付かずに遺産分割協議などの手続きを進めてしまう可能性があるからです。
遺産分割協議とは、誰がどの遺産をどれくらいの割合で受け継ぐかを決定する話し合いであり、相続人全員で行わなければなりません。
また、故人の除籍謄本は遺産分割協議が完了した後の遺産の名義変更手続きでも使用します。
- 亡くなった人の預貯金の払い戻し
- 株や自動車の名義変更手続き
- 不動産の名義変更手続き(相続登記)
- 法定相続情報一覧図の申請
上記のように様々な手続きで使用しますので、家族や親族が亡くなったら速やかに相続人調査を行いましょう。
亡くなった人の戸籍の枚数が多く、相続人調査を行うのが難しい場合は、相続手続きに詳しい司法書士や行政書士に依頼するのも良いでしょう。
3章 除籍謄本に記載されている内容
上記のように、除籍謄本には本籍地と戸籍の筆頭者の氏名や除籍理由など、下記の内容が記載されています。
- 本籍地と戸籍の筆頭者の氏名
- 戸籍が改製された日付
- 除籍理由
- 以前の本籍地および戸籍の代表者名
- 家族全員分の名前および除籍理由
相続人調査では、亡くなった人の生まれてから死亡するまで連続した戸籍謄本類を取得しなければなりません。
取得時には、死亡時の戸籍謄本類から取得し、戸籍に記載されている以前の本籍地を頼りに古い戸籍を遡って取得していきましょう。
4章 除籍謄本を取得する方法
除籍謄本は、本籍地のある市区町村役場で取得可能です。
相続人の居住地と故人の本籍地が遠く窓口請求が難しい場合は、郵送でも請求できます。
除籍謄本の取得方法や必要書類は、下記の通りです。
取得できる人 |
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取得先 | 本籍地のある市区町村役場 |
取得方法 |
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費用 | 【窓口請求】 手数料:750円 【郵送請求】 手数料:750円(定額小為替) 返信用の切手 |
必要書類 |
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5章 除籍謄本の有効期限・保管期間
除籍謄本自体には有効期限はありませんが、一部の金融機関では有効期限を設定している場合があるのでご注意ください。
また、除籍謄本を役所で保管している期間は、戸籍に入っている人全員が除籍になった年度の翌年から150年と決められています。
除籍謄本の有効期限および保管期間について、詳しく見ていきましょう。
5-1 除籍謄本の有効期限
除籍謄本自体に有効期限は存在しませんが、一部の金融機関やその他の申請先では独自に有効期限を設定している場合があります。
手続きをする際や除籍謄本を取得する際には、申請先に除籍謄本の有効期限について確認をしておきましょう。
相続手続きの主な申請先における除籍謄本の有効期限は、それぞれ下記の通りです。
申請先 | 有効期限 |
法務局 | 有効期限なし |
税務署 | 有効期限なし |
裁判所 | 有効期限なし |
証券保管振替機構(ほふり) | 有効期限なし |
メガバンク | 三井住友銀行:発行日から1年以内 三井住友銀行:有効期限なし |
ゆうちょ銀行 | 有効期限なし |
5-2 除籍謄本の保管期間
除籍謄本の保管期間は、戸籍に入っている人全員が除籍になった年度の翌年から150年です。
しかし、平成22年の戸籍法改正以前の保管期間は80年とされており、改正原戸籍謄本に関しては50~100年と種類ごとに設定されていました。
そのため、自治体によっては平成22年の戸籍法改正以前の保管期間が過ぎたものから、徐々に除籍簿を廃棄している場合があります。
万が一、取得したい除籍謄本や改正原戸籍謄本が廃棄されている場合は、廃棄証明書を取得し相続手続きを行う必要があります。
古い除籍謄本や改正原戸籍謄本の取得、廃棄証明書を使用した相続手続きには、専門的な知識が必要になるので、相続手続きに詳しい司法書士や行政書士に依頼するのが良いでしょう。
6章 除籍謄本を取得する際の注意点
相続手続きに使用する除籍謄本を取得する際には、死亡届の提出から内容反映までにタイムラグがあることなどに注意しましょう。
具体的には、下記の5点に注意が必要です。
- 死亡届の内容反映には1~2週間程度かかる
- 相続人調査では故人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要になる
- 古い除籍謄本は読みにくい場合がある
- コンビニでは取得できない
- 除籍謄本を取得できる人は限られている
それぞれ詳しく見ていきましょう。
6-1 死亡届の内容反映には1~2週間程度かかる
家族や親族が亡くなると死亡届を提出しますが、死亡届の内容が戸籍謄本や除籍謄本に反映されるまでには1~2週間程度かかる場合があります。
特に、死亡届の提出地が故人の本籍地と異なる場合、反映に1週間以上かかる可能性が高いです。
したがって、死亡届の提出後すぐに故人の死亡を証明とする戸籍謄本や除籍謄本の取得はできないのでご注意ください。
6-2 相続人調査では故人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要になる
相続人調査をする際には、故人が生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本類が必要です。
戸籍謄本類には、親子関係や結婚離婚などの情報だけでなく、養子縁組の有無や認知した子供に関する情報も記載されています。
故人が生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本を取得すれば、下記の情報も漏れなく入手可能です。
- 配偶者や実子も知らなかった養子や婚外子の存在
- 疎遠になっている兄弟姉妹
- 故人の親や祖父母に関する情報
「相続人が誰か把握できている」と故人の配偶者や子供が思っている場合でも、相続人調査は必ず行いましょう。
相続人調査を行うのが難しい、手間がかかるとお悩みの場合は、相続に詳しい司法書士や行政書士に相続人調査を依頼可能です。
6-3 古い除籍謄本は読みにくい場合がある
近年の除籍謄本はコンピュータ化されており読みやすいですが、大正明治や昭和初期の除籍謄本は手書きのため読みにくい場合があります。
達筆で読みにくい、旧字体が使用されていて内容を判別できない恐れもあるのでご注意ください。
除籍謄本を読み取れないと、遡って戸籍謄本類を取得できなくなってしまいます。
古い除籍謄本や改正原戸籍の収集が必要な相続人調査は、戸籍の判読に慣れている司法書士や行政書士に依頼するのがおすすめです。
6-4 除籍謄本はコンビニでは取得できない
コンビニのマルチコピー機で戸籍謄本を取得できますが、除籍謄本の取得には対応していないので注意が必要です。
コンビニで取得できる戸籍謄本類は、最新の戸籍謄本のみとなっています。
そのため、除籍謄本を取得する際には本記事の4章で紹介した方法で取得しなければなりません。
6-5 除籍謄本を取得できる人は限られている
故人の除籍謄本を取得できる人物は、下記のように限られています
- 故人と同一戸籍に入っている人
- 故人の直系尊属および直系卑属(親や子、孫など)
- 相続人
例えば、父親もしくは母親を亡くした子供であれば、同一戸籍に入っているもしくは直系卑属の立場から除籍謄本を取得できます。
一方で、故人が直系尊属や直系卑属ではない兄弟姉妹や叔父、叔母の関係だったときには注意しなければなりません。
兄弟姉妹や叔父、叔母が亡くなり除籍謄本を取得したいときには、まずは自分が故人の相続人にあたると証明できる戸籍謄本類の取集が必要です。
そして、収集した戸籍謄本類を役所に見せ「自分が故人の相続人であること」を証明しないと、除籍謄本を取得できません。
なお、司法書士や行政書士の士業であれば「職務上請求」という制度を利用して、除籍謄本を取得可能です。
相続税の申告期限が迫っている場合など、急ぎで相続人調査をしなければならないケースでは、相続の専門家に相続人調査を依頼するのが良いでしょう。
まとめ
家族や親族が亡くなったときには、亡くなった人が生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本を収集しなければなりません。
戸籍は結婚や本籍地の移動、戸籍法の改正などにより作り変えられるので、1人につき複数枚の戸籍があることが一般的です。
平日日中は仕事をしていて戸籍謄本の収集が難しい人や古い戸籍謄本を取得したものの判別が難しい場合は、相続に詳しい司法書士や行政書士に相談するのが良いでしょう。
相続に精通した司法書士や行政書士であれば、戸籍の収集から預貯金などの相続財産の名義変更手続きまで一括で対応可能です。
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