相続するものがなければ、相続手続きは何もしなくて良いのでしょうか。
結論としては「YES」です。相続するものが一切ないのであれば、相続手続きも必要ありません。
しかし、「相続するものが一切ない」という状況はあまりなく、把握していないだけで、相続財産はなにかしらあるのがほとんどです。
また、把握していない相続財産があり、それを放置してしまうと様々なリスクが生じます。
そのため何もないと思っていても、念の為確認することが大切です。
この記事では、相続が発生した際に確認しておくべきもの、借金がある場合の対処などについて解説します。
ぜひ参考にしてください。
目次
1章 相続するものがないときは手続きは不要
相続するものが一切ない場合、相続手続きは不要です。
ただし、「相続するものが一切ない」というのは、預金口座、不動産、借金や未払い金なども含めて一切ない状態です。
そのような状態はケースとして稀であり、ほとんどの場合、把握していないだけで何らかのプラス財産やマイナス財産があるものです。
把握していない相続財産があり、それを放置してしまうと様々なリスクが生じます。
1−1 相続財産を放置した場合のリスク
①借金・未払金
借金や未払金も相続財産です。このような借金(債務)や未払金をマイナス財産と言います。
このような借金は放っておくと、相続人が自動的に責任を負うことになります。
例えば以下のようなものです。
- 銀行やカード会社から借入金
- 入院費・医療費の未払い
- 携帯料金
- 家賃など
一般的に「借金」と認識しているもの以外にも、生前に支払いきれなかった日常生活費用も相続人が背負うことになります。
知らずに借金を負った場合、債権者(お金を貸している人)から督促を受けたり、返還を求める裁判を起こされたりする恐れがあります。最悪の場合、財産や給与を差し押さえられる可能性も。
借金を負うことは、大きなリスクとなりますので、必ず確認するようにしましょう。
②不動産
不動産を放置すると、以下のようなリスクがあります。
- 相続人に固定資産税が課税される
- 不動産の劣化で近隣に迷惑をかけ損害賠償を請求される可能性がある など
不動産を放置するリスクについて詳しくはこちらをご覧ください。
不動産は所有しているだけでコストや手間がかかるものです。相続登記(不動産の名義変更)をしていなくても、固定資産税の税金や管理義務は相続人に課されるので、不要な場合には相続放棄をするべきでしょう。
③預貯金・有価証券
銀行口座に入っている預貯金や、株券等の有価証券は、払い戻しや名義変更をしないまま5年以上放置すると、今後一切手続きができなくなる可能性があります。
- 【預貯金】
- 預貯金の時効は5年です。
時効を経過すると、口座から引き出しができなくなる可能性があります。
また、時効が成立していなくても10年放置すると「休眠口座」として扱われ、公益活動などに使用されることもあります。
- 【有価証券】
- 有価証券は名義変更をしないまま5年間放置すると「株主所在不明」として扱われ、競売で売却されたり会社に買い取られたりする可能性があります。
また、売却されてから5年から10年経過すると、売却益を受け取る権利の時効を迎え、売却益すら受け取ることができなくなります。
④相続税
通常、相続税は遺産総額が基礎控除【3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)】以内であれば課税されません。
「相続財産はない」と思っていたら、思わぬところに高額な遺産があり、相続税の課税対象だったという可能性は否めません。
相続税の申告は、相続開始を知った翌日から10ヶ月以内が期限です。これを過ぎると延滞税などのペナルティが課されることとなります。
このように、相続財産を放置するとリスクを伴いますので「知らなかった」という状況にならないよう、しっかりと確認しましょう。
2章 本当に相続するものはない?確認すべき4つのこと
前章でもお話したとおり、「相続するものが一切ない」という状態は多くありません。
そのため、相続財産はないと思っていても、念の為確認しておくべきです。
主に、以下の財産がないか確認しておきましょう。
- 借金がないか
- 預金ないか
- 株や金融資産がないか
- 不動産はないか
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2−1 借金がないか
1章でもお話したとおり、把握していない借金が相続財産にあった場合、知らないうちに相続人が借金を負うこととなってしまします。
必ず、相続財産に借金がないか確認しましょう。
- 自宅に、借用書や借入残高が分かる書類、消費者金融からの郵送物がないかを確認する
- 国や自治体からの税金や健康保険の督促状がないか確認する
- 通帳に返済している履歴がないか確認する
- 信用情報機関に照会してもらう
一般的な消費者金融からの借金以外にも、団体信用生命保険に加入していない住宅ローンや、奨学金、未納の税金なども相続財産に含まれます。
自宅にある資料だけではわからない場合には、信用情報機関に問い合わせてみてください。信用情報機関とは、個人の支払い能力に関するデータを管理する機関で、以下の3つがあります。
- 全国銀行個人信用情報センター
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
2−2 預貯金はないか
銀行の口座に、思わぬ大金が入っている可能性もあります。
銀行口座の預貯金は、5年以上取引せずに放置すると引き出しができなくなる可能性があります。
少額で手間をかけてまで引き出すほどではないのであれば良いですが、数十万円、数百万円のお金が入っている可能性も否めませんので、念の為確認しておくのが良いでしょう。
- キャッシュカードや通帳を探す
- インターネット口座がないかスマートフォンやPCで確認する
- 金融機関からの郵送物がないか探す
- 銀行に問い合わせる
まずは、被相続人のキャッシュカードや通帳がないか確認しましょう。遺品整理をする中で、口座が発見されることも少なくありません。
最近ではネット口座を利用している方も多いため、スマートフォンやPCで取引口座がないか確認することも大切です。
また、金融機関から取引の報告書などが届いていることもあります。カードや通帳以外にも、郵便物も確認しましょう。
キャッシュカードや通帳が見つからない場合は、銀行に問い合わせることで口座の有無や取引履歴を開示してもらえます。思い当たる銀行から問い合わせてみましょう。
2−3 株や金融資産がないか
預貯金と同様、株や金融資産がある場合、高額な財産になる可能性があります。
場合によっては、数千万になる可能性も否めません。
また、被相続人が会社を運営しているような場合には、自社株を有している可能性もあります。自社株は、会社の今後にも関わるものですので必ず確認しましょう。
- 証券会社や金融機関等からの書類が届いていないか確認
まずは、
- 証券会社
- 信託銀行
- ゆうちょ銀行
- 金融機関
などからの、取引明細書や年間取引報告書、株主総会に関する連絡などの書類がないか確認しましょう。
取引先がわかれば、そこに問い合わせることで照会してくれます。
もし、上記のような書類が一切なく、わからない場合、以下の方法で確認してください。
- 上場株式:株式会社証券保管振替機構に問い合わせ
- 国債:ゆうちょ銀行に問い合わせ
- 金融資産:思い当たる金融機関、信託銀行に問い合わせ
- 非上場株式:会社に問い合わせ
- 被相続人が会社のオーナーの場合:司法書士などの専門家に相談
2−4 不動産はないか
被相続人が賃貸ではなく、持ち家に暮らしている場合には、その家が相続財産となります。そのため、多くの場合、不動産は相続財産に含まれるのです。
一方、被相続人は賃貸に暮らしているものの、別に不動産を所有しているというケースもあります。例えば、田舎の生家や田畑などです。
不動産は、1章でも解説したとおり、放置すると様々なリスクが生じます。
把握していない不動産があるかもしれませんので、しっかりと確認しましょう。
被相続人が不動産を所有しているかどうかは、市区町村役場で「名寄帳」という書類を取り寄せましょう。
ただし、名寄帳は、その市区町村が管轄する地域の不動産しか記載されていません。
他の市区町村に不動産を所有している場合には、あたりをつけて名寄帳を取り寄せる必要があります。
もし、検討もつかないという場合には、自宅に以下のような、不動産に関する書類がないか確認しましょう。
- 不動産の権利証
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 固定資産税納税通知書
不動産は、登記をされていないものであっても相続不動産になります。登記されていない場合には、発見が難しいかもしれません。
不安が残る方は、司法書士に依頼して調査してもらうのが良いでしょう。
3章 借金や“負動産”があるか心配なら相続放棄をしておこう
- 借金があるかもしれない
- 田舎の土地があっても困る
- 負動産を相続しても管理できないから相続したくない
このような事情があり、特に相続したい財産がないのであれば、念のため相続放棄をしておきましょう。
相続放棄をすれば、一切の相続権を失うことになるので、不要な財産を相続しなくて済みます。
ただし、一度相続放棄をすると、撤回することはできません。後からプラスの遺産が見つかったとしても、相続できなくなりますので注意が必要です。
なお、相続放棄は原則として【相続を知った日から3ヶ月】以内に手続きをしなければいけません。
相続放棄をする場合には、なるべく早期に手続きをするようにしましょう。
4章 財産調査はグリーン司法書士法人にお任せください!
財産調査をするためには、様々な機関に問い合わせる必要があり、手間と時間がかかります。
「相続財産がない」と思っている場合、財産の在り処が明確に分かっていないことがほとんどかと思います。
その場合、取引のある機関を突き止めるだけでも大変です。
グリーン司法書士法人にご依頼いただければ、すみずみまで財産の調査をいたします。
初回のご相談は可能です。ご状況をお伺いして
- 財産調査をするべきか
- 相続放棄をするべきか
など、アドバイスをさせていただくことも可能ですので、お気軽にご相談ください。
なお、オンラインでのご相談も受け付けております。遠方の方でのご相談いただけますので、ぜひご利用ください。
よくあるご質問
亡くなった親の家の名義を変更しないとどうなる?
相続した家に親名義のまま住み続けることは法律上問題ありませんが、トラブルが生じることがあるので、なるべく早く名義変更手続きをすることをおすすめします。
考えられるトラブルは、下記の通りです。
・名義変更しないと新しい相続が発生した際にトラブルになる
・名義変更しないと売却したり、不動産担保ローンを組んだりできない
・親名義のままでも相続税や固定資産税はかかる
▶家の名義変更をしないトラブルについて詳しくはコチラ銀行口座を口座名義人死亡後そのままにするとどうなる?
口座名義人の死亡後も銀行口座をそのままにしておくと、凍結され預貯金の入出金や口座引き落としなど一切の取引ができなくなってしまいます。
▶銀行口座の口座凍結について詳しくはコチラ