固定資産税とは、その年の1月1日時点に不動産を所有している人が払う税金です。
したがって故人の不動産を受け継いだ相続人は、相続不動産を利用していなくても固定資産税の納税義務が発生します。
また相続した空き家を放置していて状態が悪くなり、管理不全空き家もしくは特定空き家に指定されると、翌年から固定資産税が6倍になってしまいます。
空き家の固定資産税が6倍になるのを防ぐには、行政指導を受け入れ空き家の管理を行うことや使用予定がない空き家を売却してしまうのが有効です。
本記事では、空き家の固定資産税が6倍になるのはいつからか、固定資産税が6倍になる空き家の種類を解説します。
空き家の活用や処分についてお悩みの人は、下記の記事もご参考にしてください。
目次
1章 固定資産税が6倍になる空き家が増えるのはいつから?
固定資産税が6倍になる空き家が増えるのは、2024年以降と予想されています。
2023年12月からは特定空き家だけでなく、管理不全空き家も固定資産税が6倍になると法律で決められたからです。
特定空き家と管理不全空き家はどちらも管理が行き届いていない空き家であり、それぞれの概要は下記の通りです。
特定空き家 | 放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある空き家 |
管理不全空き家 | このまま放っておくと特定空き家になりそうな物件 |
なお、2023年12月までは固定資産税が6倍になる空き家は特定空き家のみでした。
しかし、空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案が閣議決定され、2023年12月13日からは固定資産税が増額される空き家に管理不全空き家も加わります。
したがって、2023年12月以降は特定空き家だけでなく、管理不全空き家に指定されても翌年から固定資産税が最大6倍になってしまいます。
国土交通省の調査によると、日本にある特定空き家および管理不全空き家の数は下記の通りです。
- 特定空き家:11,887戸
- 管理不全空き家:77,921戸
このことからも、2024年以降は固定資産税が6倍になってしまう空き家が多いと予測できます。
2章 空き家の固定資産税が6倍になる理由
特定空き家および管理不全空き家の固定資産税が最大6倍になってしまうのは、固定資産税の住宅用地の特例が適用されなくなるからです。
固定資産税は「固定資産税評価額×1.4%」で計算できますが、住宅用地の場合は最大6分の1まで税金が減額されます。
空き家であっても住宅用地の特例は適用されますが、特定空き家および管理不全空き家は特例の適用対象外となるため、固定資産税が最大6倍になる恐れがあります。
3章 固定資産税が6倍になる空き家とは
従来は特定空き家に指定されると、翌年から固定資産税が6倍になっていました。
そして、2023年12月以降は管理不全空き家に指定された場合も、翌年から固定資産税が6倍になります。
特定空き家および管理不全空き家と判定される条件を詳しく見ていきましょう。
3-1 特定空き家
特定空き家とは、適切な管理が行われていなく防災や衛生、景観面で周辺住民の生活環境に悪影響を及ぼす可能性がある空き家です。
下記の要件を満たすと特定空き家に指定される恐れがあります。
- そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
- 周辺の生活環境の保全(保安)を図るために放置することが不適切である状態
3-2 【法改正後】管理不全空き家
2023年12月以降は、管理不全空き家として指定された場合も翌年から固定資産税が6倍になります。
管理不全空き家とは、特定空き家に指定される可能性のある空き家です。
管理不全空き家の具体的基準に関しては明確にされておらず、国が定めたガイドラインに従って各自治体が決定することとされています。
例えば、東京都新宿区では、管理不全空き家の基準を下記のように定めています。
次のいずれかの状態にある区内の空家をいう。(空き家等条例)
・老朽化のために倒壊し、若しくは建築材等を飛散させるおそれがある状態
・ 不特定の者が侵入して火災を発生させ、若しくは犯罪を起こすおそれがある状態
参照元:新宿区空き家等対策計画
相続した空き家が管理不全空き家に該当するか確認したい場合は、空き家の住所地を管轄する自治体に問い合わせて基準を確認するのが良いでしょう。
もしくは「管理不全空き家 基準 〇〇市」などでインターネット検索をしてみるのもおすすめです。
4章 空き家の固定資産税が6倍になるのを避ける方法
相続した空き家の固定資産税が6倍にならないようにするには、特定空き家もしくは管理不全空き家として指定されないようにするのが大切です。
また、田舎にある空き家など相続人が使用する予定がない場合は売却や活用を検討しても良いでしょう。
空き家の固定資産税が6倍になるのを避けるには、下記の方法が有効です。
- 行政の指示に従い適切な管理をする
- 空き家を売却・活用する
- 空き家を解体し更地にして売却・活用する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
4-1 行政の指示に従い適切な管理をする
行政から管理不全空き家の指定を受けたとしても、助言・指導の段階であれば行政の指示に従い修繕などを行えば指定を解除してもらえます。
指定が解除されれば、固定資産税が6倍になることもありません。
4-2 空き家を売却・活用する
相続した空き家を今後も自分で使用する予定がないのであれば、売却や活用も検討しましょう。
空き家を売却すれば管理も不要になりますし、固定資産税を払わなくて良くなります。
また空き家をリフォームし賃貸として貸し出せば、賃貸収入を得られるだけでなくリフォーム費用や固定資産税も経費として申告できます。
ただし空き家の状態や立地によっては不動産取引や賃貸需要がない可能性もあるため、事前に不動産会社に相談してみるのが良いでしょう。
相続した空き家の売却や活用をする際には、事前に亡くなった人から相続人へ空き家の名義変更手続きをすませておく必要があります。
空き家の名義変更手続きは法務局にて登記申請を行います。
なお、相続登記は2024年4月から義務化され、相続発生から3年以内に相続登記をしない場合には10万円以下の過料が科される恐れがあります。
なお、相続登記の義務化は過去に発生した相続においても適用されます。
そのため、まだ相続登記がおすみでない土地をお持ちの人は早めに手続きをすませましょう。
相続登記は自分でも行えますが、司法書士に依頼すれば数万円程度で代行可能です。
グリーン司法書士法人でも相続登記に関する相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。
4-3 空き家を解体し更地にして売却・活用する
相続した空き家の築年数が古い場合は空き家と土地の売却や活用を行うのではなく、更地の売却や活用の方がうまくいく可能性があります。
空き家を解体して更地にした状態であれば、使い勝手が良くなり買い手や借主が見つかりやすくなるケースもあるからです。
ただし空き家の解体費用がかかりますし、空き家を解体すると固定資産税の住宅用地の特例を適用できなくなる点には注意しなければなりません。
空き家の解体に関しても自己判断で行うのではなく、信頼できる不動産会社に相談し売却や活用の計画を立てるのが良いでしょう。
まとめ
2023年12月からは特定空き家だけでなく管理不全空き家に指定された場合も、固定資産税が最大6倍になってしまいます。
固定資産税が6倍になるのを防ぐには管理不全空き家として指定されたときに助言や指導の段階で行政の指示通りに修繕を行いましょう。
また、将来的に相続した空き家を自分が使用しないのであれば、売却や活用も検討しましょう。
売却すれば管理の手間や固定資産税の納税義務もなくなりますし、活用すれば賃貸収入などが得られる可能性があります。
なお、相続した不動産を売却、活用する際には、相続登記を事前にすませておかなければなりません。
相続登記は自分で行うこともできますが、司法書士に数万円程度で依頼可能です。
グリーン司法書士法人では、相続登記に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
空き家の固定資産税が6倍になるのはいつから?
2023年12月13日に「改正空き家対策推進特措法」が施行され、固定資産税が6倍になる空き家の対象が増えます。