会社を設立するには、法務局で登記申請する必要があります。
法務局とは会社や不動産の情報を登録・管理する役所で、登記申請はその法務局に「こんな内容の会社を作ったので、登録して下さい」という登録手続きです。
登録手続きと言えども、ハンコと運転免許証さえ持って法務局へ行けばできる訳ではありません。
設立登記の申請にあたっては、法律で定められた手順に沿って、数多くの作業を行う必要があります。
経営者として様々な開業準備に追われている中で、会社設立登記の準備や必要書類の収集を行うのは非常に大変です。
これからの事業計画に集中するためにも、法人設立の登記については専門家に依頼するのが良いでしょう。
また、専門家に法人設立登記を依頼すれば、士業や関係者との人脈を築けます。
そこで本記事では、会社を作るためには避けて通れない設立登記の手続きの流れや必要書類、費用についてわかりやすく解説していきます。
なお、会社設立登記は株式会社と合同会社で若干手続きの流れや必要書類が異なりますが、本記事では株式会社の会社設立登記を中心に解説していきます。
目次
1章 会社設立登記とは
まずは、会社設立登記の概要について確認していきましょう。
会社設立登記とは「こんな内容の会社を作ったので、登録して下さい」という登録手続きです。
会社という存在は目に見えないため、国家機関がきちんと実態を把握するために要求される作業といえるでしょう。
特に昨今は、ダミーカンパニーを利用したマネーロンダリングが国際的に横行していることを踏まえて、会社の実態把握の強化が求められています。
そのため、設立登記に要求される作業や必要書類が増加傾向にあります。
1-1 登記は会社設立の絶対要件
会社設立登記は会社設立にあたり絶対要件なので、事務所を構える、会社のホームページを作成するだけでは会社は成立しないので、ご注意ください。
会社設立登記については、法律で以下のように定められています。
会社法第49条:株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。
会社法第579条:持分会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。
なお、会社が成立していないのであれば、会社名義の請求書を切る、会社名義の口座を作る、会社名義で契約するなどが一切できません。
会社の設立登記は法律上だけでなく、営業上も必須の手続といえるでしょう。
1-2 会社設立登記は株式会社と合同会社で手続きが異なる
日本で設立数が多い会社の種類には「株式会社」と「合同会社」があります。
株式会社と合同会社の違いやそれぞれのメリット、デメリットは以下の通りです。
株式会社 | 合同会社 | |
概要 |
|
|
メリット | 銀行から融資を受ける際の審査が有利 | 機関設計が簡略化されているので株式会社より早く安く会社設立可能 |
デメリット | 会社設立登記の工程や費用がかかる | 対外的な信用度が株式会社と比較して劣る |
本記事では、上記のうちより手続きが複雑かつ必要書類の多い株式会社の設立登記手続きを中心に解説していきます。
合同会社ならではの会社設立登記の手続きや必要書類に関しては、3章で詳しく紹介します。
2章 株式会社の設立登記の手続き・必要書類
株式会社の設立登記の手続きの流れを確認していきましょう。
それぞれの流れを詳しく解説していきます。
STEP① 最重要事項を決定しよう
株式会社を作るにあたり、会社の基礎になる最重要事項を決定しましょう。
決定すべき内容は次の10項目です。
- 発起人
- 商号
- 本店所在地
- 事業目的
- 資本金額
- 発行株式数
- 株式の割り当て
- 発行可能株式総数
- 事業年度と決算月
- 役員の任期
それぞれ詳しく解説していきます。
STEP1-1 発起人の決定
発起人(ほっきにん)とは、会社の設立手続きを行い、かつ、会社の最初期株主となる人です。
経営に関わる人というより、あくまでも初期株主の位置づけになります。
発起人は1人でも複数人でも問題ありませんが、発起人は必ず株式を取得しなければなりません。
会社方針の決定は、株式数をベースにした多数決により決められます。
そのため、もし自分以外に発起人を募る場合は、お金があり、かつ信頼できる人を選びましょう。
もちろん、配偶者・親子など親族同士で発起人となってもOKです。
STEP1-2 商号の決定
商号(しょうごう)とは、簡単に言うと会社名です。
同一地域に同一商号の会社があると紛らわしいので、ネットで検索をかけて調査しておきましょう。
商号に使用できる文字は以下の通りです。
- 日本語
- ローマ字(A、a)
- アラビア数字(1,2)
- &(アンド)や . (ピリオド)といった各種記号
ギリシャ文字(β、γ)やローマ数字(Ⅱ、Ⅲ)、ハングル文字、中国の簡体字は使用不可なので、ご注意ください。
STEP1-3 本店所在地の決定
続いて、会社の本店をどこに据えるかを決定しましょう。
自宅マンションを本店所在地として定めることもできますが、マンションの利用規約に違反しないかを確認しておきましょう。
「マンション名を会社所在地に入れるのは格好悪い!」という場合は、マンション名を抜いて「一丁目2番3-401号」のように定められます。
ただし、マンション名まで記載しないと郵便物が届かない場合は、きちんとマンション名まで含めて本店所在地を定めましょう。
本店所在地に関しては、法律で以下のように定められています。
会社法4条:会社の住所は、その本店の所在地にあるものとする。
STEP1-4 会社の事業目的の決定
建前上、会社をはじめとした各種法人は事業目的として定めた事業しか行えないと法律で定められています。
具体的には、以下のように法律で決められています。
民法第34条:法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う
そのため、会社設立登記をするにあたり、会社の事業の方向性をあらかじめ定めておかなければなりません。
例えば、不動産業をやりつつ、不動産投資のセミナー開催事業を行おうと考えている場合には、事業内容は以下のように定めておくと良いでしょう。
- 不動産の売買、賃貸、仲介、管理業
- 各種イベント・セミナーの企画、運営
- 前記各号に附帯関連する一切の業務
上記のように、事業内容は細かく定める必要はなく「こんな感じのことをやりたい」とざっくりとした内容で十分です。
末尾に「前記各号に附帯関連する一切の業務」と入れておけば、細かなところは全てカバーされます。
ただし、行政庁から事業の許認可を取得する際には、事業ごとに必ず要求される文言が存在しています。
許認可の取得が必要な事業を行う予定であれば、あらかじめ管轄の公共機関に問い合わせて、事業目的の文言をどのようにすれば不都合がないか必ず確認しましょう。
STEP1-5 資本金の額の決定
会社と個人のお金は厳密に分けておく必要があり、会社のお金に関しては「資本金」と呼ばれます。
会社設立登記をする際には、初期費用として会社にどれだけお金を入れるかを決定します。
目安として、当面の運転資金を資本金として計上すれば問題ないでしょう。
なお、資本金には上限金額や最低金額は定められていないので、理論上は資本金1円の株式会社も設立可能です。
ただし、会社の資本金額は会社の内容を証明する「履歴事項証明書(詳しくは4章)」に記載される情報であり社外に公開されます。
そのため、少なすぎる資本金を定めると信用能力に疑問を持たれる恐れがあります。
ちなみに筆者の経験上、最小の資本金額は5,000円です。
なお、資本金額が1,000万円未満かつ売上が1,000万円未満の会社は消費税の面で優遇措置を受けられます。
いきなり会社に1000万円も出資できる人は稀だとは思いますが、金額を決める際の1つのポイントになります。
STEP1-6 発行する株式の数の決定
資本金の額を定めたら、次に発行する株式の数を決定しましょう。
資本金額÷株式数で1株当たりの価格が分かりますが、この価格を割り切れるように設定すると良いので、双方の数字を微調整しましょう。
例えば、資本金30万円で株式数30株の場合には、1株あたりの金額は1万円です。
STEP1-7 株式の割当の決定
発起人(出資者)が複数人いる場合、先ほど定めた株式を、誰が何株引き受けるかを決定しましょう。
各自が引き受ける株式の数に応じて、各自の出資額が決まります。
例えば、資本金が30万円で株式数30株の場合でAさんが20万円、Bさんが10万円出資した場合の引き受け株式数は下記の通りです。
- Aさん:引受株式数20株
- Bさん:引受株式数10株
もちろん、1人で会社を作る人は自分で全株式を引き受け資本金全額を出資します。
STEP1-8 発行可能株式総数(株式数の上限枠)の決定
発行可能株式総数とは、会社が発行できる株式数の上限枠です。
株式はこの上限の範囲内で増減可能です。
発行可能株式総数を設定する際には、先ほど定めた株式数より余裕を持たましょう。
例えば株式数30株に対して上限枠を50株に設定すると、残りの株式枠が少ない状態です。
この状況で株式の追加発行(=増資)を検討しても、残り20株分の増資しかできません。
20株以上の増資をしたい場合には、上限枠を変更する手続きが必要になり余計な手間がかかってしまいます。
そのため、STEP1-6で定めた株式数より多く、かつ倍数になるように設定するのがおすすめです。
目安としては、株式数30株に対して、発行可能株式総数300株程度にしておくと安心です。
STEP1-9 決算月・通常の事業年度・最初の事業年度の決定
1年間の会社の事業年度をどこで区切るか、つまり決算月を設定しましょう。
一般的に、毎年4月1日から翌年3月末日までの事業年度で、3月を決算月に設定するイメージがありますが、自由に決定可能です。
例えば、「3月は忙しいので9月を決算月にしたい」場合には、「毎年10月1日から翌年9月末日」の事業年度を設定すればOKです。
なお、仮に「毎年10月1日から翌年9月末日」の事業年度を定めたとしても、10月1日にぴったり会社を設立できるとは限りません。
例えば、4月10日に会社を設立したとすれば、次のように最初の事業年度だけ1年に満たない短期の事業年度となります。
- 4月10日~同年9月末日:第1期(最初の事業年度)
- 10月1日~翌年9月末日:第2期(通常の事業年度)
なお、上記で解説した第1期と第2期は、資本金が1000万円未満かつ売上が1000万円未満であれば消費税免除の優遇措置を受けられます。
それ故、優遇措置を受けられる日数を最大化しようと思えば、設立予定日から約1年後を決算月に設定すれば、優遇措置を目いっぱい受けられるので節税効果が高くなります。
具体例と共に確認してみましょう。
【消費税の優遇措置の期限を最大化した例】
4月10日に設立予定なら毎年3月末日を決算月と定める
- 4月10日から翌年3月末日までの、ほぼ1年近い第1期事業年度
- 毎年4月1日~翌年3月末日まで第2期事業年度
上記のケースでは、ほぼ2年近い期間、消費税の優遇措置を受けられます。
【消費税の優遇措置の期限が短くなった例】
4月10日に設立予定にもかかわらず毎年9月末日を決算月と定める
- 4月10日から毎年9月末日までの、半年間に満たない第1期事業年度
- 10月1日から翌年9月末日までの第2期事業年度
上記のケースでは、優遇措置を受けることができる期間は1年半にも満たなくなってしまいます。
STEP1-10 役員(取締役)の任期の決定
取締役には、原則2年間の任期が存在しており、任期が満了するたびに再選し直し、役員変更の登記申請が必要です。
しかし、この再選手続きは、自分で登記申請を行ったとしても1万円は絶対に費用がかかりますし、当然手間もかかります。
そこで、取締役の任期は10年を上限に引き伸ばして設定することが認められています。
取締役の任期を10年に設定しておけば、何度も再選し直さなくてすみます。
ただし、10年の任期で取締役に選任した人物と後々方針が合わず対立したときや途中解任した際の違約金のリスクを考えれば、一人経営・家族経営の場合を除き、長期の任期の導入は慎重に検討しましょう。
なお、役員変更の登記申請を行っていないと、みなし解散の通知が届き、放置していると強制的に解散登記が行われる恐れもありますので、ご注意ください。
STEP② 定款を作ろう
定款とは、会社の設計図・取扱い説明書のようなものです。
STEP①で決めた内容をもとに、定款を作成していきましょう。
定款のサンプルをご用意しましたので、赤字の箇所をSTEP1の内容に従って変更すれば、定款の出来上がりです。
STEP③ 公証役場で定款をチェックしてもらおう
作成した定款は、公証役場(こうしょうやくば)で認証(にんしょう)してもらうことで成立し、効力を発揮します。
ただし、いきなり定款を公証役場に持って行くのではなく、事前に公証役場と打ち合わせを行いましょう。
なお、公証役場との打ち合わせ時点で「定款の案」と「発起人全員の印鑑証明書(有効期限は3ヶ月以内)」が必要になります。
また、公証役場はどこでも良いわけではなく、本店所在地の都道府県内にある公証役場に依頼しましょう。
公証役場に打ち合わせを依頼する流れは、下記の通りです。
- 公証役場に株式会社を作りたいので定款認証をお願いしたい、と電話をする
- 定款と印鑑証明書をメール・FAXなどで送り、チェックを受ける
- 加筆修正など、内容の調整
- 公証役場での調印日を調整
なお、公証役場での調印には発起人全員が立ち会う必要があるため、全員の予定を確認してから調印日の予約を取りましょう。
STEP④ 定款を認証してもらおう
定款認証の当日を迎えたら、持ち物を確認しておきましょう。
STEP3の打合せの段階で持ち物については各公証役場から指示があると思いますが、一般的に次の持ち物が指定されます。
※印刷した定款には、全ページに渡って契印が必要となります。
準備が万端整っていれば、当日はただのセレモニーです。
手続き完了後、公証人の認証マークが入った定款の謄本をもらえますので、大切に保管しておきましょう。
STEP⑤ 資本金を振り込もう
定款作成が終われば、次に資本金の振込を行いましょう。
振込手順は、以下の通りです。
※発起人が複数いる場合は、誰か1人の口座を代表口座として、そこにお金を集めるのが一般的です。
STEP⑥ 会社役員を選ぼう
続いて、会社の取締役と代表取締役を選びましょう。
役員の選定は、発起人が持つ株式数を議決権と見立てて、議決権の過半数により決定します。
もちろん、発起人が一人だけの場合は、自分一人で自由に選定できます。
まずは取締役ですが、経験上では発起人となった人がそのまま取締役に就任するケースが多いです。
しかし、発起人はあくまでも初期株主の立場なので、強制的に取締役に就任させられるわけではありませんので、発起人ではあるものの取締役に就任しない人も当然います。
また、発起人ではない誰か別の人を招聘して取締役に任命することも可能です。
次に代表取締役の選定ですが、誰が代表取締役になるかは以下のルールに従って決定します。
※取締役が一人だけの場合は、その人が当然代表取締役になります。
なお、代表取締役は文字通り会社の代表者およびリーダーであり、会社を代表し、重要な契約や方針決定を行います。
リーダーが複数人いることは、会社の分裂を招きかねない危険要素です。
そのため、代表取締役についてはできれば1人だけを選ぶようにしましょう。
ところで世間では「常務取締役」「専務取締役」「本部長」などの役職が存在していますが、あくまでも社内の肩書であって、会社法上定められた「役員」ではありません。
よって、会社設立登記の手続き段階でそこまで詳細な内部体制までも定める必要はありません。
STEP⑦ 必要書類を作成しよう
いよいよ登記手続きに向けた各種書類の作成に入ります。
これまでの決定事項や集めた資料に基づいて作成していきましょう。
作成する書類は以下の6つです。
- 印鑑届出書
- 印鑑カード交付申請書
- 発起人決定書
- 就任承諾書(取締役分)
- 就任承諾書(代表取締役分)
- 資本金払込証明書
それぞれの書類の作成方法を詳しく解説していきます。
STEP7-1 印鑑届出書
印鑑届出書とは、会社実印の届出書です。
以下の書類に必要事項を埋めて作成していきます。
太枠線内に代表取締役が必要事項(会社法人等番号は除く)を記載の上、左上(注1)の箇所に会社実印を、右側(注3)の箇所に個人実印を押印しましょう。
この用紙に押して届出た印影が、会社の印鑑証明書に登録されます。
なので、左上(注1)の箇所に会社実印を押す際は、はっきりと・濃く・鮮明に押しましょう。
また、印鑑提出者としてこの用紙を提出した人の名前が、印鑑証明書に記載されます。
よって、代表取締役が複数人いる場合、誰の名前で印鑑を登録するかはじっくり話し合って決めましょう。
STEP7-2 印鑑カード交付申請書
会社の印鑑証明書を発行してもらう際に使う、印鑑カードの交付申請書です。
STEP7-1の印鑑届出書と同じ要領で、太枠線内に必要事項(会社法人等番号は除く)を記載の上、左上(注1)の箇所に会社実印を押しましょう。
STEP7-3 発起人決定書
次に役員の選定を証明するために「発起人決定書」を作成します。
サンプルの様に、発起人・取締役・代表取締役が全員同一の人物であっても作成が必要です。
作成したら、発起人全員が個人実印で押印しましょう。
STEP7-4 就任承諾書(取締役分)
続いて、発起人の決定により取締役に選定された人の就任承諾書を作成します。
作成後、取締役の個人実印で押印してください。
STEP7-5 就任承諾書(代表取締役分)
STEP7-4と同じように、今度は代表取締役についての就任承諾書を作成します。
同じように、代表取締役の個人の実印で押印してください。
STEP7-6 資本金払込証明書
STEP⑤にて用意した、資本金の入金記録のある通帳を使い、資本金払込証明書を作成しましょう。
まずは、証明書を作成し、その後手順に従って通帳のコピー3種類を用意します。
仕上げにホッチキスでまとめて、会社実印で契印しましょう。
STEP⑧ 設立登記の申請書を作成しよう
いよいよ仕上げに、設立登記の申請書を作成します。
プロ顔負けの申請書を作成し、法務局の審査を一発で通過を目指しましょう。
ポイントとなる部分をそれぞれ詳しく解説していきます。
① 商号とフリガナ
会社の名前と、そのフリガナを記載しましょう。
「株式会社」には振らなくてOKです。
② 本店
本店所在地の住所を記載しましょう。
③ 登記の事由
「平成〇年〇月〇日発起設立の手続終了」と記載しましょう。
日付は会社設立に必要な手続きの一切が終わった日です。
この日付から8週間が設立登記の申請期限になります。
④ 登記すべき事項
「」内のそれぞれの項目について、定款から内容を抜きだし転写しましょう。
なお、末尾の「登記記録に関する事項」設立はいじらず、そのままで問題ありません。
⑤ 課税標準金額・登録免許税
課税標準金額は、資本金の額から1,000円未満の金額を切り捨てた金額を記載します。
例えば、資本金の額が30万3,500円であれば、課税標準金額は30万3,000円となります。
登録免許税については、課税標準金額に0.7%をかけた金額が15万円未満であれば、一律15万円の登録免許税となります。
ちなみに、計算後の金額が15万円を超えるためには、課税標準金額、つまり資本金が2,140万円を超えなければなりません。
よって、資本金額が2,140万円を下回る場合は最初から計算不要で15万円と記載しておきましょう。
⑥ 添付書類
登記申請に際して申請書と一緒に提出する書類を記載します。
種類としては以下の5種類ですが、印鑑証明書については取締役に就任した人全員分のものを提出します。就任承諾書も同様に、取締役・代表取締役に就任した人全員分のものを提出します。
よって、就任承諾書と印鑑証明書は役員の人数によって変化する点にご注意ください。
- 定款
- 払込みがあったことを証する書面
- 発起人決定書
- 就任の承諾を証する書面
- 印鑑証明書
また、添付する書類を返してもらいたい場合は「添付書類の原本還付を希望する」と申請書に記載しておきましょう。
さらに、郵送による返却を希望する場合は、その旨の記載も必要です。
【原本還付の準備】
原本還付の準備の流れは、以下の通りです。
- 添付書類のコピーを用意する
- 全ページをホッチキスで留める
- 先頭ページの余白に、原本に相違ない旨・日付・氏名を記載し、個人実印で押印する(イラスト左上)
- 全ページに渡って、個人実印で契印する
⑦ 管轄法務局
慣例上のことになりますが、提出先の法務局を記載しましょう。
管轄法務局は、本店の所在地を管轄する法務局です。
「〇〇市 商業登記 管轄」とインターネットで検索すれば、管轄の法務局が分かります。
違う管轄の法務局に提出してしまうと問答無用で却下されてしまうので、ご注意ください。
⑧ 申請人の記載
申請人として会社名&本店所在地と、代表取締役の氏名&住所を記載します。
そして、会社名の横のあたりに、会社実印を押しましょう。
捨印として2ヶ所押印しておくと、些細なミスであれば法務局側で申請書を修正してくれます。
その他、書類作成時に注意しておきたいことは以下の通りです。
- 申請書のページが複数に渡る場合、ホッチキスで留めて、会社実印で契印する
- 申請の日付は受付日に法務局側が記載してくれるので空欄のままで問題ありません
- 申請書の余白に登録免許税分の収入印紙を貼りましょう。ただし、消印はしてはいけません
なお、収入印紙は郵便局窓口で購入するのがおすすめです。
コンビニでも売っていますが、200円程度の低額印紙しか取り扱っていないため、恐ろしい枚数を貼りつけることになってしまします。
STEP⑨ 法務局へ申請しよう
書類の準備が万端整ったら、法務局に申請書を提出しましょう。
提出方法や必要書類は、以下の通りです。
提出期限 | 申請書に設立手続き完了日として記載した日から2週間以内 |
提出先 | 本店の所在地を管轄する法務局 |
提出方法 | 窓口持参もしくは郵送 |
必要書類 |
|
提出方法は、郵送の方が手間がかからないのでおすすめです。
ただし、郵送内容が内容だけに、必ず書留か赤色レターパックを使って送りましょう。
なお、会社の設立日として記録される日付は、申請書が受付された日になります。
なので、設立日にこだわりがある場合は窓口へ申請書を持参し、狙った日に確実に受付をしてもらいましょう。
3章 合同会社の設立登記の手続き・必要書類
合同会社の設立登記は、株式会社の設立登記と比較して手続きが簡略化されています。
手続きの流れや用意するものは下記の通りです。
本記事では、株式会社の設立登記と重複する部分の解説は割愛します。
株式会社の設立登記と異なる点は、主に以下の通りです。
- 株式が発行されないので株式関係の内容を考える必要がない
- 「社員」が株主兼取締役の役割を果たす
- 「社員」には任期の概念がない
- 公証人による定款の認証が不要
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 株式が発行されないので株式関係の内容を考える必要がない
合同会社は株式会社と異なり、株式を発行しないので、会社設立時に以下の情報を決定する必要がありません。
- 発起人(かわりに社員を決定する)
- 発行株式数
- 株式の割り当て
- 発行可能株式総数
3-2 「社員」が株主兼取締役の役割を果たす
なお、合同会社に株主や取締役の区別はなく、オーナーと経営者双方の性質を兼ね備える「社員」が会社に出資し自ら経営も行います。
会社の運営方針やの決定や代表社員の選定は社員の多数決により決定されます。
3-3 「社員」には任期の概念がない
合同会社の社員には、株式会社の役員と違って任期の概念がないので、設立登記時には社員の任期を設定する必要がありません。
なお、合同会社では社員の任期がないので、経営をしていく中で社員同士で対立が起こると非常に大変です。
そのため、設立時に誰を社員にするかは慎重に検討しましょう。
3-4 公証人による定款の認証が不要
合同会社の設立登記では、株式会社の設立登記と異なり公証人による定款の認証が不要です。
そのため、公証役場で打ち合わせや手続きを行う必要はありませんし、定款に貼る収入印紙や定款認証費用などもかかりません。
4章 会社設立登記にかかる費用
会社設立登記には登録免許税や必要書類の作成費用などがかかります。
株式会社と合同会社の設立登記の費用相場を確認していきましょう。
4-1 株式会社の設立登記にかかる費用
株式会社の設立登記は、最低でも25万円程度かかります。
費用の内訳と目安は、以下の通りです。
会社設立登記時にかかる登録免許税は資本金が2,140万円を超えなければ一律15万円です。
また、会社設立登記は自分で行うこともできますが、司法書士などの専門家に依頼できます。
専門家に依頼した場合、報酬相場は5~10万円程度なので、時間や労力をかけずに会社設立登記をすませたい人はご検討ください。
4-2 合同会社の設立登記にかかる費用
合同会社の設立登記にかかる費用は、自分で行ったとしても最低6万円程度はかかります。
司法書士などの専門家に手続きを依頼した場合には、追加で5~7万円前後の報酬がかかります。
なお、登録免許税の金額は設立当初の資本金が857万円を超えない場合には、一律6万円です。
ここまで、会社設立登記の手順や必要書類、費用について解説してきました。
ただし、会社設立登記は法務局に書類を提出して完了ではなく、登記完了後も行わなければならないことがあります。
次の章では、会社設立登記手続き完了後にすべきことを紹介していきます。
5章 会社設立登記の完了後にすべきこと
会社設立登記が完了したら、返送された書類の確認や法務局で設立した会社の履歴事項証明書などの取得が必要です。
具体的には、以下を行っておきましょう。
- 登記完了後に返送される書類を確認する
- 会社の履歴事項証明書を取得する
- 会社実印の印鑑証明書を取得する
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 登記完了後返ってくる書類を確認する
登記が完了した場合、次の2種類の書類が返却されるので、確認しておきましょう。
- 添付書類の原本
- 会社実印の印鑑カード
返却方法としては、登記の申請書に郵送希望の旨を記載し、申請書の提出時に返信用封筒を同封しておけば、郵送返却してもらえます。
5-2 会社の履歴事項証明書を取得する
会社設立登記が完了し印鑑カードを入手できたら、法務局にて会社の履歴事項証明書を取得しましょう。
履歴事項証明書とは、会社役員・資本金・事業目的など、会社内容の証明書です。
人によっては「登記簿謄本」「商業登記簿」と呼びますが、すべてこの履歴事項証明書を指しています。
履歴事項証明書は、法人口座の開設や法人名義のテナント契約、営業許可申請などで必要になります。
使用頻度が高い書類なので、1通のみでなく予備として2~3通取得しておくと良いでしょう。
履歴事項証明書の取得方法は、下記の通りです。
申請する人 | 誰でも可能 |
申請先 | 法務局(全国どこでもOK) |
費用 |
|
必要書類 |
|
5-3 会社実印の印鑑証明書を取得する
会社設立登記が完了したら、履歴事項証明書だけでなく会社実印の印鑑証明書も取得しておきましょう。
印鑑証明書も1通のみでなく2~3通発行してもらうと安心です。
上記のように、印鑑証明書には代表取締役・代表社員の名前が記載されます。
代表取締役や代表社員として記載される名前は、印鑑届出書に届出人に記載した名前が載ります。
なので、代表者が複数人いる会社では、誰が印鑑届出書を提出するかきちんと話し合って決める必要があります。
印鑑証明書の取得方法は、下記の通りです。
申請できる人 |
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申請先 | 法務局(全国どこでもOK) |
費用 |
|
必要書類 |
|
6章 設立登記を専門家に依頼すべきケース
本記事をお読みになった皆様なら、基本的な会社設立登記であれば、自分自身で行えるはずです。
しかし、本章ではあえて、登記手続きを専門家(司法書士)に依頼した方が良いケースをご紹介します。
6-1 時間を有効活用したい場合
起業を検討している方にとっては常識かも知れませんが、ビジネスで重要なのは「時間の使い方」です。
無駄な時間を減らし、注ぐべきポイントに時間を注ぎ込む。このメリハリは鉄則といえるでしょう。
そして設立登記の手続きとは、起業家のあなた自身が時間をかけてすべきことでしょうか?
「いやちがう、時間を使うべきポイントは他にもっとある!」と思った人は、会社設立登記は専門家に任せて自分の時間を本当にやるべきことに活用しましょう。
6-2 発起人や役員に外国人を迎えたい場合
- 日本での銀行口座を持っていないが、資本金の振込はどうやるの?
- 実印で押印せよと言われても、印鑑など当然持っていないがどうすればいいの?
- 就任承諾書を英文で貰ったのだけどどうしたらいいの?
このような相談を時々お受けしますが、一般の方がこのケースの手続きを自分でやり遂げるのはほぼ不可能です。
そのため、発起人や役員に外国の方がいる場合には、専門家への依頼を強くおすすめします。
まとめ
会社を設立する際には、法務局で設立登記を行う必要があります。
設立登記がすんでいない会社は法律上、会社として認められないからです。
本記事では、日本で設立できる会社の中でも設立数が特に多い株式会社と合同会社の設立登記の流れや必要書類を解説しました。
必要書類の作成方法などもわかりやすく解説したので、基本的な会社設立登記であれば自分で出来ると感じた方も多いのではないでしょうか。
ただ、会社設立登記は司法書士に依頼した場合でも5~10万円程度の費用ですみます。
会社設立の準備や様々な経営判断に追われていて忙しい経営者自らが会社設立登記の準備をする必要性は薄いと感じる場合もあるでしょう。
会社設立登記にかかる手間や時間を節約したい場合には、司法書士などの専門家に依頼することもご検討ください。
グリーン司法書士法人では、会社設立登記に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
設立登記の申請書の「登記の事由」に記載する日付はいつ?
会社設立に必要な手続きの一切が終わった日を記載します。
▶設立登記について詳しくはコチラ