家族の死後に預金引き出しをするのは違法?相続トラブルに注意が必要

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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 6
 この記事を読んでわかること

  • 喪主が葬儀後にやることがわかる
  • 葬儀後に行う諸手続きについてわかる
  • 葬儀後に行う相続手続きについてわかる

家族が亡くなると入院費用や葬儀費用の支払い、当面の生活費の工面に困ってしまうケースも多いのではないでしょうか。
口座名義人の死後に葬儀費用等の支払い目的で預金を引き出すのは、特に違法ではないのでご安心ください。

ただし、引き出した預金が相続財産であることに変わりはないので、支払いに使用した分は領収書や記録を残しておきましょう。
また、引き出す金額を最小限度にとどめておくと他の相続人とのトラブルも回避しやすいです。

なお、口座名義人の死亡を銀行が確認すると、銀行口座は凍結されてしまいます。
銀行口座が凍結されると、預金の引き出しはできなくなってしまうのでご注意ください。

本記事では、口座名義人の死亡後に預金を引き出すときの注意点や口座凍結後に預金を引き出す方法を紹介していきます。


1章 口座名義人の死後に預金を引き出しても違法ではない

口座名義人の死後に預金を引き出しても違法ではない

結論から言うと、相続人が口座名義人の死後に預金を引き出したとしても違法ではありません。
日本では親族間での窃盗や横領について刑事上の罪に問わないと決まっているからです。

ただし、引き出した預金も亡くなった人の相続財産であることには変わりありません。
相続税の課税対象財産として計算する必要がありますし、遺産分割協議で分配方法を話し合う必要もあります。ですので、他の相続人が合意しないうちに預金を引き出した行為が、相続トラブルの原因になる恐れもあります。
また、銀行等の金融機関は口座名義人が亡くなったことを知ったタイミングで口座を凍結してしまいます。

まずは銀行口座の凍結について、詳しく確認していきましょう。

1-1 名義人の死亡が銀行に伝わると口座が凍結される

金融機関は口座名義人が亡くなったことを知ったタイミングで、銀行口座を凍結してしまいます。
銀行口座が凍結されると、預金の引き出しだけでなくクレジットカードや公共料金等の引き落としもできなくなってしまいます。

口座凍結は遺産分割協議を終え、口座の名義変更手続きを行わない限り解除されることはありません。
そのため、亡くなった人の入院費や葬儀費用の支払い等で預金を引き出したいのであれば早めに行っておくのが良いでしょう。

また、口座名義人の死亡後に預金を引き出すのは相続トラブルに発展する可能性もゼロではありません。
次の章では、預金の引き出しが相続トラブルに発展してしまうケースを紹介していきます。

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2章 死後の預金引き出しが相続トラブルになるケース

死後の預金引き出しが相続トラブルになるケース

口座名義人の死後に預金を引き出せたとしても、引き出したお金は相続財産に変わりありません。
他の相続人に合意を取らずに預金を引き出すと、相続トラブルに発展する恐れがあります。
故人の預金引き出しが相続トラブルに発展するケースは、主に以下の通りです。

  1. 自分の相続分を超えて預金を引き出したケース
  2. 引き出した預金の使い道を説明できないケース
  3. 預金の引き出しを隠していたケース

それぞれ詳しく解説していきます。

2-1 自分の相続分を超えて預金を引き出したケース

法定相続分の範囲内で故人の預金を引き出した場合には、相続分の先払いとして扱うことができるので、相続トラブルに発展しにくいです。
その一方で、自分の法定相続分を超える範囲で預金を引き出すと、他の相続人から「勝手なことをしないでほしい」「相続分を取られてしまうのではないか」と不信感を持たれる恐れがあります。

亡くなった人の葬儀費用や入院費用等やむを得ない理由で預金を引き出すとしても、必要最低限度の引き出しにしておきましょう。

2-2 引き出した預金の使い道を説明できないケース

亡くなった人の葬儀費用や入院費用など、引き出した預金の使い道が明確であれば、他の相続人も納得してくれる可能性が高いです。
それに対し、預金の引き出しは合ったものの何の支払いに使用したのかわからない場合には、相続財産を使い込まれているのではないかと疑われる場合もあるでしょう。

葬儀費用や入院費用等のために預金を引き出した際には、領収書や明細書等を残しておき、他の相続人に対して何の支出であったか後に説明できるようにしておきましょう。

2-3 預金の引き出しを隠していたケース

他の相続人に預金の引き出しを隠していたケースでは「相続財産を持ち逃げしようとしたのではないか」「やましい理由があるのではないか」と不信感を持たれやすいです。

口座名義人の死後に預金を引き出す場合には、事前に他の相続人に許可を取っておく、許可を取る時間がなかった場合にはできるだけ早く報告しておくのがおすすめです。

また、1章で解説したように口座名義人が亡くなったことを銀行等が把握すると、銀行口座が凍結されてしまいます。
口座凍結は勝手に解除されることはないので、口座凍結後に預金を引き出したい場合には所定の手続きを取る必要があります。
次の章では、口座凍結後に預金を引き出す方法を確認していきましょう。


3章 口座凍結後に預金を引き出す方法

口座凍結後に預金を引き出す方法

口座名義人の死亡により銀行口座が凍結されてしまうと、自動で凍結が解除されることはありません。
預金の解約手続きを行うか、預貯金の払戻し制度等を利用して預金を引き出すようにしましょう。
口座凍結後に預金を引き出す方法は、以下の3つです。

  1. 預金の解約手続きを行う
  2. 預貯金の払戻し制度を活用する
  3. 預貯金債権の仮分割の仮処分を認めてもらう

それぞれ詳しく解説していきます。

3-1 預金の解約手続きを行う

一旦、死亡により口座凍結されると、遺言書がなければ相続人全員で協力して預金の解約手続きを行うしかありません。
預金の解約手続きは、銀行の窓口で指示された書類を提出する必要があります。

預金の名義変更手続きに必要な書類は、遺言書の有無や遺言執行者の有無によっても異なります。
例えば、遺言書や遺産分割協議がなく、法定相続分で預貯金を分ける場合の必要書類は下記の通りです。

書類の名称必要書類・補足
戸籍謄本
  • 口座名義人が生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本
  • 法定相続人を確認できる全ての戸籍謄本
印鑑証明書法定相続人全員の印鑑証明書
通帳
  • 証書
  • キャッシュカード
  • 貸金庫の鍵

なども用意しておく

必要書類は相続の状況や金融機関によっても異なるので、事前に確認しておくことをおすすめします。

銀行口座の凍結とは?口座名義人の死亡後に解除する方法と必要書類

3-2 預貯金の払戻し制度を活用する

預貯金の名義変更手続きを行う前でも、葬儀費用や当面の生活費等でお金が必要になった場合には、預貯金の払戻し制度を活用し、預貯金を一部引き出し可能です。
預貯金の払戻し制度を活用すれば、口座凍結後であっても以下の金額まで預貯金を引き出せます。

引き出し上限額=相続開始時の預貯金残高×1/3×払戻しを受ける相続人の法定相続分

もちろん、払戻し制度を活用したとしても、引き出した預金は故人の相続財産であることに変わりはありません。
葬儀費用や生活費として使用した金額は領収書や明細を受け取り、管理をしておきましょう。

3-3 預貯金債権の仮分割の仮処分を認めてもらう

預貯金の払戻し制度で引き出せる上限額以上の金額を引き出したい場合には、家庭裁判所に「預貯金債権の仮分割の仮処分」を認めてもらう必要があります。
預貯金債権の仮分割の仮処分を認めてもらえれば、預貯金の全部もしくは一部を口座凍結後であっても引き出せます。
預貯金債権の仮分割の仮処分の申立手続きや必要書類は、下記の通りです。

申立人遺産分割調停もしくは審判の申立人またはその相手方
申立先遺産分割調停もしくは審判事件の係属する家庭裁判所
申立費用
  • 収入印紙:1,000円分
  • 連絡用の郵便切手代
必要書類
  • 申立書
  • 戸籍や住所に関係する書類
  • 遺産全体の内容を表す書類
  • 仮分割の必要性に関する資料

など

またあまり考えたくないことですが、口座名義人の死後に自分以外の相続人が勝手に預金を引き出し使い込んでしまう可能性もゼロではありません。
万が一、預金の引き出しや使い込みがあったときの対処法を次の章で解説していきます。


4章 死後に他の相続人が預金を引き出し使い込んだときの対処法

故人の預金を自分以外の相続人が勝手に引き出し使い込んでしまったときには、使い込まれた預金も含めて遺産分割を行うことが可能です。
さらに遺産分割協議での解決が難しい場合には、預貯金の使い込みに対し、損害賠償請求訴訟も起こせます。

それぞれ詳しく確認していきましょう。

4-1 遺産分割協議で請求する

他の相続人が故人の預金を使い込んでいた場合には、遺産分割協議で請求可能です。
民法でも、相続人全員の合意が得られた場合には、すでに処分されてしまっている相続財産に関しても存在するものとして遺産分割できると規定されています。

さらに、すでに使われてしまった預貯金を含めて遺産分割協議を行う際には、使い込みをした相続人の同意は不要とされています。

4-2 損害賠償請求訴訟を起こす

遺産分割協議での解決が難しい場合には、預貯金の使い込みに対して「不当利得の返還請求」もしくは「不法行為」に対して、損害賠償請求訴訟を起こせます。
損害賠償請求訴訟を起こすのに必要な証拠集めや手続きには、法律に関する専門的な知識が必要です。
訴訟を検討する場合には、相続トラブルに詳しい弁護士等への相談がおすすめです。


まとめ

口座名義人の死後に預金を引き出すことは違法ではありません。
ただし、引き出した預金は相続財産であることには変わりないので、支払いに使用した分は領収書等で証明できる状態にしておくのが大切です。

また、口座名義人の死亡を銀行が把握すると、口座が凍結され、預金がそもそも引き出せなくなってしまいます。
死亡により凍結された銀行口座は預貯金の解約手続き等を行わない限り、預金の引き出しもクレジットカード等の引き落としもできなくなります。

預貯金の名義変更手続きを行う際には、相続人の戸籍謄本や遺産分割協議書等といった相続手続きに関係する書類が必要です。
少しでも早く預貯金を引き出してしまいたいのであれば、司法書士等の専門家に相続手続きを依頼してしまうのも良いでしょう。

グリーン司法書士法人では、遺産分割協議書の作成を始めとした相続手続きに関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。


よくあるご質問

亡くなった人の預貯金はおろせますか?

亡くなった人の預貯金をおろすことは違法ではありません。
ただし、金融機関が口座名義人の死亡を確認すると、口座が凍結されてしまいます。
▶亡くなった人の預貯金をおろすことについて詳しくはコチラ

死亡保険金はいくらまで相続税がかからない?

死亡保険金には「500万円×法定相続人」の非課税枠が用意されており、この範囲であれば相続税はかかりません。
また、非課税枠を超えたとしても他の相続財産との合計額が相続税の基礎控除におさまる場合には、相続税がかかりません。
▶死亡保険金と相続税の関係について詳しくはコチラ

死亡した人の預金はどうなる?

口座名義人の死亡を銀行が確認すると、預金口座は凍結され一切引き出せなくなってしまいます。
▶死亡した人の預金について詳しくはコチラ

口座名義人の死亡後にいくらまで引き出せる?

銀行口座凍結後も仮払い制度を利用すれば、引き出し可能です。 仮払い制度の引き出し上限額は「相続開始時の口座貯金額×1/3×相続人の法定相続分」となっています。
▶口座名義人死亡後の預金引き出しについて詳しくはコチラ

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