祭祀財産とは?相続上の取り扱いと承継方法。相続税の節税対策になる?

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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 3

「祭祀財産」とは、祖先を祀るための財産で、お墓や仏壇などが含まれます。

相続において祭祀財産は特殊であり、相続の対象にはなりませんし、相続しても相続税はかかりません。

祭祀財産には特別なルールがありますので、取り扱いについて理解しておく必要があるでしょう。

ここでは祭祀財産について解説しています。ぜひ参考にしてください。


1章 祭祀財産とは

祭祀財産とは、祖先や神様を祀るために必要なものを指します。お墓や仏壇などを想像するとわかりやすいでしょう。

法律上「系譜」「祭具」「墳墓」が祭祀財産以下のように定められています。

祭祀財産概要具体例
系譜先祖代々の血縁関係が記されたもの血縁関係が記された表、家系図、掛け軸、絵図など
祭具祖先の祭祀や礼拝に用いる器具仏壇、仏像、位牌、十字架、霊位、神棚など
墳墓故人を葬る設備埋棺、墓碑、霊屋、墓地、墓石など
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2章 相続上の祭祀財産の4つの特徴

相続上、祭祀財産は他の財産と取り扱いが異なります。

祭祀財産を遺す場合や、故人の財産に祭祀財産がある場合には注意しましょう。

2−1 相続財産に含まれない

祭祀財産は相続財産に含まれません。

そのため、遺産分割によって相続人同士で分け合うようなことはなく、祭祀財産を引き継ぐのは原則として1人です。

2−2 相続放棄をしても祭祀財産は残る

祭祀財産は相続財産ではないので、相続放棄をしても祭祀財産は残ります。「祭祀財産を引き継ぎたくないから」と相続放棄をしても無駄ということです。

一方、遺産に借金があって相続放棄したいという場合も、祭祀財産は残すことができ、故人を安心して葬ることができます。

2−3 相続税がかからない

祭祀財産は相続財産ではないため、相続税の課税対象にもなりません。代々受け継がれてきた祭祀財産がどれだけ高価であっても相続税がかかりませんので、安心して引き継ぐことが可能です。

2−4 祭祀財産を引き継ぐのは原則1人

祭祀財産は他の相続財産のように相続人で分割するようなことはせず、法律上、祭祀主宰者(お墓や遺骨を管理する人)1人が引き継ぐのが原則です。「お墓は長男」「仏壇は長女」といった承継方法は認められていません。

実際、故人の四十九日や三回忌などの法要で祭祀財産を持ち寄るのは手間になりますので、1人が管理したほうが良いでしょう。

なお、「1人が引き継ぐ」というのは定められていても、「誰が引き継ぐ」という点については定めはありません。法的に「長男だから引き継がなければいけない」ということはないので、現在の管理者が指名したり、親族同士で引き継ぐ人を決めたりすることができます。


3章 祭祀財産を引き継ぐ人の決定方法

ここでは祭祀財産を引き継ぐ人の決定方法について解説します。決定方法は法律で決められているわけではありません。

主な決定方法は以下のとおりです。

  • 故人が指名する
  • 慣習に則って決定する
  • 裁判所の判断に委ねる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

3−1 故人が指名する

祭祀財産の引き継ぎ先は故人によって指名することができます。指名方法は特に定められておらず、遺言書に記しておいたり、生前に口頭で約束したりすれば問題ありません。

なお、故人から指名された場合辞退することはできません。

3−2 慣習に則って決定する

故人から指名がない場合には、親族間で引き継ぎ先を決定することとなります。

引き継ぎ先の決め方は一族や地域の慣習があることも多いため、それに則って決定するのが一般的です。

もし、慣習がない場合には親族間で話し合って決定しても構いません。

3−3 家庭裁判所の判断に委ねる

故人からの指名もなく、慣習もない、親族間での話し合いもまとまらないというようなケースも稀にあるでしょう。

その場合には、家庭裁判所に調停を申し立て、裁判所の判断に任せることとなります。

家庭裁判所は、以下のことを鑑みて、祭祀主催者に適していると判断した人に承継させます。

  • 故人との続柄、身分関係、生活関係
  • 故人との付き合い
  • 故人の意志
  • 承継人候補者の意志や能力
  • 承継人候補者と祭祀財産との地理的な距離
  • 祭祀財産の取得目的

など


4章 祭祀財産の承継手続き

仏壇や位牌といったものは、祭祀財産を引き継ぐ人が受け取れば問題ないため特に手続きは必要ありません。

一方、公営霊園や民営霊園、寺院にあるお墓については承継手続きをする必要があります。

必要書類をお墓のある霊園に持参して手続きをしましょう。なお、必要書類は霊園や寺院によって異なるので、実際の必要書類については問い合わせてください。

お墓を相続する方法とは?メリット・デメリットから手続きの流れまで
  • 墓地使用許可証
  • 承継する人の戸籍謄本や住民票
  • 承継する人の実印と印鑑証明書
  • 故人の死亡が記載されている戸籍謄本
  • 親族の同意書

5章 祭祀財産を引き継ぎたくない時

生前祭祀主宰者に指名されていた場合や、裁判所によって任命場合には原則として拒否することはできません。また、相続放棄をしても祭祀財産の承継を免れることもできません。

とはいえ、祭祀財産の管理は手間がかかりますし、お墓には管理費用もかかりますのでどうしても引き継ぎたくないという方もいらっしゃるでしょう。

その場合には、一度祭祀財産を引き継いだ後、祭祀財産を処分することとなります。処分したり手放したりすることについて、法律による取り決めはありません。

ただし、祭祀財産は承継した人だけではなく、一族に関わる問題です。「自分が管理したくないから」と安易に処分することはおすすめできません。


 6章 祭祀財産は相続税対策になる?

「祭祀財産で相続税対策をしよう」という話はよく耳にします。

実際、祭祀財産には相続税がかかりませんので、相続税対策となるケースはあります。

例えば、自身のお墓や仏壇がまだ無い場合、購入資金として現金で財産を残すのではなく、祭祀財産として残せばその分相続税を抑えることが可能です。

ただし「祭祀財産には相続税がかからないから」と、本来の目的のためではなく、売却することを目的として高額な仏具などを購入した場合には相続税の対象となるので注意が必要です。

「祭祀財産で節税する」のではなく、「生前に仏具を購入しておけば、余計な相続税を掛けずに済む」という表現のが正しいでしょう。

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7章 まとめ

祭祀財産は、通常の相続財産とは取り扱いが異なるため注意しましょう。

通常の相続財産に含まれず、相続税の対象にもなりません。

そのため、相続放棄をしても引き継ぐことができます。裏を返せば、相続放棄をしても手放すことができないということです。

祭祀財産を引き継ぐのは原則1人であり、引き継ぐ人は生前に指名することが可能で、指名がない場合には慣習に則って決定するのが一般的です。

相続税の節税になるという見方もできますが、節税だけを目的に祭祀財産を残しても相続税は課税されてしまいます。「無駄な相続税をかけないために祭祀財産を生前に購入しておく」程度に考えるのが良いでしょう。

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