- 遺留分を支払うと相続税額が変わるのか
- 遺留分を支払い時における相続税申告の注意点
亡くなった人の配偶者や子供、両親には遺留分と呼ばれる最低限度の遺産を受け取れる権利があります。
遺留分を請求された場合、遺産を多く受け取った人物は遺留分侵害額相当分の金銭を支払わなければなりません。
遺留分を支払うと、最終的な遺産の受取額が変わるため相続税額が変わる場合があります。
遺留分支払い時の相続税申告の取り扱いは、遺留分が請求されたタイミングによって変わるのでご注意くたさい。
本記事では、遺留分を支払ったとき相続税額は変わるのか、相続税申告のやり直しが必要なのか解説します。
遺留分については、下記の記事で詳しく解説しているのであわせてお読みください。
1章 遺留分を請求され支払うと相続税額が変わる場合がある
亡くなった人の配偶者や子供から遺留分を請求され支払うと、遺産の最終的な受取額が変わるため相続税額も変わる場合があります。
ただし、納税額が変わるかは遺留分を支払ったタイミングや相続税の払い過ぎを申告したかによって変わります。
遺留分支払い後の相続税の取り扱いを詳しく見ていきましょう。
1-1 相続税申告前に遺留分の請求・支払いが行われた場合
相続税を申告する前に、遺留分を請求され支払いが完了した場合は、遺留分精算後の内容で相続税申告を行う必要があります。
遺留分を受け取った側も支払った側も、最終的に受け取った遺産の金額をもとに相続税を申告しましょう。
1-2 相続税申告後に遺留分の請求・支払いが行われた場合
相続税を申告した後に、遺留分の支払いが完了した場合、遺留分を支払った人が更生の請求を行ったかによって遺留分を受け取った人が修正申告しなければいけないかが決まります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-2-1 遺留分を支払った人が更生の請求をした場合
遺留分を支払った人が更生の請求をした場合、遺留分を受け取った側も修正申告もしくは期限後申告をしなければなりません。
更生の請求とは、相続税を払いすぎていた場合に還付の請求を行うことです。
遺留分を支払った人が更生の請求をしていた場合、相続全体でみた納税額が本来の納税額よりも少なくなるため修正申告をしなければなりません。
1-2-2 遺留分を支払った人が更生の請求をしなかった場合
遺留分を支払った人が更生の請求をしなかった場合、遺留分を受け取った側も修正申告や期限が申告をする必要はありません。
更生の請求が行われない場合は、相続全体で見たときの納税額が適切であり税務署側からしたら問題にはならないからです。
2章 遺留分を請求され支払い時の相続税申告で注意すべきこと
遺留分を請求され支払ったときは、更生の請求を行えば相続税の還付を受けられる場合があります。
遺留分を請求されたときは、相続税申告時に下記を注意しましょう。
- 相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内
- 遺留分侵害額受け取り後に修正申告する場合は4ヶ月以内に行う
- 遺留分を支払った人は更生の請求をすれば還付金を受け取れる可能性がある
- 相続税申告期限が過ぎている場合は当事者間での精算も認められる
- 遺留分の算定は原則時価で行い相続税申告は相続税評価額を用いる
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内
相続税の申告期限は、相続開始から10ヶ月以内であり、原則として延長は認められません。
そのため、遺留分侵害額請求が行われているからといって、相続税の申告を待ってもらえないのでご注意ください。
相続税の申告期限までに遺留分侵害額請求や支払いが完了しない場合は、遺留分を支払う前の内容で相続税申告をします。
そして、遺留分の支払いが完了した後に更生の請求や修正申告を行いましょう。
2-2 遺留分侵害額受け取り後に修正申告する場合は4ヶ月以内に行う
遺留分を受け取った後、修正申告を行う場合、遺留分額が決定してから4ヶ月以内に行う必要があるので注意しましょう。
4ヶ月を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税、過少申告加算税が課せられる恐れもあるのでご注意ください。
2-3 遺留分を支払った人は更生の請求をすれば還付金を受け取れる可能性がある
遺留分を支払い、遺産の受取額が減った人は更生の請求を行えば、払いすぎた相続税を返金してもらえる場合があります。
更生の請求を行う際にも、遺留分について和会が成立してから4ヶ月以内に手続きする必要があるので早めに手続きしましょう。
2-4 相続税申告期限が過ぎている場合は当事者間での精算も認められる
相続税申告期限を過ぎた後に、遺留分の支払いをする場合、払いすぎた相続税や本来支払いべき相続税を当事者間で精算することも認められます。
例えば、決定した遺留分額から、遺留分請求者が本来支払うべき相続税額を引いて払うことも可能です。
ただし、遺留分の支払いで相続税額を精算する場合、後々のトラブルを防ぐために合意書などを作成しておきましょう。
2-5 遺留分の算定は原則時価で行い相続税申告は相続税評価額を用いる
遺留分の金額を計算する評価額と相続税申告の際に用いる評価額が異なることも理解しておきましょう。
不動産には複数の評価額があり、遺留分の計算と相続税申告では下記のように使用する評価額が異なります。
- 遺留分の計算:原則として時価
- 相続税の計算:相続税評価額
遺産に不動産が含まれる場合、時価で遺留分を計算し、そのままの評価額で相続税評価額を計算すると、申告ミスにつながる可能性があります。
このように、遺留分の請求や相続税申告には専門的な知識が必要となることも多いです。
後々トラブルにならないようにしたい、相続税の申告ミスを避けたい場合は、遺留分侵害額請求について詳しい司法書士や相続税申告に精通した税理士に相談するのが良いでしょう。
まとめ
遺留分を支払う、受け取ることにより最終的な遺産の受取額が変わると、相続税の金額が変わる場合があります。
相続税申告前に遺留分の支払いや受け取りが完了したのであれば、その内容を反映して相続税申告をすれば問題ありません。
一方、相続税申告後に遺留分の支払い、受け取りを行った場合は遺留分を支払った人が相続税の更正の請求を行っているかどうかで受け取った側の修正申告が必要かが変わってきます。
このように、遺留分侵害額請求が行われた場合、相続税の計算や申告が複雑になるので注意しなければなりません。
ミスなく相続税申告をしたい場合や遺留分侵害額請求によるトラブルを避けたいのであれば、相続に詳しい税理士や司法書士、弁護士に相談するのがおすすめです。
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