自己破産をすると郵便物が見られる?転送されるケースと対象の郵便物
「自己破産をすると、郵便物をチェックされる」
そんな話を聞いたことはありませんか?
実際に、裁判所が必要と判断した場合、郵便物が破産管財人に転送されるケースがあります。
破産管財人とは、自己破産の手続きをするにあたって、破産者の財産を適切に管理・処分する役割を持つ人で、裁判所に登録している弁護士の中から選任されます。
大切な手紙や書類が他人の元に届いてしまうのは不安ですよね。日常生活でも不便が生じるのでは?と心配になることもあるでしょう。
しかし、実際に破産管財人へ転送されるのは手紙やハガキなどの郵便局から送られてくるものだけであり、原則として宅配便などで送られてくるものに影響はありません。
この記事では、
- 自己破産すると「誰に」「何が」転送されるのか
- なぜ転送する必要があるのか
- 自己破産で転送される対象となるもの
- 転送されたものの返還方法
などについて解説します。
自己破産を検討しており、心配や不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
1章 自己破産をすると郵便物は破産管財人に転送される
自己破産をすると、郵便物が破産管財人に転送されることがあります。
破産管財人とは、自己破産の手続きをするにあたって、破産者の財産を適切に管理・処分する人で、裁判所に登録している弁護士から選ばれます。
自己破産では、破産者の財産は、売却され債権者(お金を貸している人・企業)に分配されます。破産管財人は、その手続きを適切に行う役割を担います。
その役割の中に「破産者の郵便物を管理する」ということもあるのです。
ここでは
- どのようなときに転送されるのか
- なぜ転送する必要があるのか
- どのくらいの期間転送されるのか
について解説します。
1−1 転送されるのは「管財事件」「少額管財事件」のみ
自己破産の手続きには「同時廃止」「管財事件」「少額管財事件」の3つがあり、このうち「管財事件」「少額管財事件」の場合のみ、破産管財人が選任され、郵便物が破産管財人に転送されます。
手続きが「同時廃止」になった場合は、郵便物が転送されることはありません。
破産手続きの種類
- 【同時廃止】
→所有する財産が20万円未満で、免責不許可事由(ギャンブルや浪費などによる借金)に該当しない場合の手続き。最もシンプルで、手続き期間が短く、費用も少額です。 - 【管財事件】
→所有する財産が20万円以上の場合や、免責不許可事由に該当する場合の手続き。破産管財人によって財産の管理が行われるため、手続きの期間が長くなり、同時廃止よりも費用がかかります。 - 【少額管財事件】
→管財事件を弁護士に依頼して調査してもらう場合の手続きです。弁護士に依頼したとしても、郵送物が転送されることに変わりはありません。
自己破産がおすすめできない人
- 個人事業主(事業に必要なものを没収され、事業が継続できなくなる可能性あり)
- マイホームなどの財産を失いたくない
- 税金や養育費、損害賠償金などが主な借金になっている(破産しても免責されない)
1−2 転送する理由
冒頭でもお話したとおり、破産管財人は破産者の財産を適切に管理・処分をする役割があります。
そのため、破産者の財産の状況や取引関係を把握し、隠し財産などがないかを確認する必要があります。
郵送物の中には、クレジットカードの支払明細や、税金の支払いに関する通知、保険の支払い・更新に関する通知などがあるかと思います。また、事業者の場合は、取引先からの請求書などもあるでしょう。
そういった郵送物を確認することで、財産状況・取引関係を把握するのです。
実際、郵便物の中から新たな保険や債権者が発覚することもよくあります。
1−3 転送される期間
郵送物が破砕管財人に転送される期間は、破産手続きの開始から、終了までの間のみです。
手続きの期間は「管財事件」であれば、6ヶ月程度、「少額管財事件」であれば4ヶ月程度となります。
ただし、破産手続きの期間中であっても、郵送物は破産管財人から返還されます。すぐに必要な書類等も、申し出ることで迅速に返還してもらうことが可能です。
なお、財産の状況等によっては、それよりも短くなったり長くなったりしますので、その点は留意しておきましょう。
【郵便物はどうやって返却されるの?】
破産者あての郵便物が破産管財人に転送されるのなら、どうやって返却されるのか?と疑問に思う方もいるかもしれません。 まず、破産管財人から破産者に宛てた郵便物は、例外的に転送しないものとすることができます。 次に、破産者が破産管財人の事務所へ直接取りに行く、等の方法であれば郵便を使わないので返却可能です。 このように、返却にはいくつかの手法があります。詳しくは3章で説明します。2章 自己破産手続き中に転送の対象となる郵便物
自己破産手続き中に転送の対象となるのは原則として「破産者宛」の「郵便物」のみです。
郵便物とは、郵便局によって配達される手紙やハガキ、書類などで、いわゆる切手を用いて郵送するものです。
ヤマト運輸や佐川急便など宅配業者によって配達される荷物については含まれません。
また、郵便物であっても、宛名が破産者以外の名義(配偶者や同居人の名義)のものについては転送されません。
転送されるもの(郵便物) | 転送されない |
---|---|
・年賀状
・手紙
・結婚式の招待状
・お店などから届くDM
・電気、ガス、水道代等の請求書
・クレジットカードの明細 など |
・お歳暮や暑中見舞い等
・ネットショッピングで購入した商品 (※宅配業者によって届くものに限る)
・購入店から配送される家具家電 など |
なお、友人や家族からの手紙を破産管財人が開封し、確認したとしても、その内容をむやみに他人に開示したり、悪用したりすることは決してありません。破産管財人には守秘義務があるからです。
破産管財人は、手続きをする上で必要な情報の確認しかしないので、安心してください。
3章 郵便物の返還方法
郵便物が転送されても、破産管財人が手続きに関連のないと判断したものや、確認が済んだものについては返還してもらうことができます。
では、どのように返還されるのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
3−1 返還されるタイミング
返還するタイミングは、破産管財人の裁量によります。「こまめに確認して、こまめに返還する」「すべての確認が済んでからまとめて返還する」「ある程度郵便物がたまったら返還する」など様々です。
初回の管財人面談の時に、郵便物の返還方法や時期などを相談してくれる破産管財人も多いですので、希望を伝えてみるのも良いでしょう。
しかし、光熱費の支払書・請求書などは、何ヶ月も返還されないと困りますよね。
そのような書類については、破産申立てを依頼している司法書士や弁護士へ申し出ることで、破産管財人に「早く返してください」と伝えてもらうことができます。
破産管財人も、早期に返還されないと困るものは理解していますので、迅速に対応してくれます。
3−2 返還の方法
返還の方法としては主に以下の3つです
- 破産管財人の事務所に直接取りに行く
- 郵送で返還される
- 破産者の代理人(依頼している司法書士・弁護士)を経由して返還される
破産管財人から返還される郵送物には「破産管財人からの郵送物のため、転送は不要」といったことが記されています。
そのため、その郵送物を家族が見た場合、自己破産をしたことが知られてしまう可能性があります。
そのような事態を避けたい場合には、破産管財人の事務所に直接取りに行くか、破産申立てを依頼した司法書士・弁護士を経由してもらい、その事務所に取りに行くのが良いでしょう。
4章 自己破産はグリーン司法書士法人にご相談ください
自己破産の手続きは、ご自身で行うのは非常に困難です。
郵便物のこともそうですが、その他にも様々な財産の管理や、手続きの準備が必要だからです。
そのため、自己破産をするほとんどの方が司法書士などの専門家に依頼しています。
また、「自己破産しかない」とお考えの方も、専門家がしっかりと話しを聞いてみたら他の債務整理方法でも問題がない判断できるケースもございます。
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山田 愼一
- 保有資格:司法書士/行政書士/家族信託専門士/M&Aシニアエキスパート
- 「世界一やさしい家族信託」著者
- 全国司法書士法人連絡協議会 理事
相続の相談件数は業界でもトップクラスの年間1800件のグリーン司法書士法人の代表司法書士。
一般の方向けのセミナーの講師や、司法書士や税理士等専門家向けのセミナー講師も多数手がける。オーダーメイドの家族信託を使った生前対策や、不動産・法人を活用した生前対策が得意である。
- 【セミナー講演主要実績】
- 賃貸経営EXPO 大阪2019
- 関西資産運用EXPO2020