相続回復請求権とは?行使できる人や方法・時効について解説

相続回復請求権とは?行使できる人や方法・時効について解説
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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 4

相続回復請求権とは、相続人以外の人物が遺産を管理、占有したときに、本来の相続人が行使できる権利です。
相続回復請求権を行使すれば、本来の相続人のもとに相続財産を返還するように要求できます。

とはいえ、相続回復請求権を行使できるケースでは、相続財産を占有している人物が自分の正当性を主張し、当事者間の話し合いでは解決が難しい場合も多いです。
当事者間の話し合いで相続財産の返還がなされないときには、相続回復請求権の民事訴訟を起こし、本来の相続人が相続権を侵害されている事実を証明する必要があります。

相続回復請求権に関するトラブルは長期化しやすく、相続人が自分で解決するのは難しい場合も多いです。
必要に応じて、司法書士や弁護士といった相続に関する専門家への相談もご検討ください。

本記事では相続回復請求権とは何か、行使する方法や時効について解説していきます。


1章 相続回復請求権とは?

相続回復請求権とは、相続人でないにもかかわらず自分が相続人であると称して、本来の相続人の権利を侵害しているときに行使できる権利です。
例えば、相続人でない人や相続欠格事由に該当し相続人になれない人が、相続財産を管理、占有している場合には、本来の相続人が相続回復請求権を行使できます。
相続回復請求権を行使すれば、自分が本来の相続人であると主張して、相続財産を返還するよう請求できます。

なお、相続回復請求権とよく似た権利に遺留分侵害額請求権があります。
2つの違いをより詳しく確認していきましょう。

1-1 相続回復請求権と遺留分侵害額請求権の違い

遺留分侵害額請求権とは、遺留分より少ない財産しか相続できなかった場合に主張できる権利です。
遺留分とは、亡くなった方の配偶者や親、子供などに認められている遺産を最低限度受けとれる権利です。
遺留分侵害額請求権を行使すれば、財産を多く受け取った相続人や第三者に対して、遺留分と相当額の金銭の支払いを主張できます。
相続回復請求権と遺留分侵害額請求権の違いは、主に以下の通りです。

相続回復請求権遺留分侵害額請求権
権利を行使できるとき相続人以外が相続財産を管理、占有しているとき相続人の一部や第三者が他の相続人の遺留分を侵害して相続しているとき
権利を行使されたときの対応相続財産を本来の相続人に返還する必要がある遺留分に相当する金銭を相続人に支払う必要がある

相続回復請求権が問題になるケースはそれほど多くないので、具体的なイメージを持ちにくいと感じる方も多いかもしれません。
次の章では、相続回復請求権を行使できる人、される人の例を詳しく解説していきます。

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2章 相続回復請求権を行使できる人・される人

相続回復請求権を行使できるのは、本来の相続人です。
そして、相続回復請求権を行使されてしまう人は、相続人でないにもかかわらず自分が相続人だと主張し、相続財産を管理、占有しようとしている人です。
それぞれ具体的に確認していきましょう。

2-1 相続回復請求権を行使できる人

相続回復請求権を行使できる人は、本来の相続人であり、具体的には以下に該当する方です。

  • 真正な相続人
  • 相続分の譲受人
  • 包括受遺者
  • 遺言執行者
  • 相続財産管理人

上記のように、相続人だけでなく遺言執行者や相続財産管理人など相続人の代理人に当たる人物も、相続回復請求権を行使可能です。

2-2 相続回復請求権を行使される人

相続人でないにもかかわらず、自分を相続人だと称し相続財産を管理占有してしまっている人は「表見相続人」と呼ばれ、相続回復請求権を行使される可能性があります。
具体的には、表見相続人には以下の人物が該当します。

  • 相続欠格者
  • 相続廃除された人
  • 本来の親子でないのに、出生届を出された人
  • 婚姻が無効になった配偶者
  • 縁組が無効になった養子

また、本来の相続人だったとしても、法定相続分よりも多い割合で相続財産を勝手に占有しようとするケースでは、相続回復請求権を行使される恐れがあります。
例えば、子供2人が相続人となっていて兄である長男がすべての遺産を独占しようとしている場合には、妹である長女が相続回復請求権を行使できるかもしれません。

相続回復請求権を行使する際には、相手との話し合いもしくは訴訟を行う必要があります。
次の章で詳しく確認していきましょう。


3章 相続回復請求権を行使する方法

相続回復請求権を主張して、相続財産を占有している人物から遺産を返してもらうには、大きく分けて裁判外での話し合いと裁判での訴訟の2つの方法があります。
相手が話し合いに応じてくれるのであれば、必ずしも訴訟を起こす必要はありません。
それぞれの方法を詳しく確認していきましょう。

3-1 相手と話し合い相続財産の返還を要求する

相続回復請求権を行使するのであれば、まずは相手と話し合ってみましょう。
話し合いにより相続財産の返還に関する合意が得られた場合には、合意書を公正証書で作成するのがおすすめです。

相手が話し合いに応じない場合は、訴訟を起こす前に内容証明郵便を送っておくと良いでしょう。
内容証明郵便は自分で送ることもできますが、手続きに手間をかけたくないのであれば司法書士や弁護士等に代行してもらうこともご検討ください。

3-2 相続回復請求権の訴訟を行う

相手が話し合いに応じてくれない場合や内容証明郵便を送っても放置される場合には、相続回復請求の訴訟を起こします。
訴訟を行えば、4章で詳しく解説する相続回復請求権の時効を止められます。

さらに、裁判所で相続権が侵害されている事実を証明できれば、遺産の返還命令を出してもらえ、返還が滞った際には差し押さえ命令も可能です。

なお、相続回復請求は遺産分割調停や審判とは異なり、一般の民事裁判で争います。
そのため、共同相続人と相続回復請求権に関して争う場合には、遺産分割調停や審判を行っている最中でも追加で訴訟を行わなければなりません。


4章 相続回復請求権の時効は5年もしくは20年

相続回復請求権は所有権等と異なり、消滅時効が設定されています。
相続回復請求権の時効は以下のいずれかの期間が経過した時点です。

  • 相続人またはその代理人が相続権を侵害された事実を知ったときから5年
  • 相続開始のときから20年

ただし、上記の時効に当てはまらないケースもありますし、訴訟を起こしている間は時効をストップできます。
相続回復請求権の時効についてもっと詳しく確認していきましょう。

4-1 故意に相続権を侵害した場合の時効はない

自分に相続権がないとわかっていながらも、相続財産を占有し続けている場合には、相続回復請求権の時効は適用されません。
というのも、表見相続人はあくまでも「自分が相続人である」と信じている人物だからです。
自分が相続人の立場ではないと正しく認識しているにもかかわらず、遺産を不当に占有し続けるの不法占拠であり、消滅時効は適用されません。

4-2 表見相続人が第三者に譲渡・売却した場合の時効は10年

表見相続人が占有し続けている土地等を第三者に売却もしくは譲渡してしまったケースでは、第三者は相続回復請求権の時効を主張できません。
ただし、土地等を一定期間所有し続けていた場合には所有権を主張できる「長期取得時効」が設定されています。
長期取得時効は、善意かつ無過失であれば10年、それ以外のケースでは20年です。

そのため、表見相続人が第三者に相続財産を売却もしくは譲渡した場合には、表見相続人と第三者はそれぞれ以下の事項について本来の相続人と争うことになります。

  • 表見相続人:相続回復請求権の時効(5年もしくは20年)
  • 表見相続人から財産を譲り受けた第三者:長期取得時効(5年もしくは10年)

4-3 相続権の侵害に関する訴訟を行えば時効は止められる

3章で解説した相続回復請求の訴訟を行えば、相続回復請求権の時効は停止されます。
その後、裁判所で相続回復請求に関する判決が出たら、その時点からさらに時効は10年更新されます。
また、相手が相続回復請求権の主張を認め、財産の返還に応じた場合にはそこから時効が5年間更新されます。

時効を迎えてしまい、泣き寝入りとならないためにも、相続財産を不当に占有されているのであれば、相続財産請求権の行使をご検討ください。

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まとめ

相続回復請求権とは、相続人以外の人物が相続財産を管理、占有している場合に、本来の相続人が相続財産の返還を求める権利です。

相続回復請求権を行使できるのは、本来の相続人もしくはその代理人等です。
権利を行使し相続財産の返還を求める際には、裁判以外の場での交渉や合意も可能ですが、話し合いが上手くいかない場合や相手から無視されてしまう場合には、相続回復請求の訴訟を起こす必要があります。

相続回復請求の交渉や訴訟は自分で行うこともできますが、相手が相続財産の返還に応じるまでには時間や労力がかかるケースが多いです。
相続人の負担を少しでも減らしたいと考えるのであれば、相続に詳しい専門家への相談もご検討ください。

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