- 法的に親子が絶縁する2つの方法
- 日常生活の中で親子が絶縁する方法
- 親が子供に財産を遺さないようにする方法
長年にわたり親子の関係が悪く、絶縁してしまいたい、金輪際関わりたくないとお悩みの人もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、法的に親子が絶縁するには①特別養子縁組か②親子関係不存在確認の訴えをするしかありません。
しかし、どちらの制度も親もしくは子供と絶縁したいという理由のみでは、手続きすることはできません。
そのため、日常生活を送る上で親や子供と絶縁したいのであれば、普通養子縁組や戸籍、住民票の閲覧制限をかけて引っ越すことも検討しましょう。
本記事では、親子が絶縁する方法や親が子供に財産を遺さないようにする方法を解説します。
1章 法的に親子が絶縁できるたった2つの方法
法的に親子関係を解消したいのであれば、①特別養子縁組をするか②親子関係不存在確認の訴えを認めてもらうしかありません。
ただし、どちらの制度も利用できる条件が決められています。
それぞれの制度を詳しく見ていきましょう。
1-1 特別養子縁組をすれば実親との関係は消滅する
特別養子縁組をすれば、実親との親子関係は解消され、養親との親子関係のみが残ります。
そのため、特別養子縁組であれば親子であっても絶縁できるといえるでしょう。
ただし、特別養子縁組は誰でも利用できる制度ではありません。
特別養子縁組は子供の福祉を目的とした制度であり、養子縁組が認められるのも原則として15歳未満の子供だけです。
加えて、特別養子縁組を行うには家庭裁判所での審判が必要であり「親子の縁を切りたい」といった理由では認められない可能性が高いです。
そのため、特別養子縁組は親子を絶縁させる効果を持つものの現実問題としては、絶縁目的で利用することはできません。
1-2 親子関係不存在確認の訴えが認められれば親子関係が消滅する
親子関係不存在確認の訴えが認められれば、親子の関係は消滅するため、法的に絶縁可能です。
親子関係不存在確認の訴えとは、法律上の親子関係を争う制度であり、婚姻中でありながら夫の子ではない子を妻が出産した場合に行われる訴えです。
DNA鑑定を行い親子の血縁関係をハッキリさせることが前提であり、親子の絶縁のみを目的に行うことはできません。
また制度の前提上、血の繋がった親子の場合は親子関係不存在確認の訴えが認められることはありません。
2章 親子が絶縁したいと感じる理由
親子が絶縁したいと感じる理由は、様々であり複数の理由が絡み合っていることもあるでしょう。
絶縁を考える理由は、主に下記の通りです。
- 借金問題
- 虐待
- 異性問題
- 過干渉
例えば、親がお金にだらしなく、社会人になった子供に金の無心をしてくるケースや親の借金を肩代わりさせられそうになった場合、絶縁したいと感じることもあるでしょう。
しかし、本記事の1章で解説したように親子が絶縁する方法は限られており、希望していれば利用できる性質のものでもありません。
そのため、これらの理由で親子の縁を切りたい場合は、生活していく中で親子が関わらないようにしていくことを考えていきましょう。
次の週では、日常生活の中で親子が縁を切る方法を解説します。
3章 生活の中で親子が絶縁する方法
法的に親子が絶縁することは現実的でないので、親子の縁を切りたい場合は生活の中でできるだけ親子が関わらないようにしていく必要があります。
具体的には、下記の方法で生活していく中では親子が絶縁に近い状態を保てます。
- 引っ越しをし連絡先や住所を伝えない
- 養子縁組をする
- 戸籍を分籍する
- 戸籍上の名前を変更する
- 相続放棄をする
- 接近禁止仮処分命令の申立てをする
- 絶縁状を送付する
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 引っ越しをし連絡先や住所を伝えない
親または子供からの過干渉や虐待から逃げたいのであれば、引っ越ししてしまい連絡先や住所を教えないようにしましょう。
ただし、親や子供に現在の連絡先や住所を知られないようにするには引っ越すだけでは不十分であり、戸籍や住民票の閲覧制限もしなければなりません。
戸籍や住民票の閲覧制限をかければ、虐待加害者である親などが戸籍や住民票を確認することを防げます。
3-2 養子縁組をする
親子の縁を切りたいのであれば、養子縁組も有効です。
本記事の1章で解説したように、親から虐待を受けており、15歳未満であれば特別養子縁組が認められる可能性があります。
特別養子縁組の条件を満たさない場合でも、普通養子縁組を行えば実親だけでなく養親とも親子関係を作れます。
普通養子縁組は実親との関係を解消せず、養親との親子関係を新たに作る制度です。
普通養子縁組の場合、養親と養子が同意している場合、完全に縁を切ることはできませんが、表面上の縁切り効果は見込めるのと、婚姻のように簡単や役所手続きで行うことができます。
例えば、親の過干渉を断ち切りたいのであれば配偶者の両親などと養子縁組をすることを考えても良いでしょう。
3-3 戸籍を分籍する
親と縁を切りたいと考えている場合、親の戸籍から抜けるために分籍を行うことも検討しましょう。
分籍とは、今の戸籍から抜けて届出人を筆頭者とした新たな戸籍を作る手続きです。
分籍を行えば、結婚していない子供であっても親の戸籍から抜けられます。
分籍の届出方法および必要書類は、下記の通りです。
手続きする人 | 分籍する人 (書類記入は本人が行う必要がありますが、提出事態は誰でも行えます) |
手続き先 | 下記のいずれかの市区町村役場
|
費用 | 無料 |
必要書類 |
|
ただし、分籍をする際には、下記の点に注意しなければなりません。
- 18歳未満は手続きできない
- 一度分籍してしまうと、もとの戸籍に戻れない
3-4 戸籍上の名前を変更する
戸籍上の名前を改定すれば、親と縁を切りやすくなります。
名前を変えることで親に見つからず生活しやすくなりますし、精神的にも親と縁を切れたと感じやすいからです。
改名したい場合は、家庭裁判所において「氏の変更許可申立」や「名の変更許可申立」を行わなければなりません。
ただし、申立ては必ず認められるわけではなく、正当な理由がない場合や改名の影響が大きい場合は認められない恐れがあります。
「氏の変更許可申立」や「名の変更許可申立」をするのが難しい場合は、通称名を名乗ることも検討しましょう。
通称名を名乗るのは手続きも不要ですし、罪に問われることもありません。
3-5 相続放棄をする
親子の縁を切りたい、相続が発生したとしても関わりたくない場合は相続放棄も有効です。
相続放棄とは、亡くなった人のプラスの財産もマイナスの財産も一切相続しなくなる手続きです。
相続放棄をすれば最初から相続人でなかった扱いになります。
親と絶縁したい、死んだ後も関わりたくないと考える場合や親がお金にだらしなく多額の借金をしている場合は、相続放棄を検討しましょう。
ただし、相続放棄をする際には下記の点に注意しなければなりません。
- 生前に相続放棄することはできない
- 相続放棄をするには家庭裁判所での申立てが必要である
- 相続放棄は自分が相続人であると知ってから3ヶ月以内に行う必要がある
- 相続放棄が受理されると原則として取り消せない
相続放棄の申立て方法および必要書類は、下記の通りです。
提出先 | 故人の住所地を管轄する家庭裁判所 |
手続きする人 | 相続放棄する人(または法定代理人) |
手数料の目安 |
|
必要なもの |
|
3-6 接近禁止仮処分命令の申立てをする
本記事の2章で解説したように、親の虐待や過干渉、金の無心などに悩まされているのであれば、接近禁止仮処分命令の申立ても検討しましょう。
親子間では虐待などを理由とした接近禁止命令は適用されませんが、民事保全法の接近禁止仮処分命令なら適用できるからです。
ただし、接近禁止仮処分命令の申立てが認められるには、親の干渉が激しく身の危険を感じているなどの必要性および緊急性が求められます。
親子喧嘩の延長程度では、申立てが却下される恐れもあるのでご注意ください。
接近禁止仮処分命令の申立てが認められた場合、相手が接近してきたときに違約金などを請求できるので、一定の抑止力を持つといえるでしょう。
3-7 絶縁状を送付する
親子の縁を切りたいのであれば、絶縁状を送付しても良いでしょう。
絶縁状とは、関係を絶ち切りたい相手に絶縁の意思を伝える書類です。
絶縁状を送れば、絶縁したい意思を相手に伝えられますし、自分の中でも一区切りついたと精神的に楽になれる効果もあります。
一方で、絶縁状は法的効力を持たないため相手が従ってくれない恐れもあるでしょう。
すでに引っ越しして相手が自分と連絡を取れない状態であれば、わざわざ絶縁状を送付するメリットも少ないと考えられます。
絶縁状を送る場合は、下記のひな形を参考に作成されるのも良いでしょう。
絶縁状 br>
br>
〇〇(家族の名前)殿 br>
br>
br>
突然の書状にて失礼いたします。 br>
br>
長年にわたり、家族としての関係を維持してきましたが、熟考の末、私たちの間にはもはや修復不可能な溝が存在することを痛感しました。これ以上、互いに負担をかけ合うことは避け、各々がそれぞれの道を歩むべきであると判断しました。 br>
br>
よって、今後一切の連絡を絶ち、お互いの生活に干渉しないことをここに宣言いたします。お互いの今後の生活がそれぞれの自由意思に基づき、平穏であることを願っております。 br>
br>
これまでのご厚情に感謝しつつ、今後の生活においてお互いが幸福であることをお祈り申し上げます。 br>
br>
以上 br>
br>
br>
令和〇年〇月〇日 br>
br>
[あなたの名前]
4章 親が子供に財産を遺さないようにする方法
親子の縁を切りたいと感じる人の中には、子供に財産を遺したくないと考える人もいるでしょう。
金の無心をしてくる、暴力を振るってくる子供ではなく別の人に財産を遺したいと考えることは珍しくありません。
親が子供に財産を遺さないようにする方法は、主に下記の通りです。
- 遺言書を作成する
- 他の人物に生前贈与する
- 家族信託を行う
- 相続人廃除をする
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 遺言書を作成する
子供ではなく別の人に遺産を譲りたいのであれば、元気なうちに遺言書を作成しておきましょう。
遺言書を作成しておけば、自分が希望する人物に財産を遺せるからです。
遺言書を作成し子供に財産を遺さないようにするには、下記の点に注意しましょう。
- 遺留分対策をしておく
- 遺言執行者を選任しておく
遺留分とは、亡くなった人の配偶者や子供などに設定されている遺産を最低限度受け取れる権利です。
遺留分は遺言より優先されるため「配偶者に全財産を遺す」「遺産はすべて寄付をする」などとしていても、子供が遺留分侵害額請求をする恐れがあります。
自分が亡くなった後のトラブルを避けるためにも、遺留分を考慮した遺言書を作成する、あらかじめ生前贈与で遺産を減らしておくなどの工夫をしておきましょう。
また、遺言執行者とは遺言内容を確実に実行するための人物です。
遺言書を用意していても子供がごねると予想される場合は、司法書士や弁護士などの専門家を遺言執行者に選任しておきましょう。
4-2 他の人物に生前贈与する
子供に遺産を譲りたくないのであれば、元気なうちに子供以外に生前贈与しておくのも有効です。
生前贈与すれば遺産を減らせるため、子供にわたる財産も減らせるからです。
ただし、相続人への生前贈与は特別受益に該当する恐れがあるのでご注意ください。
特別受益とは、特定の相続人が亡くなった人から個別に受けていた利益です。
過去の生前贈与が特別受益と判断されると、過去の贈与も遺産分割の対象に含めなければならない恐れが有ります。
過去の贈与を特別受益の対象から外すには遺言書などで特別受益の持ち戻し免除を指定しておかなければなりません。
生前贈与や遺言書の作成などの相続対策は複数の方法を掛け合わせることが一般的ですので、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談した上で行うのが良いでしょう。
4-3 家族信託を行う
家族信託を行えば、自分が亡くなった後に遺産を受け取る人物だけでなく、更にその次の相続まで指定できます。
家族信託とは、信頼できる家族に自分の財産の管理や運用、処分をまかせる制度です。
遺言書と異なり、家族信託では自分が亡くなった後の相続まで指定できるので、先祖代々守ってきた土地を子供以外の親族に譲りたい場合などにも適しています。
子供や孫などと縁を切りたい、財産を譲りたくない場合は利用を検討しても良いでしょう。
ただし、家族信託を活用するには専門的な知識が必要なので、まずは家族信託に精通した司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
4-4 相続人廃除をする
遺産を譲りたくない子供がいる場合は、相続人廃除を検討しましょう。
相続人廃除とは、特定の相続人の地位を奪う制度です。
相続人廃除が認められた場合、その相続人は一切の相続権を失います。
相続人廃除をするには、生前のうちに家庭裁判所で手続きをするか遺言書に記載しておかなければなりません。
ただし、相続人廃除が認められた場合、廃除された人は相続権を失いますが代襲相続は発生します。
代襲相続とは、相続発生時に相続人がすでに死亡している場合や相続人廃除されている場合に、相続人の子供が代わりに相続権を持つことです。
例えば、長男を相続人廃除していた場合、長男の代わりに長男の子供(故人からみた孫)が相続権を持ちます。
子供だけでなく、子供のもとに生まれた孫にも遺産を譲りたくない場合は、相続人廃除以外の方法で相続対策する必要があるでしょう。
まとめ
親子が法的に絶縁する方法は①特別養子縁組と②親子関係不存在確認の訴えしかありません。
加えて、どちらの制度も条件が細かく決められており、制度の利用自体が認められないこともあるでしょう。
法的な絶縁が難しい場合は、分籍や戸籍・住民票の閲覧制限などを行い、日常生活を送る中で親子の縁を切ることが現実的です。
また、親が亡くなった後も遺産を受け取りたくない、関わりたくない場合は相続放棄を検討しましょう。
親が子に遺産を遺したくないと考える場合は、遺言書の作成や生前贈与などの相続対策が有効です。
グリーン司法書士法人では、相続放棄や相続対策についての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能てすので、まずはお気軽にお問い合わせください。