70歳から90歳までの介護費用は、要介護度、介護期間、また在宅介護か施設介護かによって大きく異なります。認知症になり資産が凍結されることを防ぐために、元気なうちに認知症対策をしておくことも大切です。
70歳から90歳までの介護費用は、介護が必要になる期間や要介護度、在宅介護か施設介護かによって大きく変わります。
介護費用と言われると、介護サービス費のみを考えてしまいがちですが、実際には生活費や医療費、交通費、住宅改修費、介護用品費なども含めて考えることが大切です。
また、認知症などによる資産凍結を防ぐために、元気なうちに認知症対策をしておきましょう。
本記事では、70歳から90歳までの介護費用の目安や内訳、負担を減らす方法について解説します。
目次
1章 70歳から90歳までの介護費用はいくら?
70歳から90歳までの介護費用は、介護が必要になる時期や期間、介護を受ける場所、要介護度によって大きく変わります。
そのため「70歳から90歳までで必ずいくらかかる」と一律に答えることはできません。
2024年に行われた生命保険文化センターの調査によると、介護にかかった一時的な費用は平均47.2万円、月々の費用は平均9.0万円とされています。
また、同調査では介護期間の平均は55.0か月と発表されており、単純計算すると、平均的な介護費用の総額は「47.2万円+9.0万円×55か月=約542万円」となります。
一方で、70歳から90歳までの20年間ずっと介護費用が発生するケースを想定すると、月9万円でも「9万円×12か月×20年=2,160万円」となり、初期費用を含めると2,200万円を超える可能性があります。
ただし、実際には70歳からすぐに介護が始まるとは限らず、介護が必要ない期間、軽度の支援で済む期間、施設入居が必要になる期間などに分かれるのが一般的です。
1-1 施設介護か在宅介護かで費用は大きく変わってくる
介護費用を考える際に、まず確認すべきなのが「在宅介護」か「施設介護」かです。
在宅介護の場合、自宅で生活しながら訪問介護やデイサービス、福祉用具のレンタル、住宅改修などを利用します。
生命保険文化センターの調査では、在宅介護の月額費用は平均5.3万円とされています。 これに対し、施設介護の月額費用は平均13.8万円とされており、在宅介護よりも負担が大きくなりやすい傾向があるといえるでしょう。
1-2 介護費用は「初期費用」と「月額費用」の合計額で計算される
介護費用を把握するときは、「初期費用」と「月額費用」を分けて考えることが大切です。
初期費用には、以下のようなものが挙げられます。
- 介護用ベッドの購入
- 手すりの設置
- 段差解消
- 車いす
- ポータブルトイレ
- 施設入居時の一時金
一方、月額費用は、以下のようなものが含まれます。
- 訪問介護やデイサービスの利用料
- 施設利用料
- 食費
- 居住費
- おむつ代
- 医療費
- 交通費
「介護費用はいくらかかるのか」を考える際には、月々の支払いだけでなく、介護が始まるときにまとまって必要になるお金も含めて試算しなければなりません。
1-3 要支援・要介護度で自己負担額が決まってくる
在宅介護で介護保険サービスを利用する場合、要支援・要介護度によって1か月に利用できる介護保険サービスの上限額が決まります。
要介護度が高くなるほど利用できるサービス量は増えますが、その分、自己負担額も増えやすくなります。
介護保険サービスの自己負担割合は、所得に応じて原則1割、一定以上所得がある人は2割または3割です。
また、支給限度額を超えてサービスを利用した場合、超えた部分は全額自己負担となります。
2章 介護費用を負担するのは誰?
介護費用は、介護を受ける本人の財産や年金収入から支払うのが基本です。
親の介護であっても、子供が全額負担しなければならないわけではありません。
まずは、本人の預貯金、年金、不動産収入、保険金などからいくら支払えるかを確認しましょう。
ただし、本人が認知症などにより判断能力を失うと、預貯金の引き出しや不動産の売却、賃貸借契約の締結などが難しくなる恐れがあります。
このような事態を防ぐには、本人の判断能力が十分なうちに、家族信託や任意後見制度などで認知症対策をしておくことが大切です。
3章 介護費用の内訳
介護費用というと、介護サービスの利用料だけをイメージしがちですが、実際には生活費や医療費、交通費、住宅改修費なども含めて考えなければなりません。
介護が始まると、これまで発生していなかった支出が増えることも多いため、高齢になった親の生活を想像しながら介護費用のシミュレーションをすることが大切です。
3-1 介護サービス費
介護サービス費とは、訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイ、施設入所などにかかる費用です。
介護保険サービスを利用する場合、自己負担割合は原則1割ですが、所得に応じて2割または3割になることがあります。
在宅介護では、要支援・要介護度ごとに1か月あたりの支給限度額が決まっており、限度額を上回ると全額自己負担となるのでご注意ください。
3-2 高齢者の生活費
介護が必要になっても、本人の生活費は引き続き発生します。
そのため、以下のような費用は介護保険サービス費とは別に考える必要があります。
- 食費
- 水道光熱費
- 通信費
- 衣類
- 日用品
- おむつ代
- 理美容代
特に、嚥下機能が低下した場合には、やわらかい食事や介護食、とろみ剤などが必要になることがあります。
通常の食費より負担が増えるケースもあるため、日々の生活費の中に「介護に伴って増える費用」が含まれる点を意識しておきましょう。
3-3 医療費や交通費
高齢になると、介護だけでなく医療の支出も増えやすくなります。
通院費や薬代だけでなく、入院費、訪問診療や訪問看護の費用などが発生することもあるでしょう。
介護施設に入所している場合でも、医療機関での受診が必要になれば、診療費や交通費がかかります。
また、家族が通院に付き添う場合には、家族の交通費や仕事を休むことによる収入減も無視できません。
介護費用を試算するときは、本人が直接支払う費用だけでなく、家族側に発生する負担も含めて考えておくと良いでしょう。
3-4 住宅のリフォーム費用・介護用品費用
在宅介護を続ける場合、以下のような住宅改修が必要になることがあります。
- 手すりの設置
- 段差の解消
- 床材の変更
- 引き戸への交換
- 洋式便器への取替え
介護保険では、一定の福祉用具や住宅改修が給付対象とされており、住宅改修については支給限度基準額が原則20万円とされています。ただし、介護保険の自己負担割合に応じて1〜3割は自己負担となるため、20万円全額が支給されるわけではありません。
他には、介護用ベッド、車いす、歩行器、ポータブルトイレ、入浴補助用具などの介護用品が必要になることもあります。
福祉用具貸与や特定福祉用具販売の対象になるものもありますが、すべての用品が介護保険でまかなえるわけではありません。
4章 介護費用の負担を減らすためにできること
介護費用の負担が重いと感じたときは、家族だけで抱え込まず、公的制度や専門家の支援を活用することが大切です。
介護費用の支払いは長期化しやすいため、一時的に子供が立て替えるだけでは根本的な解決にならないこともあるからです。
本人の収入や資産、利用している介護サービス、今後の生活場所を整理したうえで、無理のない支払い方法を検討しましょう。
4-1 生活相談員・ケアマネジャーに相談する
介護費用を見直したいときは、まず施設の生活相談員や担当のケアマネジャーに相談しましょう。
現在利用しているサービスの内容を確認し、必要性の低いサービスを減らしたり、別のサービスに切り替えたりすることも検討しましょう。
4-2 公的減免制度を利用する
介護費用の負担を軽くする制度として、高額介護サービス費や特定入所者介護サービス費などがあります。
高額介護サービス費とは、1か月に支払った介護サービスの自己負担額が一定の上限を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度であり、負担上限額は所得や世帯状況によって異なります。
特定入所者介護サービス費とは、所得や預貯金などの要件を満たす人について、介護保険施設などの食費・居住費の負担を軽減する制度です。
施設入所を検討している場合は、対象になるか自治体や施設に確認しましょう。
4-3 生活保護を申請する
本人の年金や預貯金だけでは介護費用や生活費をまかなえない場合、生活保護の申請を検討することも選択肢のひとつです。
生活保護は、資産や収入、親族からの援助の可否などを踏まえて受給可否が判断されます。
4-4 公的融資・介護ローンを利用する
介護用ベッドの購入や住宅改修、施設入居時の一時金など、まとまった資金が一時的に必要な場合には、公的融資や介護ローンを利用することも検討しましょう。
例えば、生活福祉資金貸付制度では、低所得世帯などを対象に、医療費または介護費の支払いなどにより緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合の貸付が用意されています。
ただし、融資はあくまで借入れであり、返済が必要です。
月々の介護費用の不足を借入れで補い続けると、将来的に返済が困難になる恐れがあります。
利用する場合は、一時費用の捻出に限るなど、目的と返済計画を明確にすることが大切です。
4-5 不動産を活用・売却する
本人が自宅を離れて施設に入所する場合、自宅を売却したり賃貸に出したりして介護費用に充てる方法があります。
特に、今後自宅に戻る見込みが低い場合には、不動産を維持するための固定資産税や管理費も負担になるため、活用・売却を検討しても良いでしょう。
ただし、不動産の売却や賃貸借契約には本人の判断能力が必要です。
認知症などにより判断能力が低下していると、本人名義の不動産を家族が勝手に売却することはできません。
その場合は、成年後見制度を利用して、不動産の売却をする必要があります。
成年後見制度の利用にはデメリットもあるため、元気なうちに家族信託や任意後見制度などで、家族が不動産を管理できる仕組みを整えておくと良いでしょう。
4-6 費用が安い施設に入所する
施設介護を選ぶ場合、入所する施設の種類によって費用は大きく変わります。
一般的に、民間の有料老人ホームは入居一時金や月額費用が高額になりやすい一方、特別養護老人ホームなどの公的性格が強い施設は費用を抑えやすい傾向があります。
ただし、費用が安い施設は入所待ちが発生しやすく、すぐに入れるとは限りません。
また、本人の要介護度や医療的ケアの必要性によって、入所できる施設も異なります。
5章 元気なうちにしておきたい認知症対策
介護費用を本人の預貯金や不動産から支払うためには、本人が自分で財産管理や契約手続きをできる状態であることが前提になります。
認知症などにより判断能力が低下すると、銀行口座からまとまったお金を引き出せなかったり、不動産を売却できなかったりする恐れがあります。
介護費用を親の財産から支払いたい場合は、判断能力があるうちに、財産管理や将来の意思決定について準備しておくことが重要です。
5-1 家族信託の利用
家族信託とは、本人が信頼できる家族に財産の管理や運用、処分を任せる制度です。
例えば、親が委託者兼受益者となり、子供を受託者にしておけば、親のために預貯金や不動産を管理し、介護費用や生活費の支払いに充てられます。
家族信託を利用しておけば、将来、親が認知症になった場合でも、信託契約で定めた範囲内で子供が財産を管理できます。
施設入所により自宅が不要になった場合には、信託契約の内容によっては、自宅を売却して介護費用に充てることも可能です。
5-2 任意後見制度の利用
任意後見制度とは、本人が元気なうちに、将来判断能力が低下したときに支援してくれる人をあらかじめ決めておく制度です。
本人と任意後見人になる予定の人が公正証書で契約を結び、将来、判断能力が低下したときに家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで効力が生じます。
任意後見制度を利用すれば、本人が認知症になった後でも、任意後見人が契約内容に基づいて財産管理や各種手続きを行えます。
例えば、介護サービスの契約、施設入所契約、医療費や介護費用の支払い、預貯金の管理などを任せられます。
5-3 生前贈与
生前贈与とは、本人が元気なうちに財産を家族へ渡しておく方法です。
将来の資産凍結リスクを避けるために、あらかじめ一部の資金を子供へ移しておいても良いでしょう。
ただし、親の介護費用として使う目的であっても、贈与された金額によっては贈与税がかかる点に注意しなければなりません。
また、生前贈与の金額によっては、他の家族や親族が不公平感を持つ恐れもあります。
まとめ
70歳から90歳までの介護費用は、在宅介護か施設介護か、要介護度、介護期間によって大きく異なります。
介護費用は原則として本人の財産から支払いますが、認知症により資産凍結が起きると、預貯金の引き出しや不動産売却が難しくなることがあります。
将来の介護費用に備えるには、家族信託や任意後見制度、生前贈与などを、本人が元気なうちに検討しておくことが大切です。
グリーン司法書士法人では、家族信託などの認知症対策についての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
親が介護施設に入所する場合、費用はいくらくらいかかりますか?
親が介護施設に入所する場合の費用は、施設の種類や要介護度、本人の所得、部屋のタイプ、医療的ケアの有無などによって大きく変わります。
一般的には、特別養護老人ホームなどの公的施設は費用を抑えやすく、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの民間施設は費用が高くなりやすい傾向があります。
親の介護費用を捻出できない場合、どうすれば良いですか?
親の介護費用を捻出できない場合でも、すぐに子供が全額負担しなければならないわけではありません。
まずは、親本人の年金収入、預貯金、不動産、保険などを確認し、本人の財産から支払えるかを検討しましょう。
介護費用は、基本的には介護を受ける本人の財産から支払うものです。
本人の収入や資産だけでは足りない場合は、担当のケアマネジャーや施設の生活相談員、自治体の福祉窓口に相談しましょう。














