DNA鑑定は拒否できる?拒否するリスクや強制認知の手続きについて

DNA鑑定は拒否できる?拒否するリスクや強制認知の手続きについて
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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 4
この記事でわかること

  • DNA鑑定は拒否できるのか
  • DNA鑑定を拒否するリスク
  • 父親が認知をしてくれないときの対処法

親子関係をめぐるトラブルや認知の請求において、DNA鑑定は極めて重要な証拠となります。
しかし、状況や母親と父親の関係によっては、DNA鑑定を拒否したいと考えることもあるかもしれません。

結論から言うと、父親と子供の血縁関係をはっきりさせたい場合や認知の請求をしたい場合に行うDNA鑑定には強制力はなく、拒否することもできます。
しかし、拒否することで、裁判所が「不都合があるからDNA鑑定を拒否している」と判断する恐れもあるのでご注意ください。

本記事では、DNA鑑定を拒否できるケースや、拒否する際のリスクについて解説します。


1章 DNA鑑定は拒否できる?

DNA鑑定は、親子関係の有無を科学的に確認する方法として広く知られていますが「鑑定を受けたくない」「強制されるのではないか」と不安に感じる方も少なくありません。
結論から言うと、父子鑑定をしたい場合や父親の認知を求める場合などといった民事上のトラブルにおいては、基本的にDNA鑑定は「任意」です。

そのため、本人の同意なくして強制されることはなく、拒否することも基本的には認められます。

1-1 家庭裁判所がDNA鑑定を命じるケース

父子関係に疑問を持ち、嫡出否認の訴えや親子関係不存在確認の訴えを起こしたときに、家庭裁判所がDNA鑑定を命じることがあります。
とはいえ、家庭裁判所がDNA鑑定を命じたとしても、あくまでも任意であり、拒否したからといって罰則があるわけではありません。

しかし、DNA鑑定を拒否すると、家庭裁判所には「不都合な真実を隠しているのでは?」「認知をしたくないから鑑定を拒否したのではないか」と受け止められ、不利に働く恐れもあるのでご注意ください。

なお、DNA鑑定は民事上のトラブル発生時だけでなく、刑事事件発生時に操作の一環として行われる場合があります。
このようなケースでは、捜査機関が裁判所に「身体の採取令状」などを請求し、強制的にDNA鑑定を行う場合があり、拒否することは認められません。

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2章 DNA鑑定を拒否するリスク

DNA鑑定をすれば、親子関係を法的に確認・証明できますが、父親など当事者の協力がなければ実施できない特徴があります。
民事上のトラブルでは、DNA鑑定は任意であり強制力がないため、当事者の一方が拒否すれば鑑定は実施されません。
しかし、その拒否が思わぬ不利益につながることもある点には注意しなければなりません。

本章では、DNA鑑定を拒否した場合に生じるリスクについて、詳しく解説していきます。

2-1 親子関係の証明は難しくなる

親子関係を証明するためには、戸籍上の記載だけでなく、血縁上の事実が問われることがあります。
特に、親子関係不存在確認の訴えや強制認知の申立てなど、父子関係を争点とする裁判では、DNA鑑定の結果が非常に重要な証拠のひとつとなります。

例えば、母親が子供の父親に対して、強制認知の申立てをしているケースを考えてみましょう。
子供の父親とされる人物がDNA鑑定を拒否した場合、母親は、以下のような他の証拠を提出しなければなりません。

  • 妊娠中の交際状況
  • 出産時期
  • 子供と父親の血液型

証拠が不十分である場合には、裁判所は「親子関係の立証がなされていない」と判断する可能性があり、請求が認められない恐れもあります。

2-2 拒否することで「親子関係を認めている」と判断されやすくなる

一方、親子関係を否定したい側にとっても、DNA鑑定を拒否することはリスクがあります。
「DNA鑑定を拒否すること=自分にとって都合の悪いことを隠している」と家庭裁判所に判断される恐れもあるからです。

例えば、母親が子供の代理人として強制認知の申立てをしたものの、父親がDNA鑑定を拒否すると、以下のように家庭裁判所が判断する可能性もあります。

  • もし親子関係が本当にないのなら、DNA鑑定を受けて否定すれば良いのに、それをしないのはやましいことがあるからではないか
  • 鑑定拒否は、逆に親子関係を認めていると判断するに足る

このように、DNA鑑定の拒否がかえって認知を避けたいだけ、親子関係を認めている証拠と判断される恐れもあるのでご注意ください。
本当に自分が父親ではないと確信しているのであれば、DNA鑑定を拒否せず、事実を証明した方がスムーズに事が進む可能性も大いにあります。


3章 父親が認知をしない場合には強制認知の手続きを行える

未婚の男女の間に生まれた子供は、父親の認知がなければ、父親との法律上の親子関係が成立しません。
認知をする方法は、主に以下の3種類に分けられます。

  • 任意認知:父親が自らの意思で認知届を提出する
  • 裁判認知(強制認知):父親が認知しない場合に、母または子が家庭裁判所に申立てることで、裁判所の判断で親子関係を認めてもらう
  • 死後認知:父親が死亡した後に、遺族が認知の申し立てを行う

父親が認知をしてくれない場合には、強制認知を検討しましょう。
本章では、強制認知について、詳しく解説していきます。

3-1 強制認知とは

強制認知とは、子供やその母親が家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所の判断で父子関係を認めてもらう手続きです。
裁判所が父子関係を認めれば、たとえ父親が認知に同意しなくても、戸籍に「父」として記載され、法律的な親子関係が発生します。

強制認知のメリットとデメリットは、主に以下の通りです。

メリット デメリット
  • 父親に対して養育費の請求が可能になる
  • 子供が将来的に父親の相続権を取得できる
  • 学校や公的手続きなどにおいて父親の情報を記載できる
  • 家庭裁判所での手続きや調停・審判に時間と労力がかかる
  • その後も禍根が残る可能性がある
  • 子供本人が成長した際に、家庭内での事情に複雑な思いを抱くこともある

父親がDNA鑑定を拒否し続ける場合や、親子関係を認めようとしない場合には、強制認知は重要な選択肢のひとつとなります。

3-2 強制認知の手続きをする流れ

強制認知を求める場合には、以下のような流れで家庭裁判所に申立てをする必要があります。

  1. 家庭裁判所への申立て
  2. 調停または審判手続き
  3. DNA鑑定の提案・命令
  4. 判決(または審判)による認知の認定
  5. 戸籍の訂正・登録

家庭裁判所への申立て方法や必要書類は、以下の通りです。

申立てする人 子供
母親など法定代理人(子供が未成年の場合)
申立て先 父親の住所地を管轄する家庭裁判所
費用 収入印紙:1,200円分
連絡用の郵便切手代:数千円程度
DNA鑑定費用:数万円程度(原則として、申立人が負担する)
必要書類 申立書・写し
子供の戸籍謄本
父親の戸籍謄本
子の出生証明書写し・母の戸籍謄本(離婚後300日以内に出生した出生届未了の子に関する申立ての場合)
など

家庭裁判所による調停や審判の内容によっては、裁判所がDNA鑑定を提案することもあります。


4章 認知のためにDNA鑑定をする際の注意点

DNA鑑定は親子関係を証明するために有効な手段ですが、鑑定結果を有効な証拠とするには、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。
特に、家庭裁判所での強制認知など法的な手続きに進むことを想定している場合、鑑定方法や手続きの正確さが、認否の行方に大きな影響を及ぼすと理解しておきましょう。

本章では、認知を目的としたDNA鑑定に際して、特に注意すべき2つのポイントについて解説します。

4-1 相手に内緒でDNA鑑定をしないようにする

相手がDNA鑑定を拒否するからといって、内緒で鑑定しないようにしましょう。

インターネットなどで検索すると、自宅で簡単にできる「セルフ鑑定キット」が多数販売されています。
これらのキットは、綿棒で口腔内の細胞を採取し、郵送で鑑定会社に送ることで結果が分かるという手軽さが特徴です。

しかし、このような鑑定キットを使って相手に内緒でDNA鑑定をすると、法的なトラブルに問われる恐れもあるので絶対にやめましょう。
また、このように内緒で鑑定した結果は、裁判などでは正式な証拠として認められないことが一般的です。

相手がDNA鑑定に協力的でない場合でも、認知の訴えなどの正式な手続きを踏むことで、裁判所を通じてDNA鑑定を依頼できる場合もあります。
決して、感情的に行動せず、正しい方法で鑑定を求めることが大切です。

4-2 鑑定結果を証拠としたいのであれば法的鑑定を行う

DNA鑑定には大きく分けて、①私的鑑定と②法的鑑定の2種類があります。

私的鑑定
  • 法的証拠能力は低い
  • 個人の判断で鑑定を行える
  • 法的鑑定と比較して手軽に行える
法的鑑定
  • 鑑定を行う者の身元確認(本人確認書類・立会い等)や手順が厳密に管理されている
  • 鑑定書は裁判の証拠などに使用できる

将来的に家庭裁判所への申し立てを検討している場合や、父親が認知に応じていない場合は、最初から法的鑑定に対応している機関を選ぶことをおすすめします。
鑑定書の形式や提出先についても、事前に弁護士に相談しておくと安心です。

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まとめ

DNA鑑定は、親子関係を科学的に証明するための有効な手段ですが、民事上のトラブルにおいては基本的に任意であり、拒否することも可能です。
ただし、拒否によって親子関係の立証が難しくなったり、逆に認知を認めていると判断されるリスクもあります。

父親が認知してくれない場合には、家庭裁判所を通じた強制認知の手続きを検討しましょう。
その際は、証拠として通用する「法的鑑定」を選び、相手に無断で行うことのないよう注意が必要です。

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