
- 独身女性の老後資金はいくら必要なのか
- 独身女性に必要な老後資金を計算する流れ
- 独身女性は老後資金をいつから貯めるべきなのか
老後の暮らしに不安を抱える「おひとりさま女性」は少なくありません。
配偶者や子供がいないからこそ、経済的にも生活面でも自立した老後を見据えた準備が必要です。
必要な老後資金を見積もる際には、老後の収入と支出を予測し、不足額を計算することが大切です。
本記事では、独身女性が安心して老後を迎えるために、老後資金はいくら必要なのか、どうやって貯めればいいのかを解説していきます。
目次
1章 おひとりさま女性の老後資金はいくら必要?
独身女性は老後資金を用意する際に配偶者の退職金や年金に頼ることはできません。
自分の老後は自分で備える必要があるため、いくら老後資金を用意すれば良いのか不安になる方もいるのではないでしょうか。
総務省「家計調査報告(家計収支編)2024年」では、65歳以上の単身世帯の毎月の消費支出は、平均約14万9,000円とされています。
これは食費や住居費、水道光熱費、保健医療費、交際費などを含めた金額です。
さらに、税金や社会保険料などの非消費支出も含めると、毎月の生活費は平均16万円程度になると考えられます。
これに対して、老後の収入の中心となるのが年金です。
厚生年金と国民年金を組み合わせたモデルで試算すると、年金受給額の平均は月13万円程度となり、毎月2万〜3万円程度の赤字になる可能性があるのです。
実際に、家計調査報告(家計収支編)2024年によると、65歳以上の単身無職世帯の生活費の不足分は1ヶ月あたり27,817円とされています。
仮に、65歳で定年退職し、90歳まで生きると想定した場合には「27,817円×12ヶ月×25年=834万5,100円」を貯金などで用意しておく必要があります。
ただし、これはあくまでも平均的な生活を想定している金額であり、住まいのリフォームや趣味、旅行などをするのであれば、その分の費用も用意しておかなければなりません。
これらの費用も加味すれば、老後資金として用意すべき金額は、2,000万円〜3,000万円程度を目安にしたいところです。
もちろん、すべてを預貯金で用意する必要はなく、退職金やiDeCo、新NISAなどの資産運用など複数の手段を組み合わせて資金を確保するのが現実的です。
2章 おひとりさま女性に必要な老後資金を計算する流れ
女性の独身が自分に必要な老後資金を計算する際には、老後の生活費や収入をシミュレーションすることが大切です。
具体的には、以下のような流れで計算することをおすすめします。
- 老後の生活費を計算する
- 老後に減る支出や増える支出を計算する
- 老後に受け取れる年金額を調べる
- 平均余命から不足する老後資金を計算する
それぞれ詳しく解説していきます。
STEP① 老後の生活費を計算する
まずは、老後にどれだけの生活費が必要になるかを見積もりましょう。
総務省の「家計調査報告(家計収支編)」などの統計情報を参考にしたり、自分の今の生活費をもとに計算するのがおすすめです。
STEP② 老後に減る支出や増える支出を計算する
続いて、老後に減る支出や増える支出を見積もりましょう。
老後には、現役時代とは支出の内訳が変わってくることも多く、以下のような変化が予想されます。
- 仕事に関する支出(被服費など)
- 交際費
- 税金や社会保険料
- 医療費、通院費(加齢により増加傾向)
- 介護サービス利用料
- 住まいのメンテナンス費用(バリアフリー化など)
このような増減を反映させて、老後の支出予想をしていきましょう。
特に、医療・介護費用は予想以上にかかることが多いため、余裕を持って見積もることが大切です。
STEP③ 老後に受け取れる年金額を調べる
支出の見積もりが完了したら、収入に関する予測を立てましょう。
老後の収入としてまず想定すべきは年金であり、将来自分が受け取れる年金額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」により確認可能です。
例えば、長年正社員として働いて厚生年金に加入していた方は月13万〜15万円程度を受給できるケースが一般的です。
一方、パート勤務中心だった場合や国民年金のみに加入していた場合には、月5万〜6万円程度に留まることもあります。
STEP④ 平均余命から不足する老後資金を計算する
最後に、支出と収入の差を埋めるために必要な貯蓄額を算出します。
例えば、毎月の支出が17万円、年金が月13万円と仮定すると、毎月の不足額は4万円と計算できます。
年間の不足額は48万円であり、20年間生きると仮定すれば、「48万円×20年=960万円」が必要です。
厚生労働省のデータによると、65歳女性の平均余命は約24年(約89歳)です。
長生きリスクも考慮して、少なくとも90歳前後まで生きる前提で計算しておくと良いでしょう。
なお、住宅の修繕費や介護費用など突発的な支出もあるため、さらに予備費として500万〜1,000万円程度を上乗せしておくことをおすすめします。
3章 おひとりさま女性は老後資金をいつから貯めるべき?
独身女性にとって、老後資金の準備は「なるべく早く始めること」が鉄則です。
時間という武器を最大限に活用し、できるだけ若いうちから計画的に積み立てを始めることをおすすめします。
特に、女性の場合、平均寿命が男性よりも長いため、必要な老後資金の金額も多くなる傾向があります。
加えて、正社員として勤務している独身女性であっても、定年まで今の職場に勤められるとは限らないと理解しておくべきです。
更年期以降、心身の不調により勤務形態を変えざるを得なくなる女性も多く、フルタイムからパートへ切り替えるケースや、早期退職を選ばざるを得ない状況も想定されるでしょう。
そのため、退職直前に老後資金を貯め始めると考えたり、退職金を老後資金に充てれば何とかなるだろうと考えたりすることは危険です。
独身女性に限らずですが、老後資金は若いうちから少しずつ貯めていくのが良いでしょう。
理想的なのは、20代後半〜30代のうちに月数千円でも積み立てをスタートすることです。例えば、新NISAやiDeCoを利用すれば、少額からでも長期・積立・分散投資によって効率的に資産形成を行うことが可能です。
4章 おひとりさま女性が老後資金を貯める4つの方法
独身女性が老後資金を貯める方法は、主に以下の通りです。
- 貯金をする
- 資産運用をする
- 貯蓄型保険の活用
- 老後も収入を得る
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 貯金をする
最も基本的で確実性が高い方法のひとつが貯金です。
利率が低いとはいえ、元本割れのリスクがなく、必要なときにすぐに引き出せるという安心感があります。
老後に備えるための貯金は、生活防衛資金として生活費の6〜12か月分を預貯金で確保することから始めましょう。
4-2 資産運用をする
低金利の時代、貯金だけでは資金がなかなか増えません。
そこで検討したいのが、新NISAやiDeCoなどを活用した資産運用です。
「投資は怖い」と感じる方もいるかもしれませんが、長期・分散・積立の基本を守れば、リスクを抑えながら着実に資産を増やすこともできるでしょう。
4-3 貯蓄型保険の活用
将来への備えとして、貯蓄型の生命保険や年金保険を利用する方法もあります。
例えば、終身保険であれば死亡保障を確保しながら、解約返戻金を老後の資金にあてることも可能です。
また、個人年金保険は、将来の受け取り額や受取時期を設計できる点で、老後の収入源として活用できます。
4-4 老後も収入を得る
老後資金を「貯める」だけでなく、「稼ぐ」という視点も重要です。
近年は、定年後も働き続ける人が増えており、自分のペースで収入を得られる働き方(再雇用やパート、フリーランスなど)を選ぶ方も少なくありません。
おひとりさま女性にとっても、働けるうちは働くことは経済的にも精神的にも大きな安心材料になるはずです。
5章 おひとりさま女性は老後資金以外の対策もしておこう
独身女性は、老後資金を貯めるだけでなく、以下のような終活・相続対策もしておくとより安心して老後を過ごせます。
- 身元保証サービスの利用
- 死後事務委任契約の利用
- 任意後見制度の利用
- 遺言書の作成
それぞれ詳しく解説していきます。
5-1 身元保証サービスの利用
高齢者施設や病院に入る際、多くの場合「身元保証人」の提示が求められます。
しかし、配偶者や子供がおらず、頼れる親族が少ない独身女性にとって、身元保証人を用意することが難しい場合もあるでしょう。
そのようなケースでは、身元保証サービスの利用をおすすめします。
身元保証サービスを利用すれば、入院や施設入居の手続き支援、急病時の連絡対応などを一定の範囲でサポートしてもらえます。
費用はかかるものの、家族がいない方や親族に負担をかけたくない方にとって、心強い選択肢となるでしょう。
5-2 死後事務委任契約の利用
自分が亡くなった後、葬儀・火葬・役所への届出・遺品整理・家賃の精算など、様々な手続きが発生します。
家族がおらず頼れる親族も少ない独身女性は、自分に何かあったときに備えて、死後事務委任契約を結んでおくと安心です。
死後事務委任契約とは、生前に自分が信頼できる人(または法人)と契約を結び、自分の死後に必要な手続きをその相手に行ってもらうものです。
遺族に迷惑をかけないためにも、生前のうちに準備しておきたい制度のひとつといえるでしょう。
5-3 任意後見制度の利用
認知症などにより判断能力が低下してきたときの対策として、任意後見制度も検討しておくと良いでしょう。
任意後見制度とは、認知症などで判断能力が衰えたときに備えて、あらかじめ信頼できる人を「後見人」として選び、契約しておく制度です。
任意後見制度では、元気なうちに自分で後見人となってくれる人物や後見内容を決めることができる点がメリットです。
5-4 遺言書の作成
独身女性は、自分の死後、誰に財産を引き継いでもらうかも考えておく必要があります。
配偶者や子供がいない場合、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になることも多く、思いもよらない相続トラブルが起きる可能性も否定できません。
そうした事態を避けるためにも、遺言書を作成しておくと良いでしょう。
遺言書を作成しておけば、自分が希望する人物に遺産を譲れます。
遺言書には複数ありますが、中でも信頼性が高く、原本の改ざんや紛失リスクがない公正証書遺言を作成することをおすすめします。
まとめ
独身女性は老後資金の準備を早めに開始しておくと安心です。
定年まで今の会社に勤め続けることが難しい場合もありますし、想定していたよりも退職金の金額が少ない場合もあるからです。
早めに老後資金の準備を開始すれば、新NISAやiDeCoなどの資産運用も活用し、効率よく老後資金を準備できる可能性もあります。
また、独身女性は老後資金を準備するだけでなく、身元保証サービスや死後事務委任契約、任意後見制度など認知症対策や相続対策もしておくことをおすすめします。
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