「未成年後見人って何するの?」
「未成年後見人になると大変?」
このような疑問を抱いて本記事を読まれているのでしょう。
未成年後見人とは、親の死亡などより親権者が居なくなった未成年者について、親の代わりに法定代理人となり、監護養育、財産管理などの法律行為を行う人です。
未成年後見人は、全国的にも非常に利用件数が少ない手続きなので、一般の方向けの書籍もほとんどなく、ネット上の情報も少ないのが現状です。
司法書士である私もサポートをさせて頂いたのは数件ですが、少しでも多くの方に知って頂くために本記事を書きました。
本記事は、お読み頂ければ未成年後見人とはどんな制度なのかを理解して頂る内容になっているので、是非ご活用下さい。
目次
1章 未成年後見人とは
未成年後見人とは、父母等の親権者がいない未成年者の為に、親権者に代わって、その未成年者の財産管理と身上監護、法的手続きを行う人物です。
未成年者の財産管理や身上監護、法的手続きを行うのは親権者ですが、親権者が不在の場合は選任された未成年後見人がこれらの行為を行います。
なお、未成年後見人の職務は未成年者が成人するまで続きます。
未成年者の預貯金の取引を代わりに行ったり、契約等の法律行為を代理すること、または未成年者がした契約等に同意をする事等をいいます。
財産管理を行うにあたり注意すべき点は、自分の財産と混ざらないようにきちんと分けて管理を行う事と未成年者の不利益になるような贈与や売買はしないという点です。自分の財産よりもより高いレベルでの注意を払って財産管理をしましょう。
未成年者の住む場所を決める、教育について決める、適切な衣食住を確保する等の身の回りの世話をする事です。未成年者が身体的にも肉体的にも健全に成長して、立派な社会人になれるようにつとめる必要が有ります。
1-1 未成年後見人の職務
未成年後見人の主な職務を、就任時・就任中・終了時に分けて解説いたします。まずは下記のイラストをご覧下さい。
① 就任時の職務
- 未成年者の財産を調査し、財産目録を作る → 未成年後見人に就任したら、1か月以内に未成年者の財産調査をして財産目録という書類を作成して、家庭裁判所に提出をします。
- 未成年者の生活・財産管理・教育に関する費用と後見事務に関する費用の予算を作る → 今後未成年者の財産管理を行う為に、生活費や教育に関する費用を計算して収支計画を作ります。
② 就任中の職務
- 未成年者の監護・教育等(身上監護) → 未成年者の生活や教育、医療に関すること等の日常の身の回りの面倒を見る事です。例えば住む場所を決めたり、進学先の学校を決めたりという様な事をします。
- 財産の管理、法律行為の代理 → 未成年者の代わりに預貯金の管理をしたり、契約について代理等の法律行為を行います。例えば未成年名義の銀行口座を作ったり、相続の際の遺産分割協議を代わりに行う様な事をします。
- 家庭裁判所への定期的な事務報告 → 家庭裁判所に対して定期的な後見事務に関する報告を行います。具体的には収支の報告等を行います。
③ 終了時の職務
- 本人、養親、相続人などへの財産の引き継ぎ → 本人が20歳になる等で未成年後見人としての職務が終了したときは、管理していた財産を本人等に引継ぎをします。
- 後見終了の届け出 → 後見終了後10日以内に後見終了の届出を市区町村役場に対して行います。
1-2 未成年後見人の責任
未成年後見人が未成年者の財産を管理する場合、自分の財産を管理する以上の注意を払う義務が発生します。
ですので、もし親族が未成年後見人になったとしても法的には他人の財産を管理しているのと同じなんだと考えて下さい。
未成年者の財産を減らすような行為はできません。例えば未成年者の財産を後見人に贈与したり、無償で貸与するといった未成年者に不利益になる行為はできないのです。
そして、未成年後見人が不正な処分を行った場合は、損害賠償責任という民事上の責任はもちろん、業務上横領等の罪で刑事責任を負うことも有るのです。
1-3 「未成年後見人」と「親権者」の違い
未成年後見人と親権者の大きな違いは、未成年後見人は家庭裁判所の監督を受けるという部分です。その為定期的に家庭裁判所に報告を行うといった事務の負担があります
そして、あくまでも職務として未成年者の財産を管理しますので、未成年者の財産を横領するような事をすると刑事罰を受ける事もあります。このため、財産管理は親権者よりも注意をして行わなければならないという違いもあります。
1-4 未成年後見人になる方
未成年後見人は、祖父母等の親族を家庭裁判所への申立の際に候補者として申立ててその候補者が選ばれるのが基本です。
しかし、必ずしも申立書に記載した候補者が選ばれるとは限りません。
下記の様な場合は、司法書士や弁護士等といった専門家を家庭裁判所が選任するケースも有ります。
- 未成年者が多額の財産を持っている
- 多額の死亡保険金を受取っている
- 親族間で財産管理等の方針で大きな意見の食い違いがある
必ずしも希望している方が未成年後見人に選ばれるという保証は無いという点を注意しましょう。
それでは次章では申立から選任までの流れをご紹介していきます。
2章 未成年後見人の申し立て方法〜選任されるまでの流れ
未成年後見人を選任してもらう手続きは下記の2つのパターンが有ります。
- 未成年者本人又は未成年者の親権者(片親)等親族が家庭裁判所に対して申立てる
- 最後の親権者が遺言書で自分が亡くなった後の未成年後見人を指定する
本章では2つのパターンの申し立てから選任されるまでの手続きの流れを解説していきます。
2-1 家庭裁判所へ申立てて選任してもらうパターン
未成年後見人を選んでもらうために、家庭裁判所へ申立てをして選任されるまでの流れを解説していきます。
Step1 必要書類を収集
申立てに必要な書類を収集します。
各提出先の家庭裁判所により変る部分が有りますので、事前に申立をする裁判所に確認をしましょう。
管轄の裁判所は、「未成年者の住民票の所在地」が基準になります。
下記に収集する必要な書類をまとめます。
| 必要書類 | 取寄先 |
① | 各家庭裁判所指定の申立書一式 ※各家庭裁判所により書式が違いますので注意して下さい。 | 各家庭裁判所の窓口 |
② | 戸籍謄本
※後見人後者が法人の場合は、法人登記簿謄本(全部事項証明書) | 各市区町村役場の窓口 法人の場合は法務局 |
③ | 住民票又は戸籍の附票(世帯全部の省略のないもの)
| 各市区町村役場の窓口 |
④ | 親権者が死亡した旨の記載の有る戸籍謄本 | 各市区町村役場の窓口 |
⑤ | 親族からの申立の場合は親族関係を証する戸籍等 | 各市区町村役場の窓口 |
⑥ | 申立費用
※金額は裁判所により変わる可能性が有ります、事前に確認をしましょう。 | 郵便局等 |
Step2 管轄の家庭裁判所へ申立て
必要書類の収集が終われば、管轄の裁判所に対して申立を行います。
管轄は、未成年者の住民票の所在地の家庭裁判所になります。
申立が受け付けられると裁判所で審理がスタートします。
裁判所の管轄について調べたい方はこちらをクリックして下さい。→(裁判所管轄)
Step3 申立人・後見人候補者と裁判所の面接
申立後、申立人・後見人候補者から詳しい事情を聞くために、家庭裁判所で面接があります。
Step4 本人と裁判所の面接
未成年者本人から詳しい事情や意見を聞くために、家庭裁判所で面接が有ります。
面接の予約は、都市部等で裁判所が忙しいところは中々予約が取りにくい事が有りますので、Step1の書類の収集が有る程度整った段階で早めに予約をしておくのをおススメします。
Step5 未成年者の親族への意向照会
裁判官の判断で、未成年者の親族への意向照会が行われます。
申立の際に、親族全員からの同意書が提出されていると省略される場合も有ります。
この意向照会で、親族から反対の意見が有ると、申立の際に指定した未成年後見人候補者が選ばれない可能性が高くなります。
Step6 選任の審判書が送られてくる
未成年後見人に選ばれた人に対して、選任の審判書という書類が裁判所より届きます。
これを受取ったときから未成年後見人の就任となります。
Step7 財産目録、年間収支予定表の裁判所への提出
選任の審判書を受け取ってから1か月以内に、未成年後見人は裁判所に対して財産目録等、年間収支予定表を提出しなければなりません。
遅れない様に提出しましょう。
2-2 遺言で未成年後見人を指定するパターン
遺言書で未成年後見人を指定する場合の、手続きの流れを解説していきます。
Step1 遺言書で未成年後見人を指定
離婚等で親権者が自分1人で、自分の死後の子の事が心配な場合等、親は遺言書で未成年後見人を指定する事ができます。
遺言書を作成する場合は、公正証書で作成をしましょう。
公正証書で作成をしておけば、紛失のリスクや後の紛争防止のリスクを減らせます。
それに自筆証書遺言で作成している場合は、「検認」という手続きを親権者死亡後に行わないといけなくなり、未成年後見人が就任するまでに時間がかかってしまいます。その間未成年者の親権を行う人が不在になってしまうので、未成年後見人を指定する遺言を作成するときは公正証書遺言で作成しましょう。
公正証書遺言の作成方法などについてはこちらで詳しく解説しています。
Step2 遺言者が死亡したら必要書類を収集して10日以内に市区町村役場に届出
遺言者が死亡したら、未成年後見人に指定された人等届出を行う人が、10日以内に未成年者の住所地の市区町村役場に届出をしなければなりません。まずは届出に必要な書類を収集します。
必要な書類等は以下のものです。
| 必要書類 | 取寄先 |
① | 未成年者の届出書 ※各市町村で書式が変る事が有りますので事前にホームページ等で確認をしましょう。 | 各市町村役場窓口 |
② | 戸籍謄本
※後見人候補者が法人の場合は、法人登記簿謄本(全部事項証明書) | 各市区町村役場の窓口 法人の場合は法務局 |
③ | 公正証書遺言の謄本 ※自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所で検認を受けて検認証明書も必要 | 遺言執行者等遺言を預かっている人又は公証役場 |
2-3 遺言で未成年後見人を指定する場合は監督人を付ける事を検討しよう
遺言で未成年後見人を指定した場合は、家庭裁判所の監督を受けません。
その場合は、裁判所への定期的な事務報告等が必要ないので後見人になる方の負担が減るというメリットは有るのですが、後見人の横領等不正をチェックする機能が働かないので、監督人も遺言で一緒に指定する事をおススメします。
3章 未成年後見人の終了と終了後しなければならないこと
3-1 未成年後見が終了する4つのパターン
未成年後見人の任務が終了するのは以下の4つのパターンです。
① 未成年者が満20歳に達した。
② 未成年者が結婚した。
③ 未成年者が亡くなった。
④ 未成年者を養子とする養子縁組が成立した。
3-2 終了後にしなければならないこと
未成年後見が終了した場合後見人は以下の3つの事を行わなければなりません。
①後見終了後10日以内に後見終了の届出を、未成年者の住所地の市区町村役場にする。
②管理していた財産を未成年者(死亡している場合は相続人に)に引継ぐ。
③未成年後見人は家庭裁判所に対して、後見事務報告書・財産目録等指示を受けたものを後見が終了してから2ヶ月以内に提出する。
4章 未成年後見人の報酬
未成年後見人は報酬を受け取る事ができます。
報酬を受取る為には、未成年後見人が家庭裁判所に報酬付与の審判の申立てをして、それに対して家庭裁判所が金額を決定します。
報酬の額は、財産の額や行った事務の内容等を参考にして決定をされます。
報酬の額は、成年後見の場合と同じ位の金額(約2万円~4万円位)が多いでしょう。
必ずこの審判をしてから報酬を受取りましょう。
まとめ
未成年後見人になるのはかなりの覚悟が必要です。
親と同じ様な、権利も義務も負うことになるからです。
ただ、未成年者が立派な社会人になった際には誰にも味わえない喜びも有るでしょう。
この制度を活用して、親権者が不在という状況の未成年の方が少しでも安心できる環境を手にできればと念じて止みません。
よくあるご質問
未成年後見人は誰がなる?
未成年後見人は、祖父母等の親族を家庭裁判所への申立の際に候補者として申立ててその候補者が選ばれるのが基本です。
ただし、未成年者が多額の財産を持っている場合などは専門家が未成年後見人になるケースもあります。
▶未成年後見人は誰がなるのか詳しくはコチラ未成年後見人は何歳まで必要?
未成年後見人は、未成年者が成人する等、保護が必要なくなる時まで継続して財産管理と身上監護を行います。
▶未成年後見人について詳しくはコチラ未成年後見人とは?
未成年後見人は、父母等の親権者がいない未成年者の為に、親権者に代わって、その未成年者の財産管理と身上監護を行う人です。
▶未成年後見人について詳しくはコチラ