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第9回:共有名義にするとどうなる? 〜「とりあえず共有」の落とし穴〜
前回は、相続登記の義務化について解説しました。
今回は、不動産を相続したときに、よく選ばれる方法でありながら、
実は注意が必要な「共有名義」についてお話しします。
共有名義とは何か?
共有名義とは、ひとつの不動産を複数人で持つ状態のことです。
たとえば、
- 長男2分の1
- 二男2分の1
というように、持分(割合)を決めて所有する形です。
遺産分割協議で、
「平等に分けたいから、とりあえず半分ずつにしよう」
と考えて共有にするケースは少なくありません。

共有名義は「公平」に見えますが、
将来のことまで考えると慎重な判断が必要です。
共有名義のメリット
まずはメリットから見てみましょう。
- 公平感がある
- 現金化しなくても分けられる
- 話し合いがまとまりやすい場合がある
特に、不動産を売却せずに残したい場合、共有は一つの選択肢になります。
しかし、ここに落とし穴があります
共有名義の最大の特徴は、
「単独では自由に処分できない」
という点です。
売却する場合
不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。
一人でも反対すると、売却はできません。
賃貸に出す場合
原則として、共有者の過半数の同意が必要になります。
建物を建て替える場合
これも、原則として共有者全員の同意が必要です。

「将来売ればいい」と考えて共有にしたものの、
いざ売ろうとしたら意見が合わない、
というご相談は少なくありません。
世代が進むとどうなる?
共有名義のまま時間が経ち、共有者の一人が亡くなるとどうなるでしょうか。
その持分は、さらに次の相続人へ引き継がれます。
つまり、
2人共有 → その子どもたちへ分散 → さらにその次の世代へ
という形で、持分が細かく分かれていきます。
結果として、
- 共有者が10人以上になる
- 連絡が取れない人がいる
- 海外在住者がいる
といった事態も起こります。

共有者が増えると、
ちょっとした決定にも全員の同意が必要になります。
これが大きな負担になることがあります。
共有者同士のトラブル
共有名義では、次のようなトラブルも起こり得ます。
- 一人だけが住み続けている
- 固定資産税を誰が払うかでもめる
- 修繕費を出さない人がいる
法律上は持分に応じた負担が原則ですが、実際には感情的な問題が絡むことが多いのです。

不動産は“モノ”ですが、そこに家族の思い出がある場合、
問題は法律だけでは解決できません。
共有を解消する方法は?
共有を解消するには、
- 売却して代金を分ける
- 一人が他の共有者の持分を買い取る
- 共有物分割請求を行う
などの方法があります。
しかし、いずれも話し合いが前提になります。

共有物分割請求は裁判手続きになることもあり、
時間と費用がかかります。
共有にする前に、将来まで考えることが大切です。
共有にする前に考えるべきこと
不動産を共有にする場合、次の点を確認しておきましょう。
- 将来売却する可能性はあるか
- 相続人同士の関係性は安定しているか
- 次の世代まで見据えた設計か
「今まとまる」だけでなく、「将来も困らないか」を考えることが重要です。

共有は絶対に悪いわけではありません。
ただし、目的と将来設計がはっきりしていることが大切です。
まとめ
今回のポイントは、
- 共有名義は公平に見えるが慎重な判断が必要
- 売却や活用には全員の同意が必要
- 世代が進むと複雑化する
- 解消には時間と労力がかかる
という点です。
不動産の相続は、目先の解決だけでなく、将来を見据えた判断が重要です。

「とりあえず共有」は避け、
一度専門家と整理してから決めることをおすすめします。
迷ったら、お気軽にご相談くださいね。
次回予告
第10回:空き家を相続したらどうする?
〜放置リスクと対処法〜






