家族や親族が亡くなると、様々な相続手続きを行わなければなりません。
相続手続きの中には期限が設定されているものもあるため、相続開始はいつにあたるのか疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
相続開始日とは、原則として故人が死亡した日を指します。
ただし、故人が長年にわたり行方不明となっており失踪宣告を受けたケースなど、死亡日以外が相続開始日となる場合もあります。
なお、相続手続きの期限の起算点の多くは「自分が相続人であることを知った日」であるため、時間が経ってから故人の死亡知ったケースであれば、その知った日から期限がスタートすることになります。
本記事では、相続開始日とはいつなのか、相続手続きの期限について詳しく解説していきます。
家族や親族が死亡したときの手続きの流れは、下記の記事で紹介しているので、合わせてお読みください。
目次
1章 相続開始日とは?
相続開始日とは、一般的には「故人が死亡した日」を指します。
法律では「相続は死亡によって開始する」と決められているからです。
しかし、中には故人が死亡したか生存しているのか不明だが、死亡しているものとして扱うことがあります。
その場合は、死亡日が相続開始とならないので注意しなければなりません。
相続開始日の取り扱いは、下記の3つに分類できます。
- 自然死亡の場合
- 認定死亡の場合
- 擬制死亡(失踪宣告を受けた)の場合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1 自然死亡の場合
自然死亡の場合は、死亡日がそのまま相続開始日となります。
自然死亡とは、病気や怪我、老衰などで亡くなることです。
人が亡くなると、医師が死亡診断書を作成し、死亡日時を記載し、この日時が相続開始日となります。
1-2 認定死亡の場合
認定死亡の場合は、警察などの官公署が死亡認定を行った日を相続開始日とします。
認定死亡とは、災害などが発生し本人が死亡した可能性が高いものの遺体が見つからない、遺体の損傷が激しく本人と判別できない状態などに行われる手続きです。
認定死亡となった後に、本人が生きていることがわかった場合には認定死亡を取消可能です。
1-3 擬制死亡(失踪宣告を受けた)の場合
擬制死亡の場合は、失踪宣告が認められ、死亡とされた日が相続開始日となります。
擬制死亡とは、行方不明の状態が続き失踪宣告を受けた状態です。
失踪宣告には、下記の2種類があります。
- 普通失踪:生死不明のまま7年以上経過したとき
- 特別失踪:災害や海難事故、戦争などが起き危難が去った後も1年以上生死が不明のとき
失踪宣告の種類によって、死亡日の取り扱いは下記のように決められています。
- 普通失踪:家庭裁判所にて失踪審判が確定された後、7年間の期間が満了したとき
- 特別失踪:危難が去ったとき
なお、失踪宣告により死亡とされた場合でも、本人が生きていれば後から死亡を取り消せます。
ただし、失踪宣告は家庭裁判所にて手続きをしているため、取り消す際には家庭裁判所に失踪宣告取消しの審判を申立てをしなければなりません。
脳死の際の相続開始日は取り扱いが難しいため、特に注意しなければなりません。
法律では、脳死を死亡として認めていないので、脳死になったとき=相続開始日とはならないことを理解しておきましょう。
しかし、脳死判定を受け臓器移植をする場合、脳死を死亡と認め相続開始日とする考えも存在しています。
脳死の際の相続開始日については、判断が難しいため、家族や親族で判断がつかない場合は専門家に相談することをおすすめします。
2章 相続手続きには期限が設定されているものもある
家族や親族が亡くなったときには様々な手続きが必要ですが、相続手続きの中には期限が設定されているものもあります。
相続手続きの主な期限は、下記の通りです。
手続き | 期限 |
相続放棄や限定承認 | 3ヶ月以内 |
準確定申告 | 4ヶ月以内 |
相続税申告 | 10か月以内 |
遺留分侵害額請求 | 1年以内 |
相続登記 | 3年以内 |
相続税の還付請求 | 5年10ヶ月以内 |
ただし、上記の期限の起算点は、相続開始日ではなく「相続開始を知った日=自分が相続人であると知った日」です。
したがって、故人との関係が薄い場合や相続順位が低い場合、相続開始日と相続手続きの期限の起算点にずれが生じる場合があります。
相続開始の場所は、故人の最後の住所地です。
したがって、相続税申告や相続放棄の申立てをする際には、故人の最後の住所地を管轄する税務署や家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
3章 相続手続きの期限の起算点は「自分が相続人であると知った日」
先ほどの章で解説したように、相続手続きの期限の起算点は「自分が相続人であると知った日」です。
故人の配偶者や子供など近しい家族や親族が相続人になった場合、相続開始日と自分が相続人であると知った日が一致することが多いです。
一方で、相続人と故人が疎遠だったケースなどでは、相続開始日と自分が相続人であると知った日がずれることもあります。
次の章では「相続開始日」と「自分が相続人であると知った日」にずれが生じるケースを詳しく解説していきます。
4章 「相続開始日」と「自分が相続人であると知った日」にずれが生じるケース
相続開始日は原則として故人の死亡日であるのに対し、自分が相続人であると知った日は相続の状況や故人と相続人の状況によって変わることがあります。
相続開始日と自分が相続人であると知った日にずれが生じるケースは、主に下記の通りです。
- 故人の死亡を知るのが遅れたケース
- 相続人廃除が取り消されたケース
- 死後認知された相続人がいるケース
- 胎児・幼児が相続人になったケース
- 先順位の相続人全員が相続放棄したケース
それぞれ詳しく見ていきましょう。
4-1 故人の死亡を知るのが遅れたケース
故人と長年疎遠であり、故人の死亡を知るのが遅れた場合は、相続開始日と自分が相続人であると知った日にずれが生じる場合があります。
例えば、母親と離婚した後、父親と疎遠でずっと会っていなかったケースなどでは、父親の死亡を知ることは難しいでしょう。
父親の再婚者や再婚後に生まれた子に連絡を受け、自分が相続人になったことを知るケースも十分考えられます。
このようなケースでは、後妻や後妻の子から連絡を受け相続を知ったときが、相続手続きの期限の起算点となります。
4-2 相続人廃除が取り消されたケース
相続人廃除が取り消され相続人の地位を回復したケースでも、相続開始と自分が相続人であると知った日にずれが生じます。
相続人廃除とは、過去に被相続人の財産を不当に処分した、虐待した人などが相続人の地位をはく奪されることです。
相続人廃除は一度認められた後も被相続人の意思により取り消すことが認められています。
相続人廃除されていた人が廃除を取り消されて相続人の地位を回復した場合は「廃除取り消しの審判確定を知った日」が相続手続きの期限の起算点となります。
4-3 死後認知された相続人がいるケース
故人の隠し子などが死後認知された場合は、死後認知の裁判確定を知った日が相続手続きの期限の起算点となります。
なお、死後認知された人物は他の子供と同様に相続人になり、相続割合も他の子供と変わりません。
4-4 胎児・幼児が相続人になったケース
故人の配偶者が相続発生時に妊娠中であり、胎児が生まれた場合は「法定代理人(親など)が胎児が生まれたことを知った日」が相続手続きの期限の起算点となります。
なお、相続発生時に生まれていなかった胎児も出生後は相続権を持ち、他の子供と同様に遺産を相続可能です。
他にも、幼児が相続人となったときには「法定代理人(親など)が故人の死亡を知ったとき」が相続手続きの期限の起算点となります。
例えば、元夫が死亡したことを知った日などが該当します。
4-5 先順位の相続人全員が相続放棄したケース
自分より優先順位の高い相続人全員が相続放棄したケースも、相続開始日と自分が相続人であることを知った日にずれが生じます。
同順位の相続人全員が相続放棄すると、次の優先順位の相続人が相続権を持つため、故人の子供全員が相続放棄した場合は、故人の両親や兄弟姉妹へと相続権が移っていきます。
自分より優先順位が高い相続人全員が相続放棄するときは、故人が多額の借金を遺していたケースも多いです。
そのため、自分に相続権が移ったときには、前の相続人に「なぜ相続放棄をしたのか」を確認しておくと良いでしょう。
確認の結果、故人が借金を遺していたことなどがわかった場合は、期限内に相続放棄の申立てを行うことも検討しましょう。
相続放棄の申立て期限は「自分が相続人であると知ってから3ヶ月以内」です。
相続放棄の期限は短く、故人の遺産に関する調査や相続放棄に必要な書類を準備している間に期限が迫ってしまうこともあるでしょう。
相続放棄の申立て期限に間に合わない場合は期限の伸長申立てを行いましょう。
申立てが認められれば、相続放棄の期限を1~3ヶ月ほど延長できます。
また、何らかの理由ですでに相続放棄の申立て期限を過ぎてしまったときには、まずは相続放棄に精通した司法書士や弁護士に相談してみましょう。
相続放棄に詳しい専門家であれば、期限を過ぎた後の相続放棄申立てにも対応できる可能性があります。
まとめ
相続開始日は、多くの場合、故人が死亡した日を指します。
しかし、故人の死亡が認められた状況によっては、一部取り扱いが異なることも理解しておきましょう。
また、相続手続きの中には期限が設定されているものもありますが、相続手続きの起算点の多くは「自分が相続人であることを知った日」です。
したがって、相続の状況や故人との関係性によっては、相続開始日と相続手続きの期限の起算点にずれが生じる場合もあります。
何らかの理由で、故人が死亡したことや自分が相続人になったことを後から知った場合は、落ち着いて相続手続きを進めていきましょう。
相続手続きの期限が迫っている場合やすでに過ぎている場合、対処に迷う場合は、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談することもご検討ください。
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